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あぁシルヴァ ラーイの仇と 突っ込むか

「よくもラーイを!」


「待てシルヴァ!」


 怒り任せてインフェルヌスに突っ込むシルヴァを抑えようとするが、それで止まるシルヴァではなかった。

 前に立ちはだかろうとした俺は、シベリアを思わせる猛烈な吹雪で吹っ飛ばされ、更に言えばホワイトアウトで視界はゼロだ。


「ラーイを返せ!」

 

 ホワイトアウトから視界が開けたので凍えながらシルヴァの声がした方を見れば、彼女は走りながら自分の両腕を氷で纏わせ、それを伸ばして更に膨張させて形を整える。最終的にその氷は研ぎ澄まされた太刀の様になった。

 両腕から刃渡り2メートル位の氷の刃が生えているの状態となったシルヴァを見て、不謹慎かも知れないがカマキリを連想してしまった。


「この、この!」


 シルヴァは勢いに任せて何度も斬り付けるが、その度に氷の粒が飛び散り、残念ながらどう見てもダメージを与えている様には見えない。


「無駄な事をする」


 アンドレイの感情の無い呟きが聞こえるが、確かに効果が有る様には見えない。

 シルヴァが斬り付けても、その刃はインフェルヌスの表皮からの熱で溶けかけているし、何回か打ち付けてると刃渡り2メートルが普通のレイピアのサイズになってしまっている。

 それを力任せに打ち付けてもパキンと折れるのが関の山だ。

 するとシルヴァが直ぐに剣を再生してまた折れる。の繰り返しとなっている。

 

「申し訳ありませんが、こんな下らぬ事に付き合っているほど暇ではございません。しかしまぁ、私にも情ぐらいはございます。仕方ありません。さぁ、貴女をラーイの元へと送って差し上げましょう!」


 アンドレイがニカッといやらしく頬を緩ませるのが見えた。


「殺れ!」


 命令と共にインフェルヌスの赤黒い身体の赤が燃え上がる様に鮮明になった。

 

「高温のブレスが来る!」


 根拠は無い。何となくそんな気がしたが、どうやら当たってしまった様だ。インフェルヌスはシルヴァに向かってゆっくりと、その大きな口を開ける。


「アイスウォール!」


 咄嗟にシルヴァはインフェルヌスを囲む様に氷の防壁を作り上げてインフェルヌスのブレスに備えると、防壁はそのままにして走って戻って来る。


「アイスウォールだっていつまで持つか。ならこの剣で!」


 魔力を無効化する剣、一連のクーデター騒動が終わればラーイとシルヴァに与えられる筈だったカムストックの柄をシルヴァは握り締めた。


「シルヴァ、あのブレスをカムストックで防ぐつもりか?」


「これさえ有れば今度こそ!」


 俺の話を聞いていないだろうな。と言うよりも他の事など全く眼中に無いって感じだ。

 シルヴァの頭の中にはラーイの仇であるインフェルヌスを倒す事しか無いのだろう。でも相性的に、操者であるアンドレイの方が攻めやすいと思うので、そっちを提案したかったのだが。


「うぉぉっ!」


 カムストックを構えてシルヴァが突っ込む。


「まずいですね」


 リックが落ち着き払った声で呟く。何がまずい?


「カムストックをシルヴァが持っていると言う事は、インフェルヌスのブレス攻撃を防げると同時に自分の武器である氷の魔法を使えなくなりました。そしてあのカムストックは魔力を無効化する特殊効果以外は普通の剣です。インフェルヌスを斬り付ける事はまず不可能でしょう」


 確かにな。ブレスを防いだとしてもカムストックを持っている限り、全ての魔法が無効化される。当然、シルヴァも魔法が使えない。

 それにドラゴンの硬い鱗には剣では歯が立たない。だからドラゴン退治は大変なんだと聞いた。

 それをシルヴァが剣で挑もうとしている。だけどあの強大なパワーを考えると接近戦は分が悪い所か、無謀と言える状況と言える。


「くらえぇぇぇ!」


 シルヴァの再接近に合わせてインフェルヌスがブレスを吐き出した!

 ブレスの前に案の定、氷の防壁は直ぐに溶け出す。


「これでどうよ!」


 シルヴァはカムストックの有効範囲ギリギリのラインに立ち止まり、それを構える。氷の防壁が溶け切ったらブレスを防いで斬り込むつもりだ!


「単細胞とは悲しいですね」


 上から目線で感想を言うかの様にアンドレイが呟く。そうなると反射的にアンドレイに顔を向けてしまう。


「そのブレスが魔力由来だと誰が言いましたか?」


「何!」


 気付いた時には遅かった。

 玉座の間には不気味な音が響いている。インフェルヌスのブレスの音だ。

 俺はシルヴァの方を直ぐに見られなかった。

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