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サラマンダー 火力の強さは 伊達じゃない

「如何でしょう。私のサラマンダーと炎で遊んで頂けないでしょうか?」


「つまり、サラマンダーと炎対決をしろと?」

 

「はは、まぁそんな所です。貴方が火属性の魔法でサラマンダー以上の炎を出せましたなら、大人しく敗北を認めましょう」


 ようやく部屋の隅から姿を現せたアンドレイは、見た目は50代くらいか?

 悪人面で、頭は真っ白だが長身で肩幅が広くてガッチリ体型だ。濃い紫色の服で整えている。その色が何か不気味。


「エイジ、何れにせよ戦わざるを得ない様ですね」


 リックにそう言われたら受けるしかないか。ふぅ、巨大なサラマンダーが今度の相手ね。

 って言うか、サラマンダーって初めて見たから俺にとってはコレが基準であって、他の個体に比べて本当に巨大なのかどうか、ハッキリ言うとよく判らないから驚きようがない!

 目の前のサラマンダーは乗用車くらいの大きさだから、話に聞いた事が有るトカゲの大きさではなくて、小型の恐竜くらいありそうだ。

 尤も恐竜も化石か模型しか見た事が無いけど。

 

「おいお前、早く俺達を何とかしろ!」

「そんな魔道士はさっさと倒せ!」


 自軍に所属するテイマー、アンドレイの存在を確認した伯爵家の次男と3男がみっともなく喚き散らしている。

 コイツらの兄であるアルフレッドの話によれば、アルフレッドの母親は平民だがコイツらの母親は貴族、それも高位貴族だった筈だ。

 血統的には貴族であっても、人間の品位としては底辺レベルだな。こうはなりたくない。


「これは失礼致しました。早速、その忌まわしき水を取り除かせて頂きます」


 主が捕らわれているにも関わらずにアンドレイに慌てた様子は全く無く、低く冷たく落ち着いた声で淡々と言う。


「早くしろ!」

「ウスノロめ!」


「畏まりました。では始めさせて頂きます」


 抑揚なくアンドレイが言うと同時に巨大サラマンダーが悪態を付く2人にゆっくりと近寄って行く。


「ぬお、近付いただけで熱いぞ!」

「おい、何をする?」


「生憎とサラマンダーには魔道士の魔法を解く事は出来ません。ですが、その水を何とかしろとの御命令でしたので」


 そう言っている間にもサラマンダーはノッソノッソと歩を進め、遂には2人に触れる所まで近付いた。


「あっ熱い!」

「おい、やめさせろ!」


 アンドレイは耳を傾けるつもりが全く無いようだ。

 それどころか蔑みの視線を主である2人に向ける。


「ここまで連れて頂きありがとうございました。せめてものお礼に水で冷えたお身体を温めて差し上げましょう」


 アンドレイが言い終わるのを待っていたかの様にサラマンダーがノソーっと首を動かし3男の方を向くと、それまでのゆっくりした動作が嘘であったかの様な素早さで3男を拘束しているウォーターボールに噛み付いた!


「アッあァァァ!」


 3男を拘束しているウォーターボールが沸騰している!

 なんて熱さだ! 

 噛み付いてから沸騰するまで数秒しか経っていないぞ!

 あの3男、すぐには死なないだろうが確実に死ぬ事に間違いない。即死では無いので意識を失うまでの間はその熱さに苦しんで。


「あふっ!あふぅぅ」


 それを最後に3男は沈黙した。死んだのかは判らないが、少なくとも意識は失った。

 今この玉座の間には治癒魔法を使える人間は俺の他にもリックとミラが居るが誰もこの3男を助けようとはしない。

 助けるに値しない人間だと判っているから魔力の無駄遣い以外の何物でもない。

 それにこの場の緊張感が、不用意に近付く事を許さなかった。


「うーん、私としては死ぬまでに水を全て蒸発させたかったのですが、残念ながら出来ませんでした。しかし、次は蒸発させてご覧にいれます!」


 まるでサーカスで芸に失敗した動物をフォローする団員の様な口振りだな。


「やめ、やめろーっ!」


 サラマンダーが今度は次男に向き直すと、次男は必死に泣き喚く。


「ご安心ください。今度は本気を出させます。苦しむ時間はご舎弟よりも短く済ませます。ご期待ください!」


 ほくそ笑むアンドレイは何か楽しんでいる様にも見える。


「おい魔道士、俺達兄弟のどっちか1人は助けてくれる約束だろ! 弟は死んだ、だから俺を助けろ!」


「弟を殺したのは俺じゃない。サラマンダーだ。そしてそのサラマンダーはお前の雇ったテイマーが操っている。つまり弟の死に関して俺は関与していない。お前の雇い主としての責任だ。だからお前を絶対に助けなければならない訳じゃない」


「ふざけるな、助けろ!」


主導権(イニシアチブ)がどっちに有るのか理解しろ。お前に命令権は無い」


 敢えて冷たく言い放つ。どんなに命乞いをされてもコイツらは助ける気になれない。


「そろそろ参りますよ」


 サラマンダーがゆっくりと次男に向かって進み始めた。

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