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認められ ハルクが切り込み 隊長に

 ハルクと一献交えた後は、国王であるリックに通信を試みる事にした。

 現状の報告とこれからの方針の打ち合わせだ。


「マキシム、ここに居てくれ。大事な話だ、酒の入っていない人間に内容を記録して欲しい」


「御意。閣下、今宵は特にお飲みになられましたね」


「ハハッ、ハルクも俺も久し振りに同郷の人間に会ったんだ。勘弁してくれ!」


「そんな閣下を見ると私も嬉しくなります」


 なんて会話をしながらマキシムは水を用意してくれる。国王であるリックと話すのは、せめてこの水を飲んでからにしろって事ね。

 俺はコップに注がれた水を飲み干すと、リックの元に置いてきた通信用のゴーレムに意識を集中させる。

 かなり距離は有るけれど、何とか出来る筈だ。


「リック、聞こえるか?」



「エイジ、聞こえますよ!」


 数秒の間こそ有ったが交信は成功した。王宮からこの国境までの距離を考えれば、多分新記録だ。

 そこで俺は現状の報告を、時にマキシムの助けを借りながら何とかやり遂げる。


「反転攻勢ですか?」


「ああそうだ。先に侵攻して来たのはあっちだからな、この際だから二度とディラーク王国に手を出すなんて気が起きない様に叩くつもりだ」


「エイジ、そうなると国家間の本格的な戦争となります。当然ながら計画は立てていると思いますけど、どの様な計画ですか?」


 そりゃ計画も無しに戦争を仕掛ける奴はいないよな。

 ここで失敗してはいけないのは、ご都合主義な計画。これをしっかりしておかないとズルズル長引いたり、最悪の場合は国滅びる。


「ハルクから聞いた話だとスティード王国は国は決して豊かではない。だが王侯貴族が富を独占して多くの国民は貧しい暮らしをしているそうだ」


「それはハリーから聞いています」


「ハリー!?」


 ハリーはリックに従う諜報員だ。一連のクーデター勃発直後から暫く会っていないけど、スティード王国に潜り込ませていたのか?


「クーデターに乗じてスティードが攻め入って来る事は分かり切っていましたからね。ハリーには先んじてスティード王国の民衆の不満を煽って政情不安にさせる役目を与えました」


「つまりリックはハリーを潜伏させて、政情不安でスティード軍がディラーク侵攻から手を引かざるを得なくなる様に手を回したと?」


 色々と違いは有るが、日露戦争とロシア革命みたいかな。あれも日本人スパイの暗躍が有ったって話だけど。

 

「ええ。ハリーの役目を考えれば、早目にスティードに向かわせる必要が有りましたが、ここまでエイジにお願いするなんて夢にも思いませんでしたよ」


「出来る事をしただけさ。これからもそうだ!」


「頼りにしていますよ、友として、王として、そして義兄として」


 そうだった。リックの妹のフローラは、一連の事が決着した後にトルーマン公爵としての俺に嫁ぐ事になっている。今は花嫁修業中だそうだ。


「既に南のランバート王国とは改めて不可侵条約を締結しました。これで南の兵力も北に回せます!」


 ランバート王国とは東側の国境を領地を持つエリクソン伯爵は小競り合いをしていたが、中央部のレイス子爵の尽力で以前から一部とは友好的関係を保っている。

 今回もレイス子爵が窓口になったそうだ。

 レイス子爵家も3男のディックが独立して伯爵になったりと色々と妬まれそうだが、それだけの働きはしてくれているのだから文句を言われる筋合いは無い筈だ。


「それじゃリック、ハルクを加えても構わないのか?」


「エイジと同郷なら彼も、偉大なる伝説の大魔道士シーナと同郷ですよね? でしたら問題は無いと思いますけど」


 かくしてハルクは、我軍の切り込み隊長となった。


「それにしても魔法が使えない者は驚異的な身体能力ですか。エイジの故郷のニホンという国は皆が何か驚異的な能力を持っているのですか?」


 予想通り誤解されてる。これで識字率が100パーセントなんて言ったら視察に行きたいとか言い出しそうだ。

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