表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

236/302

サラマンダー 覚醒すると ドラゴンに

「紅炎のラーイ、貴方の炎はそんな物では無い筈ですよ。どうぞ遠慮なく全力でお願いしますよ」


 アンドレイの狙いは不明だが、下品な笑みを浮かべて挑発してくる事が気に食わない。


「挑発には乗るな! 俺と交代しろ!」


 ラーイでは相性が悪い。俺が何か火属性以外の魔法でやってやる!


「大将、冗談キツイぜ。炎と炎じゃ勝てないって言いたいんだろ? 確かに俺の炎は消えちまったが、逆に言えばサラマンダーの炎も俺には通用しない筈だ。つまりよぉ、俺が相手している限り負けは無いぜ!」


 ラーイの奴、やけにスッキリした表情をしている。だからか妙に納得してしまう。


「ラーイ!」


「シルヴァ、待ってろよ。次は俺の最大の技を出す。すぐに終わらせてやる!」


 それまでずっとサラマンダーを睨み続けていたラーイだったが不意にシルヴァに顔を向けて笑みを浮かべると何やら叫ぶ。技の名前か。


「ブレイズランス!」


 離れていても判る。近付くだけであらゆる物が燃えだしそうな超高温の炎が槍の様な形状となりサラマンダーに向かって飛んで行く!


「やった!」


 ラーイの作り出した炎の槍がサラマンダーを貫いた!


「素晴らしいですよ、紅炎のラーイ。良い炎を頂戴致しました」


 サラマンダーが貫かれたと言うのにアンドレイが何故か満足気な表情を浮かべている。何を考えているんだ?


「エイジ、あれを」


 リックの指差す先には、ラーイの炎の槍に貫かれたサラマンダーが更に巨大化している!

 サラマンダーは乗用車サイズだった筈だが、今では4トントラック位の大きさがあるのではないだろうか。

 驚いていると、サラマンダーの巨大化と同時に吸収されたかの様にラーイの放った炎の槍が徐々に小さくなっていき、そして消えた。


「おやおや、まだ足りませんか。こうなったら仕方ありませんね。紅炎のラーイ、貴方ごと頂きましょう」


 言うが早いか、更に巨大化したサラマンダーはラーイに向き直ると巨体に似合わない瞬発力で一気に間合いを詰め、ラーイの眼前に迫った。


「なっ、何だよ…」


「殺れ」


 アンドレイがそれだけ呟くとサラマンダーは遠慮なくラーイに襲い掛かる!


 当然ながらラーイも抵抗はするが、巨大になって力が強くなっただけじゃなく素早い動きをするサラマンダーには、最大の技を放った直後で大した炎を出せない今のラーイには為す術もない。


「クソッ! うぉぉ、シルヴァ!」


「ラーイ!」


 シルヴァの悲痛な叫びが響く中、抵抗虚しくラーイはサラマンダーに頭から丸呑みされてしまった!


「ラーイ、ラーイ。いやぁぁ!」


 シルヴァの悲痛な叫びが響く。

 こんな事になるなんて。やはり俺が行けば良かった。



 膝から崩れ落ちるシルヴァ。こんな時に彼女に掛ける言葉を俺は持っていなかった。

 一方、そんな事はお構いなしにアンドレイは続ける。


「ご安心ください。すぐに同じ様にして差し上げますよ。クククッ」


 グゴゴゴォォ!


 と不気味な唸り声を立てながらサラマンダーが更に巨大化する!

 いや、デカくなるだけじゃなくて形態が変わっていく!


「紅炎のラーイ、素晴らしい魔力ですよ! サラマンダーは仮の姿、ラーイのお陰でようやく真の姿をお見せ出来ます!」


「そいつは何物だ?」


「よくぞ聞いて下さいました。地獄の業火より生まれし最凶の炎のドラゴン、インフェルヌスです!」


「インフェルヌス?」


 さっきまで巨大サラマンダーだったのが、インフェルヌスとか言うドラゴンとなった。

 皮膚の色はサラマンダーの時と一緒で赤黒いが、赤と黒が濃くなっている気がする。それに4足歩行だったのが2本足で立ち、首がスゥーと伸びて頭には2本の角が生えている。

 確かに姿形はドラゴンだ。


「ようやく完成しましたよ、私の理想の魔物が」


「理想? どういう事だ?」


「私の魔物に対する理論は完璧でした。過去に3回ほど覚醒に失敗しましたので、今回は炎に特化した事が功を奏しました」


 アンドレイが改心の笑みを浮かべた。


「その覚醒とやらに炎の魔力が必要だったのか?」


「ええ。その点でラーイはうってつけでしたよ。そうそう、骨の髄までしゃぶり尽くしたので残飯はお返ししますよ」


 インフェルヌスが白くて大きい何かをぺっと吐き出した。


「ラーイ!」


 シルヴァと違って俺には一瞬判らなかった。

 そこにはさっきまでの赤い髪と褐色の肌が見る影も無い、全ての色素をも吸い尽くされたかの様に真っ白になってピクリとも動かないラーイが居た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ