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罠仕掛け ワクワク感が 止まらない

 こちらが把握している内通者全員に名乗り出てもらった事は幸いだった。これで国を守る上での邪魔者が排除できる。

 まったくこの連中は、数の均衡が破られれば敵軍が有利と見ているのだろう。雪崩を打って別動隊に名乗り出たかと思えば、全員揃って本体を後にした。

 お陰でこちらの兵力は半分程度になってしまった。目論見通りに別動隊が敵軍に合流すれば兵力差は役目3倍になるな。

 敵はこちらが敢えて別動隊を差し向けたとは知らない筈だ。だからこちらの意表を突くつもりで、明け方を待たずに敵軍は動くと見ている。


 ちなみに別動隊は川の下流に迂回して川を渡る事になっている。

 こういう時、普通なら川幅の狭い上流に向かわせそうなもんだけど、地形的に難が有るって事にしてで下流に向かわせた。

 実は上流にはちょっとした仕込みが有るので、別動隊を近付けたくはなかったのだ。


「マキシム、暗い時に川を渡るのは危険だ。だから敵が来るのは早くても明け方以降だろう。最低限の見張りを残して、兵達には仮眠を」


「御意」


「ん?」


 マキシムがなんだか満足気な表情だ。


「失礼しました。閣下の策に感服しておりました」


「そうか」


 俺の策じゃないんだけどな!


 さて川中島の戦いでのこのキツツキ作戦だけど、通説では別動隊の為に米を炊いた煙が上杉謙信にバレて、上杉側が夜の内に動いて武田信玄が大ピンチになったと聞いている。

 でもこっちは最初から敵が動く事を想定しているからな。そこからして違っている。

 だからここからはオリジナルだ。上手くいきますように!


「でもマキシム、お前の策も取り入れたぞ。兵を休ませるって事にしながら、実は警戒は怠っていないしな」


「敵の諜報員は確実にこの本体にまだ居ります。ですので夜明けまで敵襲は無いと言いながら、一部の兵に迎撃の準備はさせます。それもこれも閣下が密かに配置して下さった伏兵のゴーレムが在ればこそです。あれが無ければ怖くてそんな事は出来かねます」


 実はこちら側の川岸には無数のゴーレムが伏兵として配置されている。敵軍が上陸しようとすれば直ちに発動する仕組みだ。

 これで敵軍が上陸しようとしても多くの兵が川の中で渋滞して身動き取れない筈だ。

 そしてその渋滞して立ち往生した敵兵を襲う作戦も用意万端!


「よぉ大将、こっちはいつでも行けるぜ」


 丁度いいタイミングで通信用の超小型ゴーレムから声がする。ラーイだ!


「ご用意して頂いたゴーレムでご指示通りにダムという物を作り、川の流れを制限しております」


 これはアンドレイだ。1度に多数のゴーレムを動かさなければならなかったのだが、アンドレイなら出来るだろう。

 これはマキシムにも秘密の作戦なので、俺の直臣である3人にゴーレムを使ってダムを作ってもらった。


「この鉄砲水作戦は切り札だ。しっかり頼むぞ!」


 上流に作ったダムを決壊させて、鉄砲水で敵を飲み込む作戦をこっそりと立てた。

 この為に敵軍よりも少し高い所に陣を張ったし、いざとなればゴーレムで土塁を作って防ぐ。

 この世界にはダムが無いので教えるのに苦労したけど、簡単な説明だけで作ったダムは適度に水が漏れてて川の流れを完全には止めていない。

 それでまだバレていないみたいだ。


「溜めた水の半分以上は凍らせてあります。使う時に指示をお願いします」


 最後はシルヴァだ。ラーイもシルヴァも母親の胎内で微精霊と融合していた。

 それが半月前の戦いで微精霊の力を失ってしまった。

 それまではそれぞれ炎、そして氷のエキスパートだった事を考えると、この2人の戦闘経験を使わないのはもったいない。

 そこで王宮魔術師団の勧めで、改めて二人共精霊と契約する事になった。

 今までと違って、強力な魔法を使う時には詠唱が必要になったりと不便だけども、悪い事ばかりじゃない。

 今度は魔力の制御が効くそうだ。これまでは触る物を無意識に、燃やしたり凍らせたりしていたがその心配も無くなった。


「いいか、指示をしたら凍らせていた水をラーイが溶かして流れる様にしろ。多少なら氷の塊は有っても構わない。いや、むしろその方が良いな」


「おう、いつでも言ってくれ!」


 ラーイの威勢の良い言葉で通信は終わった。


「スティード軍は、まさか氷水に飲み込まれる等と夢にも思わないでしょう」


 鉄砲水に飲み込まれるなんてただでさえ助かり難いのに、その鉄砲水が氷水だったらと考えた。

 下手したら心臓麻痺で直ぐ死ぬし、そうでなくても冷たい氷水の中では動きが鈍って溺死する可能性が増すと考えた。

 うーん、罠を仕掛けるって考えただけでワクワクするな!

 そんな事を思っているとマキシムが駆け寄って来た。


「閣下、別動隊に動きが有った様です!」


「そうか」


 マキシムは別動隊に諜報員を潜り込ませていて、炎の魔法の光を信号にして情報を得ているそうだ。

 それじゃ俺も別動隊に兵士の振りをして紛れ込ませたゴーレムに意識を集中させる。こうするとゴーレムが見聞きした事が俺に伝わってくるから便利だ。

 元はアルフレッドの悪事を暴く目的で開発した機能だが、こうして実用化できて重宝している。

 ん、何か聞こえてきたぞ。誰かがスピーチしているみたいだ。



「これは裏切りではない! 真の愛国者たる我々は憂国の志を胸に、スティード王国の力を借り、ディラーク王国を真なる姿へと正す!」


 いよいよそう来たか。

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