このクズは 消し去ってやる この世から
「お前が、お前が!」
熱り立たずにはいられない。コイツがソフィから両親を奪い、ステラを終わった女にした!
「そう、熱くなるな。お前の後ろの柱に傷が有るだろう」
言われて振り返ると、確かに柱に傷が有る。
「それは、そん時の傷だ」
「何?」
村長は悪びれる様子など微塵も無い。其れ処か自慢気に続ける。
「ソマキから来た3人を痺れ薬入りの茶でもてなした。先ずは、妹の婚約者って奴を剣で滅多刺しだ!」
ステラの婚約者。多分、護衛を買って出たのだろう。イイ奴だったのかな。
「女房は当然犯すが、それじゃあ面白くねぇ!」
8年前の事だが、嫌な予感がした。
「亭主をその柱に串刺しにしてな、一部始終を見せる事にした!」
予感が的中した。予想通りの外道だ!
「イイ女だった!終わった頃には亭主は泣きながらくたばっててな、亭主に刺していた剣を抜いて裸のまんま斬りつけに来るから、また犯して終わったら殺した」
ソフィの両親の無念を思うと察するに余りある。
「殺すには惜しい女だった。今日はその娘が来ると思うと、楽しみでしょうがない!」
「上機嫌の理由はそれか?」
ワナワナしている事を自覚する。どうしてやろう、この外道。
「遺体は?遺体はどうした?」
「後から心配になって行ったワシが道端に放置されていた3人の遺体を引き取った。」
「副村長が?」
「それ以来、ワシが副村長として交渉したんじゃ。ステラを会わせる訳にはいかんからな」
正直、副村長が裏で繋がっていると疑っていた。謝りたいが、その時間的余裕は無い。
「ステラって言うのか、女村長は。たの…うぉ!!」
コイツの声はもう聞きたくない。俺はこの外道の右胸に魔力を放出した。
左胸だと心臓を潰してしまうかもしれない。
簡単には殺さない。取り敢えず肋骨を肺に刺しておけ!
「2人とも、服を着ろ!」
「でも」
「もうこの男に従う事は無い!コイツはもう終わりだ!」
念の為、両方の大腿骨を魔力で折る!
「あ…お!」
叫びたくても叫べないだろう。肋骨が肺に刺さっていれば。
「副村長、出ましょう!」
「お、おお」
外に出た俺達をリックとカールが待っていた。
「エイジ!」
「旦那!」
「詳しい話は後だ!今、ゴーレムを出す!」
「出でよ!ゴーレム!」
ゴーレムを出す事には慣れてきたが、今回は盗賊達の人数分出さなければならない。さすがに疲れる。
「カール、盗賊達にそれぞれゴーレムを付けるから、この村の金目の物や、金、作物を集めさせて馬車に詰め込め!今度はこっちが強奪だ!」
「喜んで!」
「リックは、女子供を保護してくれ!この村は俺の魔法で吹っ飛ばす!女子供はこの村の者でも避難させたい」
「了解しました」
「副村長は馬車の準備をお願いします」
「分かったわい」
人の配置が終わり、再び中に入る。
先程の2人の少女も服を着て待っていた。
「君たちも元の村に返してやるぞ!」
「でも、私たちに帰る所なんて無いんです」
「そんな、きっと親御さんだって」
「私たち、連れ去られる時に見たんです。村が焼け落ちて父さんも母さんも炎に包まれるのを!」
「だったら、ソマキの村に来い!若くて美人の村長が力になってくれる筈だ!」
「でも私たち、こんな汚れた体で受け入れてもらえるのでしょうか?」
「当たり前だ!君たちは何も悪く無い。悪い犬に噛まれたのと同じだよ」
「本当ですか?」
「ああ、だから他の娘たちも連れておいで。外に馬車を用意している」
「はい、ありがとうございます」
2人は固い笑みを僅かに浮かべ、走って行った。この外道に攫われて以来、笑った事など無いのだろう。
村ごと消す!
それが俺の結論だ。
女子供は逃がす。
盗賊行為をした者は村と一緒に消えろ。
してない男と老人は逃げるなり、残るなり好きにしろ。
兎に角、この村は消す!




