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会議とは バランス重視で 進む物

 東海岸最大の町、アビディで兵を休ませるついでに王都への侵攻計画を練る。

 その為の会議には俺とマキシムの他には、ハル、アンドレイ、ラーイとシルヴァ、海軍からは提督と幹部数人、他にも数人のディラーク陸軍の幹部と、軍門に下したスティード軍の幹部が数人。それと、俺が操るホーキンス侯爵役のゴーレム。

 彼らにしてみれば、被差別民である俺とハルに頭を垂れる事は屈辱なのかも知れないが、従っていれば戦後の身分の保証をしているので裏切りは大丈夫だと思っている。

 現に降伏勧告の使者を務めてくれているし、スティードの地理や事情に明るい彼らはこの先きっと役に立つ筈だ。


「ここより王都へ向うには街道が整備されています。順調ならば10日程度で到着するでしょう。しかしながらスティード軍による待ち伏せが危惧されます。申すまでもなく地の利はスティード軍にございます。そこで、遠回りですが簡単に降伏するであろう貴族の領地を進む事を…」


「ちょっと待った。そんな遠回りするよりも真っ直ぐ行っちまおうぜ!」


 スティードの幹部の進言に真っ向から反対するのはラーイだ。その言い方だとやはり脳筋か。


「いいか、ディラーク軍の兵だって女房子供を残して来ているんだ。さっさと王都を落として早く返してやりてぇじゃねえか!」


「ディラークへの早めの帰還は同意します。でないとスティード国内のバランスが取れません。だからこその迂回です」


 情に訴えるラーイに対し、元スティード軍の幹部は毅然とした態度で言い返す。


「バランスが取れないとはどういう事だ?」


 ラーイに言い返したその内容について聞いてみた。何か思う所が有りそうだな。


「ディラーク軍による占領の特需が逆に問題になっています。特に顕著なのが、娼館です」


「娼館?」


「ディラーク軍の占領により突然男性が大量に増えました。おまけに閣下の御命令により、ディラーク軍による略奪や乱暴狼藉の類は一切禁止されております」


 兵士の性欲処理は悩みどころだが、違反した者は死刑に処すると最初に言っておいた。住民感情に配慮して。


「それで合法的に性欲を処理する娼婦が足りないのか?」


「はっ! それにより貧しい者は娘を売る事に躊躇が無くなっております」

 

「そればかりか街中で少女を拐う輩まで出る始末」


「なんだと!」


 別の将校からの報告が衝撃的だった!

 それは直ちに何とかしなければならない。問題に対して即座に取り掛かれば住民のディラーク王国に対するアレルギーも和らぐだろうし。


「なら尚更さっさと王都を攻めようぜ、大将!」


「私もラーイに同意します。これ幸いとばかりに娘を売る親なんて、凍らせてあげようかしら」


 シルヴァが物騒な事を言うが、実は俺も本音はそれに近い。

 

「恐れながら閣下、ここまで負けっ放しですがスティード軍を甘く見てはなりません!」


「王家は保身の為なら何でもします。ですので、王都に近付く前に残有戦力を集めての決戦を仕掛けて来ると思われます」


「多数の死者が予想されます。そうなれば戦後の統治にも影響するかと思われます!」


 元スティード軍の者たちは口を揃えて決戦回避を主張する一方で、ディラーク軍として参戦している者は最短距離で王都に行く事を主張している。

 こうなると、どちらかの主張のみを採用すると対立を招きざるを得ないから、バランスを取るのは難しい。


「アンドレイ!」


「ここに」


 低い声を響かせて魔族のアンドレイが現れる。


「インフェルヌスは連れて来ているか?」


「魔力を抜き、小さい状態の個体を連れて来ております」


「よし。俺が極上の栄養(炎魔法)をやろう」


「!」


 アンドレイは眼を大きく見開き、ワナワナと身震いしている。


「閣下の魔法ですか! それは生産者として栄誉の極みにございます!」


 先程までの落ち着いた態度は消え失せ、興奮して小躍りしそうなアンドレイを一同は冷ややかな視線を浴びせる。


「閣下、あの魔物をどうされますか?」


 マキシムが訝しげな表情で聞いてきた。


「インフェルヌスや他の魔物に街道を進ませる!」


「魔物を王都へ?」


「ああそうだ。待ち構えるスティード軍には魔物の相手をしてもらおう!」


 インフェルヌスだけでもお釣りが来そうだけどな。


「魔物の後ろから我々が行軍するのでしょうか?」


「いや、魔物達が敵の目を引き付けている間に、安全な迂回ルートを進む。その簡単に降伏しそうな貴族の兵力を加えて王都に攻め込むぞ!」


 作戦は決まった。後は占領した地域の統治か。

 娼婦として売る為に街行く少女を拐うなんて絶対に有ってはならない!


「尚、占領地域の統治はカーズ子爵に当たってもらう!」


 当の本人は呆気に取られた顔をしているが、信用出来る人間が少な過ぎての人選で、カーズの統治能力は不明だ。


「みっ、身に余る栄誉にございます!」


 当然ながら補佐する者を置く。短期間だから頑張ってもらいたい。

 仕方なしの選出とは当然ながら言えないし。

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