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王都への 道に敵は 居やしない

 会議の翌日、移動に便利な様にトカゲ位の大きさにして連れて来ているインフェルヌスをアンドレイに用意させる。

 それを俺の魔法で大きくさせるのだが目に見えて大きくなるので、実は結構楽しんでいる。

 最初は普通のフォイヤーボール。それを徐々に火力を強くして大きくする。


「おぉぉぉ!」


 すると最初はトカゲ位の大きさだったインフェルヌスがフォイヤーボールを吸収してワニ位の大きさになり、その後も順調に大きくなって、ティラノサウルスの復元模型と同じ位の大きさになった。

 こういう風に目に見えて大きくなるのは楽しい!

 そんな感じで大きくなるインフェルヌスを見つめてアンドレイが感嘆の声を上げるが、まだまだ行くぞ!


「それじゃ、行くぞ!」


「お願い致します!」


 アンドレイに大丈夫なのかを確認して、今度は出来る限りの紅蓮の炎をイメージする。

 するとインフェルヌスは一気に巨大化して5階建てのビルに相当する大きさになった!


「この前よりデカいよな?」


「大きいだけでなく、より強くなっております。パワーは勿論、あの大きさにも関わらずスピードも格段にグレードアップしております」


 クーデターの際に暴れていたインフェルヌスは、最終的には2階建ての戸建て住宅並みの大きさだったと記憶している。それは結局死んだので、今回大きくなったのは2体目という事になる。

 

「前回の反省を活かして設計しました。巨この理想型となったインフェルヌスを前にして、スティード軍兵士の恐怖に歪む顔が容易く想像出来ますな」


 魔族らしく「クックック」と含み笑いをするアンドレイだが、出来ればインフェルヌスの出番は無い方が良いと思っている。

 スティード軍の連中はこの巨体を見ただけで降伏してくれないと、戦死者が増え過ぎないか心配だ。


「なぁ、火力はこの巨体のままで小さくはできないのか?」


 小さいのが居れば、それはそれで厄介な筈だ。


「多少でしたら魔力を濃縮する形にして可能です。ご覧になられますか?」


「いや、今度それも見せてくれ。さぁ他にも操れる魔物を連れて王都へ行け!」


「仰せのままに」


 アンドレイにはドイル男爵の手勢と、ディラーク王国陸軍の合わせて1万の軍勢を付ける事にした。これで人間同士の合戦になってもそれなりに形になる筈。

 それに2人には様々なシチュエーションを想定した策を授けてある。きっと期待に応えてくれるだろう。

 その他に元スティード軍の将校を数人付けた。彼等は降伏勧告要員として働いてもらうのだが、辛い役目を頼んでいると思う。

 同じスティードの人間が助かる為に動いているのに、行った先では裏切り者と罵られ、開戦後はこちら側で同胞が死ぬ様を見る事になる。

 全てが片付いた後には相応の褒美をやらないとな。

 

「それでは我等は最短距離で参りますので、王都でお待ちしております」


 ドイル男爵はホーキンス侯爵役のゴーレムに敬礼して発って行った。

 

「異様な光景っすね」


 ハルが呟いたが、全くその通りだと思う。魔物達がぞろぞろと列を成して行くって、まるで百鬼夜行だ! 真昼間だけど。



「それでは俺達、本隊も王都に向けて出発だ!」


 こうして俺達は簡単に寝返りそうな貴族の領地を選んで行軍を始めた。

 情報通り、その貴族に使者として元スティード軍の幹部を向かわせればあっさりと調略が出来る。

 どうも予想以上に王家からは人心がすっかりと離れているらしい。


「うーん、ちょっと拍子抜けっすね」


 戦闘らしい戦闘が無いまま進軍している為、ここまで出番の無いハルが呆れた様に呟いている。


「暴れたかったか?」


「あの連中、今まで散々俺達を蔑んでいたのに、途端に馴れ馴れしくして来やがって」


 差別されてきたハルとしては思う所が有りそうだ。

 その一方で貴族連中はしたたかだ。俺やハルを見ると、これまで蔑んできた対象の顔付きなので一瞬は驚くものの、直ぐにまるで10年来の付き合いの様な距離感で接近してくる。

 会議にしても最初から従軍していたかの様に、当然と言った風のデカイ態度で出席する。スティード側で出席を許可しているのは軍の幹部だけなんだけどな。


「閣下、領主自らが出迎えに参りました」


 行軍も後半になると噂でも聞いたのか、マキシムからこう報告される事が増えた。

 そして行く先々で過剰な接待を受ける。辟易するのも少なく無いが、連中も生き残りに必死なのだろう。


「手狭でお恥ずかしい限りですが、ご存分にお使い下さい」


 こうして屋敷に泊めてくれるのは有り難い。が、歓迎の宴でもフルコースなんて生易しい物じゃなくて、料理は中華じゃないけど満漢全席かと思う様な豪華な料理のオンパレード!

 盃を置いた瞬間に酒が注がれるので、本当に油断が出来ない!

 ようやく宴が終わっても、これで終わらないのが生き残りに必死な貴族。


「失礼致します」


 ディラーク軍幹部の魔道士でもある俺にはこんな感じで、寝る頃になると貴族が用意した女性がベッドサイドに居る事も少なくない。しかも複数人!

 男の本能には従いたいけど、その後のしがらみを考えると迂闊に手を出せない! と思いつつ…。

 男って悲しい生き物だな。


 ちなみに各貴族の令嬢はホーキンス侯爵役のゴーレムに夜這いに行っている。だが勿論ゴーレムに生殖機能は無い。

 それに第一、俺が寝ようって時にはただの置物でしかない!

 だが敵もさるもの引っ掻くもの。転んでも只では起きない、それが貴族だ。

 

「娘はホーキンス侯爵閣下と一晩を共にした」


 アピールは結構なんだけど、当然ながら何も無い。しかし確かにホーキンス侯爵と一晩中同じ部屋に居たのは間違いない。置物だけどな!

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