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王様は 意外と気さくな 人だった

「助かったぞ。その者達がお前の言っていた、偉大なる伝説の大魔道士シーナの再来となる者とその弟子か?」


 国王は俺の事をそう聞いていたんだな。ラーイは弟子ではないけど。


「御意にございます。これなるエイジ•ナガサキこそが、偉大なる伝説の大魔道士シーナの再来となる、当代一の魔道士にございます」


 ここでリックに促される。このタイミングで挨拶しろって事だな。


「ご尊顔の栄誉を配し恐悦至極に存じます。エイジ•ナガサキにございます」


 王族に対する礼儀なんて判らないが、取り敢えず時代劇で見た偉い人への挨拶をなんとなく真似てみた。

 その上で国王にお願いしたい事が有る。俺の様な礼儀知らずを訝しげに見るであろう取り巻き達が居ない今だからこそ言える。


「恐れながら、無礼を承知の上で陛下にお願いがございます」


「エイジ、それは」


 ちょっと待てと言いたいんだろうな、リックは。

 会っていきなり「お願いが」なんて言う事は常識的に有り得ないとは思うよ。でも活躍した人間にはその功績が鮮明な内にご褒美をあげないと、「今さら」となりかねない。

 コイツらのテンションを下げたくないし、鉄は熱いうちに打てだ!

 幸いにも国王は右手でリックを制してくれた。話を聞いてくれる様だ。流石は国王陛下、器がデカい!


「陛下の御身を貫危険に晒した剣を私では抜く事はおろか、触る事も出来ませんでした」


「であったか」


 威厳たっぷりに応えてくれるけど、国王陛下(あなた)もその場に居たでしょうに!

 別に良いんだけど、何か話に乗ろうとしてる?


「これなる我が配下、ラーイの発案により陛下のお命をお助け出来ました事をご報告致します」


「ラーイとやら、大儀であった」


「その際に使用しましたこの魔力を無効化する剣、国の宝と伺っております。しかし、これを褒美としてラーイに賜りたく存じます」


「大将!」


「リチャード、確かその剣は魔力を増幅させるつもりで作った筈が、逆効果だったと言う物だな? 現在の扱いは?」


「偶然出来た物ですので、研究機関に於いて構造理論を解析中にございます」


「ならば必要な時にだけ一時的に戻せば問題無かろう。ラーイとやら、褒美じゃ!」


「ありがてえ!」


「違うだろ!」


 流石に突っ込んだ。無礼過ぎて。

 王様も王様だよな。魔力を無効化出来るって、戦いでは切り札になると思うんだが。

 本当に良いのか?


「ラーイ、その方、名は何と申す?」


「紅炎のラーイ!」


 違う!二つ名じゃない!満面の笑みで勢いよく答えるな!


「恐れながら」


「申せ」


 恐る恐るシルヴァが何か言いたいらしい。それをすぐに発言の許可を与えるなんて国王はやっぱり懐が深い。

 そう言えばリックたち王宮魔術師を国中に派遣して国の実情を知ろうとしていたんだったな。

 

「私もラーイも孤児として育ちました。ですが特殊な体質のせいで人として育てられませんでしたので姓はございません」


「ならばこの剣と姓を褒美として与える。それでよいな?」


「ありがてえ!」


 バシッ!


 剣による魔力の無効化は続いている。なので今度は目一杯の力でラーイの後頭部にチョップで突っ込む!

 無礼にも程が有るだろ!

 

「うむ!ついでにその剣にも銘を与えるか!」


 意外と乗りの良い王様だな。


「陛下!」


「カムストックだ!」


 嗜めようとするリックとは対象的に、晴れ晴れとした表情で王様は言い切った。


「陛下、カムストックとはどちらの名前でしょうか? ラーイの姓でしょうか? 剣でしょうか?」


 念の為に聞いてみた。


「うーん、両方だな!」


「えっ!」


 軽く考えて言い切った国王に今度は全員が驚く。

 いや、リックだけは無理やり納得したのか苦い表情で頭に手を当てている。


「そうだ、話は聞いておる。ついでにその方の持つ魔力を高める剣にも、余が銘を与えるとしよう!」


 今度は俺の持つエセドワーフの作った、魔力を増幅させる剣がターゲットらしい。


「いえ、そんな恐れ多い」


 適当に名付けそうだから遠回しに断ろうとしているのだが、王様はどこまでもマイペース。


「遠慮をする事は無い。その剣は、バナザードだ!」


 こうして魔力を増幅させる剣は、国王によってバナザードと名付けられた!


「由来をお聞きしても宜しいでしょうか?」


「前に飼っていた鷹の名前だ!」


 やっぱり適当な名前を付けられた!

 カムストックの由来は聞かない事にしよう。2人の為にも。

 なんて思っているとリックが雰囲気をガラリと変えて、真剣な表情で国王に詰め寄る。


「陛下、はしゃいでいる場合ではございません。陛下にあの様な禍々しい剣を突き立てた者は如何様な者でしょうか?」


 急に空気が重くなる。

 国王は何処か遠い目をして深く息を吐く。


「遂にやってくれたな。漆黒の鎧で身を包んでいたが、誰だかは判っておる」


「その者とは?」


「我が弟、スティーブだ」


「あぁぁ!」


 王弟?

 リックは苦しむ様に頭を抱えてしまった。

 伯爵や公爵を上回る大物の登場か。どうやら予想以上に闇は深そうだ。

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