盃を 傾け気持ちも 傾ける
「なるほどねぇ。それで今の地位に?」
俺とサリュー改め、さゆりは酔った勢いで下の名前で呼び合う事になりお互いのこれまでの事を話した。
さゆりは1999年の7月に渋谷の宮益坂から異世界転移したそうだ。何でも郵便局の向にあるビルのカラオケ店に入ろうとして、エレベーターで受付の在る6階のボタンを押して着いた階で降りたら転移したそうだ。
ハルは新宿のカプセルホテルで寝て起きたら転移して、さゆりはエレベーターで転移か。
って事は、階段から落ちるという生命の危機を伴う転移は俺だけかよ!
「それで奥さんが、何人だっけ?」
さゆりの目が座ってきたのがなんだかなぁ。もっと色っぽいのを希望してたのだが。
それはさて置き、ディラーク王国では経済力が有れば一夫多妻が可能だ。それはスティード王国でも同様らしい。
そして俺の魔力にはどうもフェロモンが含まれているらしく、自分で言うのもおこがましいが結構モテる。その事もさゆりには話した。
「正式に結婚したのはクレアだけだ。あとはエリスが付けた順番だと、第1夫人がクレアで、以下はクロエ、ミラ、エリスが4番でローラが5番。クレア以外で実際に関係を持ったのはエリスとローラだけだ」
婚姻関係を結んだのはクレアだけだ。クロエは出会った初日に酔ったクロエに抱き着かれただけ。義理の姉でもあり、恋愛感情とは違う気がする。
ミラは裸は見たけど、それで終わっている。
ローラとは関係を持った。エリスはカウントされるのか微妙だな。処女を捧げてくれるのは結構なのだが、貫通させると過剰に痛がるので治癒魔法を施す。すると処女膜まで再生されて、処女に戻ってまた痛がる。これを繰り返す事4回、痛い思いだけをして結局は未だに処女だ。
「他に婚約中の人が居るわよね?」
「リックの妹のフローラはトルーマン公爵としての俺に嫁ぐ事になっている」
「何か女関係が大変そうね」
「まあな。あっ、そうだ!」
さゆりならミラの謎が解明出来るかも知れない。
聖女アリアと何らかの関係が有りそうなミラの事は未だに謎だらけで判っていない。
「そういうのはパス。パンドラの箱を開けそうで」
「開けちゃいけないパンドラの箱?」
変に探ったらとんでもない事になるって事か。陰魔法の使い手としての勘か。
「って言うよりも女の勘かしら。全部を知らなくても今のバランスが取れているんならそれでいいんじゃない?」
「それもそうか」
奥さんに過去の男遍歴を告白されて、「そんな事は言わないで墓場まで持って行って欲しかった」と言う男も居たしな。全てを知れば良い訳ではなく、知らない方がいい事も有る。
「それに、女は謎が有る方がいいでしょ!」
「ハハッ」
そう言われたらもう笑うしか無いな。
「はいはい、女関係の話はこれでおしまい。今度は公的な立場の2人としての話よ」
一気に酔いが覚める。これはさゆりも同様だ。この辺は宰相の中の人の自覚がそうさせるのか。
「正直言うと私は、この国は無くなっても良いと思っているのよ」
宰相の中の人としての自覚は無い様だった!
「それで良いのか? お前は事実上の宰相だろ!」
「だからよ。国王は引き籠もっているし、他の王族もたまに姿を見せても感じ悪いし、官僚はコネだらけで能力の無い人間が矢鱈と威張り散らしてるし、サリューとしての私に言い寄って来る男は下心満載だし。この国に良い記憶が無いのよ」
「さゆり自身はこの国が無くなったらどうするつもりなんだ?」
「う〜ん、エイジの7番目の奥さんにしてもらおうかしら?」
さゆりは再び瞳をトロンとさせて顔を寄せて来た。瞬きをしている間に小顔の和風美女が更に距離を詰めて来た!
この2人だけの空間で、お互いに酒も入ってこの距離感はヤバいでしょ!




