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ようやくか 勝利の道筋 見えてきた

 元々は互角のは兵力。そこにこちらの半分の兵力が寝返ったら、兵力差は3倍になる。


「我軍の背後に別動隊が間もなく戻って来る。だが奴らは文字通り、裏切る!」


「御意」


「そこで別動隊を合流させずに、そのまま川を渡らせて敵の本陣を強襲させる。俺の目の前で今度はどう裏切るのか、観物だな」


 川の途中で踵を返す様なら、その瞬間に鉄砲水に流されてもらおう!


「どの様に言って川を渡らせましょう?」


「マキシム、別動隊に居るこちら側のドイル男爵とカーズ子爵には使者の前で先陣を願い出る様に指示しろ。他の連中に却下されると思うから」


「閣下の指示を伝える使者の前で先陣争いが起これば、別動隊として川を渡らざるを得ないと?」


 察しが良いと助かる。


「そこまでやればドイルとカーズの役目は終わりだ。どの道ドイルとカーズは後ろに追いやられるだろうし」


 格下の新参者なんてそんな扱いだ。


「実はな、マキシム」


 ここでようやく俺は鉄砲水を用意した事をマキシムに告げる。ニュース映像なんて無い世界だ。鉄砲水を見た事が無いマキシムは、鉄砲水がどんな物かを理解しているかは怪しい。

 だが俺が企んでいる事に期待はしている様だが。


「恐れながら閣下」


 申し訳なさそうにマキシムが切り出して来る。


「その水は多くの者を飲み込み、生命を奪うと予想されます。しかしながら閣下、その殆んどの者が領主によって徴兵された者です。彼等自身が国王陛下への謀反を企てた訳ではなく領主に従っているだけでございます。領民は領主を選ぶ事は出来ません!」


 目から鱗だ。俺は功率よくてインパクトの有る方法しか考えてなかった!

 マキシムが言ってくれなければ反逆した貴族連中と一緒に、運悪くそこの領民に生まれただけの者達を殺っていたかと思うとゾッとする。


「ですので閣下、その鉄砲水は敵軍本体に浴びさせては?」


 敵は侵略に来ているのだから、心置き無く攻められる。


「何か企んでいるのか?」


「私如きの策など、閣下の足元にも及びません」


 そう言って2人で不気味な笑みを浮かべると、如何にも悪い事を企んでいる感じになるな。


「恐れながら閣下、こちらも別動隊を用意したく存じます」


「ん? 別動隊?」


「私の手勢、少数ながらも魔術師が揃っております。私が川の流れを細工し、鉄砲水を敵軍に浴びせる所存です」


「護身用にゴーレムを連れて行け。それと通信用のプチゴーレムは持って行けよ。」


「はっ!」


 マキシムは自分の手勢、50人の魔術師を率いて密かに陣を出た。

 たかが50人。されど50人。

 全員がエリート魔術師なのでこの50人は一般的な兵の千人、いや2千人に匹敵する! と思う。



 程無くして別動隊(裏切り者)への使者が戻って来た。


「別動隊は進軍を開始。先頭はもう川に入ります!」


「ご苦労。ドイル男爵とカーズ子爵は蚊帳の外か?」


「はっ、最後尾に追いやられました」


 願ったり叶ったり!

 

「すまんが、もう一仕事してくれ」


 使者を務める兵士には扱き使って悪いが、ドイルとカーズは川に入らず、こっそりと別動隊から離脱してこっちに戻る様にと伝令してもらう。

 最後尾ならば、こっそりと離脱しても大丈夫だろう。

 そろそろ鉄砲水の準備だ。


「ラーイ、氷を溶かし始めろ! アンドレイ、合図をしたらダムを決壊させろ!」


 マキシムからの合図待ちの間に上流で待機するラーイ達に指示を飛ばす。


「閣下、準備は万端です!」


 そんな中、良いタイミングでマキシムからプチゴーレムを通じて連絡が入る。


「何をやったんだ?」


「土の属性魔法と氷の属性魔法で川の水を堰き止める仕込みを行いました。水は低きに流れますので、行き場の無い水は敵の本陣へと流れます。一方で我軍には被害はございません」


「判った。直ちに安全な場所に避難しろ!」


 マキシムを失う訳にはいかないからな。


「ラーイ、氷は溶けたか?」


「いつでもいいぜ!」


「アンドレイ、ダムを決壊させろ!」


「御意」


「シルヴァ、流れる水が再び凍らない程度に冷やせ!」


「畏まりました」


 ダムからここまで、水が流れるタイムラグを考えれば別動隊(裏切り者)が全員川に入った頃に鉄砲水が来る筈だ。

 最早、奴等は邪魔者だからな。死なない程度に水を浴びて反省してもらおう。

 


 ドッドッドッ!


 別動隊の連中が慌ててる。まだ見えなくても凄い音を立てながら何かが近付いている事は川の中の連中も気付いただろう。


「来たぞ!」


 川の水はマキシム率いる魔術師が魔法を発動させると同時に土と氷でできた急拵えの堤防によって堰き止められ敵陣に流れ込む!

 まだ夜明け前で水の色は見えない。だが所々に氷が浮いている冷水が多くの敵兵を飲み込んで行った事は判った。


「多くの者が流されて行ったな。あの場に残っている敵軍もずぶ濡れだが、仕留めたかどうか微妙だな」


「恐れながら閣下」


「発言を許可する。カーズ子爵、ドイル男爵」


 ドイル男爵とカーズ子爵はマキシムが戻るまで俺の傍に置いとく事にした。

 彼等は事情を知らないので、ホーキンス侯爵の振りをしているゴーレムに跪く。


「敵軍はずぶ濡れです。ここで魔道士様の魔法で敵陣の水を凍らせれば敵軍で身動きを取れる者は居ないかと」


 なるほど、浸水によって陣形もボロボロになっているから魔法障壁もクソも無いだろう。


「マキシム、安全な場所に居るか? 敵陣に流れ込んだ川の水を凍らせて敵軍を一気に行動不能にさせる!」


「問題ございません。私も間もなくそちらに到着致します」


 それじゃ遠慮なく魔法を使おう!


 俺はアニメのワンシーン、世界が一気に凍り付く映像をイメージして氷結魔法を使った! 

 正確に狙って、凍ったのは敵軍の陣地に広がっている水だけだ。水に浸かっていない者は、少しも寒くない、筈だ!

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