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魔物より 不気味な声の 魔物遣い

「どうやら宝物庫は無事の様です」


 リックがケルベロスの死体の奥に有る内扉に駆け寄ると、その鍵をまざまざと見つめて言った。

 

「本当か?」


「ええ、内扉が開いた形跡が有りません。この内扉の鍵は開け方が複雑なんです。恐らくは解錠を断念し、ケルベロスを番犬として置いて他の場所へ行ったのでしょう」


 この宝物庫の外扉を開けた人物は、王弟のスティーブで間違いない。そしてあのケルベロスは伯爵軍のテイマーの仕業だ。

 と言う事は、スティーブと伯爵の2男は既に合流して他の場所に向かっていると言う事だな。

 スティーブや、伯爵家の次男達が宝物庫よりも優先させる場所か。何処だろうか?


「もしエイジがその立場でしたら次に何処へ向かうでしょうか?」


「俺?」


「はい。エイジが王位欲しさに王宮を配下に襲わせた場合、何をしますか?」


 リックは何かを思い付いたかの様だ。そしてその確証を得る為に俺に聞いているかの様な感じだ。


「そうだな。もしも俺がその立場で王を殺したなら、なるべくスムーズに王になる為に自分の王位継承の正当性をアピールするかな」


「それです。兄は陛下を亡き者にしようとしました。その後に宝物庫に来た理由は恐らくは、王家に伝わる冠でしょう」


「冠か」


 確かに王位の象徴だよな。

 スティーブが国王を刺した時には傍に無かったんだろう。普段からあんな物を頭に乗っけていたら肩こり酷そうだし。

 儀式の時にしか使わなさだから宝物庫に来たけど、久しく誰も立ち入っていない事を知って他に向かったか。


「取り敢えず他の場所に行こう!」


「ええ。しかし一旦、陛下の元へ参りましょう。ミラによる治癒も終わっているでしょう」


 陰魔法に毒されている国王もミラに掛かればすっかり元通りになっている筈だ。王冠の在り処は本人に聞くのが手っ取り早いに違いない。


「ちょっと待ってくれ!」


 俺とリックが行こうとした所でラーイが呼び止める。何かに気が付いたのか?


「このケルベロスは何の為に居たんだ?」


 先を急いでいるんだから推測でしか答えが出ない質問は慎んでくれないかな。


「僕らが王宮に来ている事はあちらも知っている筈だ。このケルベロスは宝物庫に僕らが来る事を見越しての足止めだろう」


 リックがサラリと答えてみせた。そうそう。俺達をこの宝物庫で足止めして、その間に何処か別の場所に有る王冠を奪う為の足止めだ。

 答えが出た所で、さあ行こう!


「これ程の魔物を足止めの為に使うのですか?」


 今度はシルヴァか。


「弱い魔物じゃ足止めにもならない。だからそれなりの魔物を置いて、あわよくば俺達を始末しようとしたんだろう」


 

 パチパチパチパチ


「御名答」


 いつからそこに居たのか? 気が付くと宝物庫の隅から、からかう様に拍手をする男が声を投げ掛けてきた。

 声で男だと判るが影になっていてその姿は見えない。


「お初にお目に掛かります、リチャード殿下。そしてシーナの再来と呼ばれる魔道士様」


 低く冷たい声だ。

 そしてコイツは俺達の事を知っている。一気に緊張感が走る。


「おっと、そんなに身構えないで下さい。争う意志はございません」


 そう言われてリラックスする奴はいない。声だけで姿はまだ見えてない。不気味さが増す一方だ。


「何者だ?」


 リックが表情を険しくしたまま尋ねる。


「申し遅れました。私、エリクソン伯爵軍に身を置きます魔物遣い(テイマー)のアンドレイと申します。お見知り置きを」


「テイマーだと!」

 

「それじゃケルベロスもお前が?」


「ええ。ここには皆様の死体の確認に参りましたが、ケルベロスでは相手になりませんでしたね。失礼致しました」


 クククッと含み笑いをするアンドレイには言い様もない不気味さが有る。

 

「お前、大将とやる気か?」


「滅相もない。クラーケンに続いてケルベロスまで敵いませんでした。自重させて頂きますよ、暫くは」


 クラーケン? そう言えば本来ならこの季節、あんな港の傍には出ないって言っていたな。

 このアンドレイの仕業だったのか!


「って言う事は、王都に来る前に退治したクラーケンもお前が?」


「玉座の間でお待ちしております」


 俺の問い掛けに答える事も無く、その言葉と共にアンドレイの気配は消えた。一体、奴は何者なんだ?

 兎も角、玉座の間に戻る事にする。

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