表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

250/302

盟友と 今後の事を 話し合う

「すみませんねエイジ。妹が勝手に舞い上がってしまって」


「いや、全然大丈夫だ。俺達の仲じゃないか」


 結局は俺とリック以外の全員が適当に休む事にした。

 フローラは自身の為の部屋で休み、ミラは王宮魔術師の詰所にディックに案内されて行った。

 王宮魔術師は現在は殆んど全員が出払っていて部屋は空いているし、別に誰の部屋と決まっている訳ではないそうだ。

 更に言えば、王宮魔術師は全員が貴族の出なので、部屋もそれなりのレベルのホテル仕様らしい。

 詰所と聞いて消防署の仮眠室みたいのを想像していたが、それよりかは豪華な様だ。


 そして王宮魔術師の従者の控室にラーイとシルヴァ、そしてアンドレイが休む。

 和解はしたが一緒の部屋で寝る仲じゃない。それぞれ違う部屋を用意してもらった。

 それは構わないのだが、ラーイとシルヴァはそこでこのまま早速一線を越えるのか?

 なんて考えているとリックが改まってやってきた。


「エイジ、先ずは改めて謝らせて下さい」


「いやリック、謝られる覚えは無いけど」


 こうしてゆっくりと話しているのも、玉座の間に残ったのは俺とリックだけだからだ。

 尤も玉座の間とは名ばかりで、今では見るも無惨な空間と化している。

 見回せばそこら中にクーデターに参加した貴族連中の亡骸が転がり、天井は抜けて遥か上では巨大な大地の牙で吊し上げられたインフェルヌスが未だに燻ぶっている。

 その背景が満天の星空って言うのも何かシュールだ。

 でも戦った後の開放感を味わいながら見上げる星空って心地よいのも確かだな。


「僕が王族である事を隠していました。そしてこのクーデターの鎮圧にお力添え頂きました」


「それを言うなら俺だってこの国に来る前の事は話していないだろう。俺の過去はあまり芳しくない。リックの正体は気になってはいたがそれを聞いてしまうと、俺も話さなきゃって思うんだ」


「別にエイジの過去を聞きたいとは思いません。大事なのはこれからだと思っています。僕らとは違う環境で得た知識を、エイジのその力を今後もどうかお貸し下さい! そして、僕をもっと驚かせて下さい!」


「それなら任せてくれ!」


 驚かせるのはリックだけじゃない。

 リックは第3王子で在りながら王位継承には無縁だった。王位継承権争いに参加すら出来なかったに違いない。

 それは後ろ盾となる有力貴族が居なかったからだ。残念ながら母親の実家であるレイス子爵家では明らかに力不足。


 次兄のスティーブに付いた派閥はそのまま反国王派となってクーデターに参加した。コイツらは潰したからいいだろう。

 問題は長兄であった国王の派閥だな。

 別に反旗を翻した訳ではない。

 でも根っからリックを支持してる訳でもない。長兄とリックの関係は悪くなさそうだったから大丈夫だとは思うけど。

 彼等には今後は主に政治面で色々と働いてもらわなければならないのだが、貴族って一癖も二癖もあるだろうからな。これを機にリックに擦り寄って来る輩もいるだろう。

 それならまだ良い。中には自分の傀儡を求めて継承権下位の他の王族を担ぐかも知れない。

 だから、新国王の傍には強力な魔道士が居て手出し出来ない! と貴族連中の度肝を抜いてそう思わせるしかないな。

 

「リック、夜が明けたらどうするんだ?」


「宰相を始めとした国政の重要人物はクーデターで亡き者にされています。国の指揮系統が暫くは麻痺するでしょう」

 

 確かに国の重要人物を同時に襲撃するのはクーデターの常套手段だ。


「しかしスティード王国が侵攻して来ている今は非常事態です。政治的空白は作るべきではありません!」


「今いる貴族で代われる人材はいないのか?」


「残念ながらそのような重責が務まる者は皆既に亡き者にされています。クーデター軍にも幾らかかは居ましたが、そちらも皆」


 誰もいないのか! って、クーデター参加者の方は俺が殺ったんだけど。


「残念ながら信用に足る人材が居ないのが実情です。ですからエイジにお願い致します」


「ん? おいおい、まさか俺を宰相とか将軍にするつもりか?」


「はい。そのまさかです。正確には、「宰相とか将軍」ではなく「宰相と将軍」に就任して頂きたいのです」


 何? その要職の兼任。それは無理が有るだろう!


「リック、それは無理だ! やった事は無いし」


「誰でも最初は経験など有りませんよ」


 フッ、とイケメン全開でそれを今ここでサラッと言われても困るんだけど!

 政治って各方面のシガラミとか、パワーバランスを考えなければならないから俺には無理!

 それにもう1つ厄介な問題が有る。


「ぽっと出の俺がそんな要職に就いたらやっかむ輩が必ず出る。新しい国王の門出なのに、纏まる物も纏まらないぞ!」


「それは織り込み済みです。ですからエイジ、トルーマン公爵ともう1人。そうですね、やはりクーデターに参加していたホーキンス侯爵になってみませんか?」


「どういう事だ?」


 意味が判らない!


「宰相のトルーマン公爵、将軍のホーキンス侯爵、そして国王の友人である当代随一の魔道士エイジ! 1人でこの3人になって下さい! お願い致します!」


 1人で3人になりきるそれって、トリプルフェイスって奴?

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ