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ハルクとの 一騎打ちに 行く羽目に

 スティード軍を代表する剣士、黄金の獅子ハルク。

 その剣の前に文字通り瞬殺された!

 もっともゴーレムなので痛くも痒くもないのだが、事情を知っているのは俺とマキシムだけなので我軍に激震が走る。


「閣下!」


「ホーキンス、討ち取ったり!」


 ハルクはライオンの仮面で表情を隠しているが、その仮面の下の素顔はさぞや凄いドヤ顔なんだろうな。

 うーん、やっぱり自分が負けて相手にドヤ顔されるのはいい気持ちじゃないな。


「なかなかやるな。流石はスティード軍を代表する黄金の獅子、といった所か」


「なっ、何で生きているんだ?」


 ハルクの奴、腰を抜かす勢いで驚いてやがる。

 首の無いホーキンス侯爵が何事も無かったかの様に、首が無いまま剣を構えて向き直るのだ。対戦相手としたら驚くなって言う方が無理って話だ!


「バカな。生きている筈が無い!」


「だがこうして動いている」


 動いている、と言った。生きているとは言えなかった。だって生きてはいないから、ゴーレムは。


「よかったな。俺みたいに首が無くても大丈夫なレアケースに出会えて、な。お前は事実上、敵将である俺を討ち取った。これによりスティード軍の名誉は守られた訳だ」


 剣を合わせた訳じゃないけど、相手を称えてやれば退くだろう。


「撤退するスティード軍には手を出さないと約束しよう!」


 これで満足の筈だ。さぁ一騎打ちはおしまい。撤収の時間だぞ!


「ふっ、ふざけるな!」


 コイツ激昂しているな。声がプルプルと震えている。


「首が無くなって平然としている奴にそんな事を言われて納得出来るか!」


「じゃ、ちょっと待て」


 首が有ればいいんだな。

 ホーキンス侯爵役のゴーレムに転がっている首を拾わせると、何事も無かったかの様に元の位置に置く。


「これで元通りだ。さぁ撤退しろ!」


「こんなんで満足出来るか! 元通りなら、もう一度その首を落とす!」


 その言葉が言い終わらない内に再びゴーレムの首が宙を舞った。しかも今回はまだ空中に在る首が真っ二つにされた!


「お前の勝ちだ。もう終わりにしよう!」


「まだ死なないのか?」


 最初から生きてはいないから、ゴーレムだもの。


「これならどうだ!」


 仮面で表情は見えないが、ハルクの必死さが声から伺える。斬っても死なない敵なんて初めてなんだろう。


「どうだぁ!」


 ゴーレムの身体が数えるのも嫌になる程、これでもかって位に切り刻まれた。ある意味凄い!

 無駄だけど。


「お前の実力は理解した。今日は退け! またやろう!」


 爽やかに再戦を約束してお互いに退くって事で解決させようじゃないか!


「ふざけるな! これじゃお前の術中に嵌っている俺の負けっぽいじゃん!」


 うーん、困った。どうやっても自分の勝利を認めないし撤退もしない。


「って言うかおい! 口も切ったのに何処から声を出しているんだよ?」


 その設定は考えてなかった!


「ん? この切断面は土? 判った! さては本体は他に居て、これは魔法で動かしている泥人形だな!」


 バレた!

 バレちゃ仕方ない。我軍には他に代われる剣士はいない。ならば魔道士としての俺が出て行くしかないか。


「魔道士様!」


「心配するな。侯爵の代わりに行くだけだ」


 距離が有るからか、ハルクの言っている今年はドイル男爵達には聞こえていない様だ。

 彼等はまだ誤魔化せる。


「あの、侯爵閣下はどうされたのでしょうか?」


 ドイル男爵が驚き、それでいて怯えているかの様な表情で尋ねて来た。無理もないか。


「ドイル男爵、不死身のホーキンスを知らんのか?」


 マキシムが何か言おうとしているのを俺が手で制して言った。


「不死身ですか?」


 知らないだろうな、今思い付いたんだから。


「その様子では知らん様だな。ホーキンス侯爵は魔法を駆使して不死身の身体を手に入れたのだ」


「全ては王家をお守りする為ですよ」


 俺の言った適当な事にマキシムがすかさずフォローを入れてくれる。

 さてこれで俺出番だな。


「心配するな。身体強化魔法と防御関連の魔法は既に掛けてある」


 あの手の脳筋タイプは猪突猛進すると見た。だからハルクが僅かでも動けばその瞬間、隙間無く突き出す大地の牙をイメージする事にする。

 その前に話し合いで済めば良いのだが。

 

「参る」


 とは言って診たものの、足取りは重い。

 誰か変わってくれないかなぁ。

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