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ハルクから 新宿の名が なぜ漏れる

「おいおい、剣士じゃなくて魔道士が俺の相手か。って事はお前が話に聞いた魔道士か?」


「どういう話かは知らないが、多分そうだろうな」


 もういい! 覚悟は決めた! 身体強化と防御の魔法は万全だ。死ぬ事は無いだろう。


「お前の魔法は凄いらしいな。さっきのホーキンス、あの泥人形はどうせお前が魔法で操っていたんだろ?」


 もう誤魔化せないな。


「如何にも。さぁ、お喋りは終わりにしよう」


 一騎打ちの場は他の連中から離れている。

 しかし距離が有るとは言え、他の連中に聞かれたら拙い内容だからな。お喋りは早めに終わりだ。

 

「いい度胸だ!」


 ハルクがそう言って剣をゆっくりと抜く。それと同時に俺もバナザードを抜く。

 そしてハルクが構えるのに合わせてバナザードの切っ先をハルクに向ける。

 このハルクの身体能力が凄い事は判った。だから対策として、俺の360度全方向に大地の牙を突き出させる。

 華道でお花を活ける剣山の中央に俺が居るイメージだ。

 そしてバナザードからレーザー光線を発射する!

 元の世界では人類最速の短距離走者(スプリンター)でも時速40キロは出せない。

 時速40キロで走れば100メートルを9秒フラットで走る事になるけど、残念ながらそんな人類は居ない。

 こっちの世界では人種も違うし身体強化魔法も有るから一概に言えないけど、多分こっちの世界でも居ないと思う。

 ハルクの身体能力は目を見張る物が有るけど、光より早く動ける道理など無いのだ!


「行くぜ!」


「来い!」


 ハルクが消えた!

 光よりも遅いだろうけど、俺の動体視力よりかは速いみたいだ! これじゃレーザーで狙えない!


「大地の牙!」


 俺を囲む様に所狭しと大地の牙が出現させる。


「ナンノこれしき!」


 大地の牙が切り崩されていく。ハルクだ。大地の牙を切りながら最短距離で向かって来ている!

 それは兎も角、ハルクの言った事って何か懐かしいな。

 昭和末期から平成にかけてのトップアイドルのラジオ番組名だった。

 だがそんな事はどうでもいい! 反撃だ!


「やるな! だがこれならどうだ!」


 ハルクに切られた大地の牙を大蛇に変化させてハルクに絡ませる。或いは噛ませる!

 自身に絡まる土の大蛇を薙ぎ払う為に流石のハルクも止らざるを得ない。

 そこを更に大蛇を向かわせる。


「舐めたらいかんぜよ!」


 何と言う事だ。ハルクが気合いを入れると土の大蛇は霧散してしまった!

 それどころか大地の牙まで機能しなくなった!


「形成逆転だな」


 俺とハルクの間には何も無くなった。

 直感なんだが、ハルクには魔法を薙ぎ払う能力が有るのかも知れない。

 そしてあの動き、厄介だ。魔道士泣かせだな。

 だが立ち止まったからには今度こそレーザーで狙える!


「それにしてもお前の魔法は中々の物だ。ゴーレムをあんなにしなやかに動かすなんて凄いぞ!」


「そうか、解るか?」


 分かってるな、コイツ。ゴーレムってしなやかに動かせないみたいだからな。俺以外の魔術師は。


「あの調子だとブレイクダンスも出来そうだな!」


「ブレイクダンス?」


 何故この世界の人間がそんな物を知っている?


「判る訳無いか。こうやるんだ」


 そう言ってハルクは後退った。 訳ではなくて、どうやら下手くそなムーンウォークを披露しているつもりの様だ。

 

「どうだ!」

 

「それ、もしかしてムーンウォークか?」


 声からして多分ドヤ顔になっているハルクにドン引きしながら聞くと、ハルクの声が更に跳ね上がる。


「判るか!」


「ま、まあ一応な」


「どうだ、ゴーレムでこんなブレイクダンスが出来そうか?」


 そんな事は簡単だ。むしろそのレベルのダンスを披露するつもりは無い! そう言わんばかりにホーキンスだったゴーレムを再生させると、ムーンウォークをさせてみた。

 ハルクのそれとは全く別物の滑らかさだ。それはハルクも大いに認めているのだろう。


「おお!」


 ゴーレムのムーンウォークを見て大袈裟に驚いている。この状況って第三者が見れば、俺達が戦闘中って思えないよな?

 ホーキンス侯爵に至っては甦って踊っているし!


「すげー! 新宿コマの噴水広場でパフォーマンスしている奴らより上手いな!」


 えっ?

 新宿?

 何故このハルクからそんな言葉が出て来る?


 それにしても噴水広場なんていつの話だ。

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