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楽勝で 王都を目指す ハルのため

 国王であるリックの許可を得てハルクがディラーク軍に加わって2か月が経った。


 俺が演じるホーキンス侯爵率いるディラーク軍は快調に東側の海岸沿いを北上し、スティード王国の東側の海岸を完全に制圧した。

 しかもほぼ無傷で勝ち進んでいる!

 何回か有った敵軍との戦闘も、こちらは1人の戦死者も出さずに勝ち進んでいる。

 戦い方としては、先に捕虜にしたスティード軍の幹部を使者にして降伏勧告を行う。

 使者に選んだ者は完全に服従しているので信頼して送り出せる。だがこれで降伏する奴はいない。

 なので脅しのつもりで魔法を打ち込む!

 敵軍が魔法障壁を施している場合は、ハルクに切り込んで相手の魔術師を斬ってもらう。それから魔法を数発打ち込む!

 別にお構い無しに俺が魔法を撃ち込んでやれば障壁なんて無力化出来ると思うけど、やりすぎて一気に敵を全滅させると後々厄介だからな。

 敵陣が魔法を喰らって大混乱した所で歩兵の出番となる。

 この時点で戦況は圧倒的だ。力の差を見せ付ければ戦意は自然と削がれるので、歩兵が迫った所で再度降伏勧告すれば今度は応じる事が多い。

 それでも降伏しない場合は、敵将をハルクに討ち取らせ、もう一度だけ降伏勧告をすれば、残った敵は確実にこちらの軍門に下る。

 この方法で、我軍のここまでの戦死者はゼロだ。数人だけ出た負傷者は降伏を受け入れられない跳ねっ返りが歩兵を斬り付けたからで、その場で降伏したばかりのスティード軍の人間に処刑させた。

 スティード側がディラーク軍に逆らった者を処分するという事実が大事だと判断したからだ。

 実際にこれが効いたのか、その後は降伏したスティード軍の管理が楽になった。

 あと、敵に魔術師が少ない事が気になったが捕虜の情報によれば、魔法を使って鉱山を開発しようとして国中の魔術師を集めたものの、落盤事故で多くの魔術師が犠牲になったそうだ。

 鉱山の開発計画に無理が有った事を仲間の魔術師達が抗議したが、鉱山開発は国策事業だ。国に楯突いた魔術師は粛清され、それを聞いた他の魔術師は国外に脱出したらしい。

 楽勝にはそんな裏が有ったが、スティード王国も自分で魔術師の数を減らせておいて戦争に負けてるんじゃ終わりだな。

 そう悦に浸っていると何やらマキシムが近付いて来た。


「閣下、補給が届いております」


 もう一つ、行軍が順調な理由として、海沿いと言う事もあってディラーク海軍と連携して補給を受けられる事が幸いした。

 食料や医薬品、その他にも必要な物を調達してくれるので本当に助かる。


「海軍からの情報ですと、各地のスティード軍は動くに動けない様です。如何なさいますか?」


 スティード軍は国境の海沿いの東側だけでなくて、内陸部でも侵攻して来ている。

 日本の福島県に例えると俺達は浜通りだが、中通りや会津地方でもディラーク軍とスティード軍の睨み合いは続いていたと言う事だ。

 俺の当初の目論見では中通りのスティード軍がこっちに援軍に向う間に、中通りのディラーク軍に逆に侵攻してもらうつもりだった。

 そして会津地方の敵軍が中通りに援軍に向かえば、それに対峙していたディラーク軍が背後から追撃する計画だった。

 しかしスティード軍もバカじゃない。

 国境に敵が居るのに、それに背を向けて国境をガラ空きにする訳も無かった。そういう訳で、各地で睨み合いが続いている。


「ハル、どう思う?」


「エイジさん、これはこのまま王都まで攻め込むしかないっしょ!」


 俺はハルクをハルと呼んでいる。これは彼の本名が晴久だからだ。ちなみに実は俺の方が後に生まれている事は秘密にしている。

 昭和の後は令和だと説明しといた。


「王都か。一気に方を付けるって危なくないか?」


「王都に居る奴隷の皆を助けたい…ん…だ」


 何か語尾の勢いが変だな。奴隷の話題になった途端に。


「奴隷開放か。そんなに世話になったの?」


「まぁ、世話って言うか何て言うか」


 急に言葉が出なくなった。これは間違いないな。


「女か?」


「! なっ、何を言ってんだよ!」


 分かりやすいのは昭和の男の特徴だな。


「ボロボロの所を奴隷身分の女の子に優しくしてもらって、惚れたとか?」


「まいったな、その通りっすよ」

 

 予想外にあっさりと認めたな。

 それじゃ、この昭和の男の恋を成就させに王都へ参りますか!


「でも半分っすね」


「もう半分は?」


「彼女、結婚したんす。片思いで終わりましたよ。その旦那とも親友なんですがね。あいつらを守ってやりたいっす」


 この身の引き方も昭和だな。その内にいい事有る筈だ。

 いや、この国の体制をひっくり返して虐げられていた人達が報われる様にするんだ。

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