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勝負事 下ごしらえが 物を言う

 この玉座の間が白く煙っている内にインフェルヌスを仕留める下拵えをしなければならない。


「アンドレイ、覚悟しろ!」


 既に水蒸気によるスモークは張った。視界が悪くなった所で実際に仕留める準備をする。

 早速、爆発魔法でインフェルヌスの近くの床を狙って爆破だ。

 瓦礫が落ちる音が響く。良くは見えないが音からして床に穴を空ける事には成功した様だな。


「クククッ、一体何処を狙っているのでしようね」


「クソっ、そっちか!」


 さも見えなくて狙いを外したかの様に言ってみたが、実際には狙い通り!


「でもインフェルヌスはあの状態から動けない。これでお前に集中出来るな!」


「私の傑作はこんな物ではありませんよ」


 圧倒的な量の水による拘束は想定外だったのか、アンドレイは今までよりも力の入った声だ。

 インフェルヌスはまだ動けないが、水の蒸発するペースが早くなっている。アンドレイめ、インフェルヌスに力を入れさせたな。

 恐らくこのままではインフェルヌスを多少強引にでも動かすに違いない。そうなる前に終わらせなければ。


「オラァ!」


 最初に爆破した穴にに敢えてもう1発爆発魔法を放つ。この視界では俺が何を狙っているのかは判らない筈だ。


「クククッ、私はそんな所には居ませんよ。クククッ」


 アンドレイの口調が元に戻った。俺が故意に外している事で余裕を取り戻したな。ここまでは作戦通り。


「これならどうだ!」


 叫び声だけは気合いを入れて飛び上がると、既に空いている床の穴に向かって再び爆発魔法を複数放つ。その何れもが今までよりも強力な爆発魔法だ。

 結構下の方からも爆発音が聞こえているし、建物そのものにも振動が走る。

 これならきっと狙い通りに1階の床にも穴が空いたに違いない。これで下拵えは完了! 

 後はインフェルヌス対策を完成させる為に時間稼ぎだ。


「これでも喰らえ!」


 水蒸気のスモークが徐々に晴れてきてお互いの姿を確認出来る位になってきた。

 そうなると今度はアンドレイの気を俺に向けさせる為に、敢えて本気ではないファイヤーボールを放つ。さて、どう出るかな。


「フッ、この程度」


 軽く鼻で笑った後にアンドレイが左手を翳すとキャッチボールでもしたかの様に、その掌にファイヤーボールが収まった。

 やはりこのアンドレイと言う男、只のテイマーじゃない。


「なぁアンドレイ、お前は何者なんだ? 何の目的が有ってこんな事をしている?」


「私が何者なのかは兎も角、目的については教えて差し上げましょう」


 掌のファイヤーボールをポイッと軽くインフェルヌスに投げ、アンドレイは得意気に言った。


「元々私はエリクソン伯爵に召し出されましてね。まぁあの方はこの私でさえも辟易する位に欲に塗れていましたが、あの方には信念がございました」


「信念だと?」


「スティーブ殿下を国王に据えて、国を牛耳ると」


 それは欲望であって信念ではないだろ!


「そこで相談を受けましてね、行動を共に出来そうな諸侯に声を掛けさせ、私の意のままになるようにしました。ええ、中にはトルーマン公爵の様な影響力の有る御人もいたので思いの外多く集まりましたね。そういう意味では私も立派なテイマーと言えますかね」


「ちょっと待て、お前が使役(テイム)したのは!」


「はい。欲深き者ほど、私との波長が合う様です」


 なんて事だ。このアンドレイがトルーマン公爵一派の貴族達を操っていたんだ!

 

「まぁ私が精神を支配したとは言っても、私はエリクソン伯爵に召し出された身です。貴方が依頼主(クライアント)であるエリクソン伯爵を殺して下さったので、私も晴れて自由の身になりました。御礼申し上げます」


 アンドレイはふざけるかの様に、俺に深々と一礼をした。だが俺は背筋がゾッとする思いだ。

 アンドレイが醸し出す不気味さがそうさせているのだろう。


「スティーブを国王に据えるだけならこんな外国まで巻き込んだクーデターは大袈裟だろう。何が狙いだ?」


「このディラーク王国が南はランバート王国、北はスティード王国との争いになればどうなりますかね?」


「知るか!」


 アンドレイの企みに興味が無い訳ではないがこっちはもう準備万端だし、インフェルヌスを拘束している水がそろそろ蒸発して無くなりそうだ。早く殺っちまおう!


「まさか貴様が狙っているのは、この争乱を発端とする世界的混乱?」


 俺が終わりにしようとしているのにリックが答えた。律儀だな。だがアンドレイの意識がリックに向いた。

 ここでチャンス到来だ!


「ええ、それが私の狙いです。混沌、それこそっ」


 今だ!


「大地の牙!」


 炎には土だ!

 この技はトルーマン公爵四天王から俺の配下になったダンの技を借りた。

 要は土を鋭い牙の形にして大地から延ばして、下から相手に刺すという簡単な技である。

 今回は相手も大きいのでこちらも巨大な牙が必要となり、この3階の床下までは慎重に伸ばしたが、そこからは一気に伸ばして上手く刺さってくれた!

 イメージとしては、この太さからしてスカイツリーかな。

 頭が上で身体が下の展望台に見立ててみた。流石に634メートルは無理だけど、そのまま王宮の天井を突き抜けて伸びる風景は圧巻!

 難敵でも勝負はあっけなく決まった。

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