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お役目を 1人4役 こなせるか

「って言うか、ホーキンス侯爵って誰?」


 初めて聞く名前だぞ!


「あの奥の方に恰幅のいい死体があるでしょう。彼がホーキンス侯爵です。欲深い男でしたからね。彼の事です、大した信念も無く口車に乗せられてクーデターに参加したのでしょう」


 結構な言われようだな。

 でも実際に信念なんて持ってこのクーデターに参加した奴なんて居るのか?

 国家国民の為に立ち上がる志を持った奴ならば、この光景とは違う結果になっていたかも知れないけどな。

 


「エイジがなりきる人物はホーキンス侯爵ではなくて、先程まではエリクソン伯爵でもよかったと思いましたのですけれども、きっとエイジはアルフレッドの事を気にすると思いまして」


 アルフレッド、エリクソン伯爵の長男だが妾腹で生母の身分が低いとの理由から、正妻が産んだ弟達よりも下の扱いを受けていた男。

 だが気の良い男ではある。何だかんだ言って俺とは気が合う。


「なぁリック、エリクソン伯爵家はどうなる?」


「普通に考えれば取り潰しは免れないでしょう。ただ、クーデターに関与していないアルフレッドにまで罪が及ぶような事はないと思います。彼は平民として生きていく事でしょう」


「そうか」


 つい素っ気ない返事をしてしまった。


「気になりますか?」


「まあね。エリクソン伯爵家のアルフレッドやその領地とは縁が有るからな」


 俺の本拠地であるアベニールはエリクソン伯爵領に在る。気にならない訳がない。


「そうですよね」


 何だかリックまで素っ気ない返事だ。それから暫く考え込んでしまった。


「あっ、そうか!」


 かと思えば何かを思い付いたのかのか、一転して表情が明るくなる。


「でしたらやはりエリクソン伯爵にもなって頂きますよ!」


「その言い方からして1人4役?」


「ええ。宰相のトルーマン公爵、将軍であるホーキンス侯爵、宰相の補佐役としてエリクソン伯爵、そして救国の魔道士であるエイジ。これら全て、それぞれの人物となって頂きます」


「宰相の補佐役まで加わったぞ!」


 つまり、ある時は宰相のトルーマン公爵、またある時は将軍のホーキンス侯爵、そしてある時は宰相補佐のエリクソン伯爵って感じか。

 あれ、自分で自分を補佐するのか?


「ご安心ください! エイジを実際に補佐するチームを組みます。補佐官として王宮魔術師団から人材を融通します。その者達に何なりとお申し付け下さい。王宮魔術師団の能力と人脈ならば大丈夫でしょう!」


「なぁリック、なんでそんなに厚遇してくれるんだ?」


「簡単ですよ。僕は第3王子では在りましたが王位は夢見る事さえ絶望的でした。それでも偶には夢見る事もありました。自分が即位した場合の国家運営を」


 リックは遠い目をして語り出した。


「もっと活気に満ちた国にしたい! しかしそれには現在の国家体制では無理だと悟りました。前列を踏襲するだけでは進歩なんて有り得ません! 僕の理想を叶えるには何かこう、自分たちとは違う常識を持った人間。そして偉大なる伝説の大魔道士シーナの様な魔法の使い手が必要だと思っていました」


「それが俺だと?」


「はい。あの初めて会ったあのソマキの村の粗末な小屋からずっと思っていました」


 あの時か。お互いに小さな村に入り込んだ怪しいよそ者として捕まったな。


「エイジ、貴方もまた、伝説となる魔道士なのだと」


 この時の俺を見つめるリックの顔からへ笑みが消え、今までに見た事が無い程に真剣そのものだ。


「エイジと会って僕の夢が実現しそうな気がして、エイジを失いたくない一心で妹の結婚相手に出来ないかと画策しました。王都から戻ったときにはエイジは結婚していましたけれどもね」


「王女である妹の相手に貴族でもない俺に?」


「いずれは名を挙げるでしょうし、偉大なる伝説の大魔道士シーナの再来ならば問題ないと思いまして」


 改めて椎名さんのビッグネーム振りに関心するわ。


「それに妹の新しい婚約者を探していましたから。妹は昔からお転婆で「自分より強い方にしか嫁ぎません!」等と申しまして、これまでに4度も破談になっております。4人全員が妹に叩きのめされて」


「叩きのめされた? なんで俺は剣の勝負とか申し込まれずに大丈夫だったんだ?」


「余りの魔力に戦わずして負けを悟ったと思います。それでエイジの求愛をすんなりと受け入れたのでしょう」


「俺の求愛?」


 そんな事をした覚えは無いけど。


「ほら、妹を抱えて仰られたでしょう「大人しく俺に守られろ!」と」


 ああ、スティーブと戦っていたフローラに言った!


「エイジの国は判りかねますがこの国の常識として、男女間で守る意思を主張した場合は対象となる者への求愛と見なされるのですよ」


 そうか! それでそれまで活発だったフローラが急にしおらしくモジモジして「よろしくお願い致します」なんて言っていたのか!


「まぁ兄としては、このまま婚期を逃すのではないかと心配していましたので、渡りに舟と言いますか」


 そうか。宰相になったら、先ずはその社会常識からメスを入れようか。

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