口割らせ 次男と三男 見付けた
その気は無かったのだが敵の重要人物であるトルーマン公爵を凍り付かせてしまった。
解凍しても駄目だろうな。多分もう死んでる。
「エリクソン伯爵家の者は居るか?」
ならば気を取り直して、王宮を占拠した実行犯であるエリクソン伯爵の次男から話を聞こう。確か三男も居る筈だ。長男であるアルフレッドは弟が2人いると言っていた。
「お前達はもう詰んでいる。大人しく名乗り出た方が身の為だぞ!」
貴族に対する口の効き方ではない事は判っているが、この場に於ける優位性という物をハッキリと示したかった。
どいつなのか判ったら、屈辱を感じながら全てを白状して貰おうか。
「誰も名乗り出てこないな」
ウォーターボールで拘束している貴族連中の殆んどが俺より年上のオッサンだ。
そして探している伯爵家の次男と三男は、俺と同世代であるアルフレッドの弟なのだから俺より若い筈。となると随分と絞れてくるのにしらばっくれるとは。
「待って下さいエイジ。シルヴァとラーイなら顔を知っていると思いますが」
それもそうだな。さっきまで伯爵軍に身を置いていたんだからな。すっかり忘れていた。
「それがな大将、雇われる時に親父の方の伯爵とは面識あんだが倅とはねぇんだ」
「申し訳ありません。お役に立てなくて」
次男達はあまり表に出て来なかったって事か。それじゃきっとラーイとシルヴァへの命令も軍の幹部とかがしていたんだろうな。
「大将、直接聞くしかねぇぜ!」
そう言うとラーイは1人の比較的に若い貴族に近付くと、彼の下半身を拘束しているウォーターボールに手を当てる。
「あんたのお名前なんてーの?」
「無礼者!」
文句こそ冗談ぽいが顔色、特に眼に凄みを効かせながら声を低くしてラーイが聞いても、まだ自分の今の立場が判っていない様だ。
「そうかい!」
ラーイが不敵な笑みを浮かべた瞬間だった!
「あつっ、熱い!熱い!」
あの貴族はようやく気が付いた様だ。自分を拘束している水の塊が、熱湯に変わった事に!
「あうっ、言う、言う! な何でも言うから助けてくれ!」
「ほぅ。最初からそう言えば良かったのに」
身体なんか自由に動かせないのに、必死に身悶え叫ぶその様は無様としか言い様もない。
「何でも話すから!この熱さを何とかしてくれ!」
「悪りぃんだが俺は熱くするしか出来ねぇんだ!」
「そんな!」
うーん、命乞いをする人間が掴みかけた蜘蛛の糸を切るかの様なラーイの言葉に、その貴族は声を裏返した。
「冷たくして欲しいのかい?」
今度はシルヴァの出番だ。
初対面の時の様な、氷の魔女の表情で正面から近付くと、左手で貴族の右の耳たぶをチョンと摘む。今の奴は全身が熱いのに、局所的に耳たぶだけ凍て付く冷たさだ。千切れるくらいに!
「早く、早く冷たくしろ!」
「冷たくして下さい。だろ?」
「つ、冷たく……して…ください。お願い…します」
遂に泣きながら懇願した。もはや貴族としてのプライドは無い。
「聞かれた事には素直に答えな。少しでも嘘偽りが有ったら、どうなるか判っているね?」
「は…ひ」
フッと軽く笑みを浮かべたシルヴァが熱湯の塊に手を当てた途端に表情が和らぐ。どうやら温度が下がった様だ。
「取り調べの準備、整いました」
「おっ、おう、お疲れ」
ラーイとシルヴァが2人並んで俺に跪く。こうなると何か偉くなった感じがするな。
「先ずは最初の質問だ。エリクソン伯爵家の人間は何処に居るんだ?」
指差せる様に腕を自由にしてやると、部屋を見渡して隅に居る若い2人を指差した。
「あの2人です!」
30歳位に見える2人の男が、怯えた目付きでこちらを伺っている。次男と三男で間違い無さそうだ。
さて、コイツらには何から聞こうかね。




