宝物庫 開けてみたら ビックラポン
「第3王子と言っても所詮はお手付きで出来た子供という扱いでした。ただ、父である先代国王は何とか母を守ろうとしたのか、母のお腹が大きくなると空いていた離宮に身重の母を移しました」
「守るって何から?」
ジョギング程度のスピードで走って伯爵軍を追いながらリックと会話を再開する。
正確には伯爵軍と言うよりも、それを率いるエリクソン伯爵の次男と、伯爵軍による王宮の占拠に乗じて国王を陰魔法を帯びた剣で刺し殺そうとした王弟のスティーブを追っている。だが、あまりオッサンを走らせないでもらいたい!
「当時の王太子妃の嫉妬からです」
「と言う事は現在の王太后?」
「いえ、彼女は先代国王が戴冠式を迎える前に亡くなっています。ですから先代の王妃ですらありません」
「そうなのか」
それは意外だったな。憎まれっ子世に憚るって言うからてっきり王太后として居座っているのかと思った。
「ところでリック、俺達は何処に向かっているんだ?」
初めての場所でリックの後を付いて走っているだけなので、目的地なんて見当も付かない。
「玉座の間に倒すべき相手が集結しているかと考えてぃましたが、そんな事はありませんでした。ですから今度は宝物庫に行きます」
「王宮の宝物庫!」
どんなお宝が眠っているのかと思うと不謹慎ながらワクワクしてしまった。
とんでもない宝剣とか、金銀といった贅を尽くした装備の数々、博物館級の物がいっぱい有るに違いない!
「着きました。ここです!」
リックが重く大きな扉の前に立ち、鍵の部分に何やら魔力を送っている。
「それは?」
「王族の魔力に反応して解錠します。一応は僕も王族ですからね」
王族の魔力で開く鍵か。元の世界での静脈認証みたいな物なのかな?
俺のそんな疑問を他所にリックは宝物庫の見るからに重そうな扉を開け始める。
「何が入っているんだろ?」
「ここは宝物庫が無事である事の確認だけですけれども、扉を開けて驚かないで下さいよ。王家に伝わる3本の宝剣は何れも見事な業物ですから」
「それは楽しみだ」
さぁ、王家の誇る宝剣とご対面だ!
「中は暗いな」
言ってはみたがよく考えれば宝物庫ってつまりは倉庫だからな。普段は灯りなんて付けてないのだろう。
「大将、何か臭くねぇか?」
「それに何やらうめき声の様な物も聞こえます」
ラーイとシルヴァの言う通り宝物庫にしては変だ。何かが居そうな雰囲気なんですけど!
「そんな馬鹿な。ここには王家の宝物しか有りませんよ。光魔法で明るくします」
リックが自身の光属性の魔法で周囲を照らす。
何か唸り声の様な物のボリュームが大きくなった。しかも1つじゃないぞ!
「!」
何これ?
そこには黒くてデカい頭が3つ有る、犬にしてはデカ過ぎるけど犬の様な生き物。これってケルベロス?
多分ケルベロスだ。そいつが3日振りの餌を見つけたかの様に獰猛な6つの瞳で俺達に熱視線を送っている。
「流石は王家の宝物庫、こんな番犬が居たのか?」
うん、ケルベロスって確か番犬だよな?
なら宝物庫に居ても不思議は無い!
「いいえ、こんなのは聞いていません」
そもそもこれって犬に分類して良いのか?
北海道のクマ牧場で見たヒグマよりも身体が大きいぞ!
「大将、コイツは伯爵軍のテイマーの仕業だぜ!」
「かなり凶暴だと聞いた事が有ります。お気を付けて」
ラーイとシルヴァからアドバイスを受けたが、自然と俺が戦う流れになっている!
お前ら、俺の手下だろうが!




