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火と氷 悲しい男女の 恋模様

「つまりは、何らかの理由で母親の体内に入った氷の精霊の影響を大いに受けたと言う訳か?」


「アンタがシーナの再来なら何とか出来る筈だよ!」


 ちょっと待て。椎名さんってそんなに万能だったのか?

 リックに聞いてみよう。


「そこまでは分かりかねますが、偉大なる伝説の大魔道士ですから不可能ではなかったのではないでしょうか」


 マジか!

 椎名さん凄すぎ!でも俺にはそんなの無理!

 

「悪いがお前にそんな義理は無い。だがそうだな、ここは一旦引け。事が全て片付いてから改めて俺に勝てたら考えてやらんでもない」

 

 これで上手く誤魔化せたか?

 シルヴァの切羽詰まった眼、椎名さんと違ってそんな事はやった事無いし、出来ないなんて言える雰囲気じゃない!


「そうかい!それじゃこれでどうだ!」


 シルヴァから今まで以上の容赦ない冷気が漂って来る!

 逆にやる気にさせてしまった様だ!

 バナナで釘が打てそうな強烈な冷気だ。それだけシルヴァの願いは本気と言う事か。


「私にはもう余裕が無いんだ!待ってなんかいられない!」


逆風(アゲインスト)


 この冷気には来て欲しくない一心で放った強力な風だ!

 どうやら氷には炎と言う固定観念に縛られていたが、風属性の方が効果的な気がする。

 どんな強烈な冷気でも俺に届かなければ良いのだ。だからこの冷気には風で対抗してみた。


「なっ!」


 おまけにここは広いとは言え回廊だ。回廊全体が風を通すにはちょうどいい通風路(ダクト)になっている!


「冷気は戻って行きましたが、この後はどうするつもりですか?」


「シルヴァは氷だけだが俺は全ての魔法が使える!折角だからいろいろやらせてもらう。ウォーターボール!」


 様々な大きさのウォーターボールを作り出すと、それをランダムにシルヴァに向かって放った。

 

「エイジ、ウォーターボールは水の塊、シルヴァに届く前に凍ってしまいます!」


「それが狙いだよ」


 ウォーターボールはシルヴァの冷気に触れると氷の球になってしまう。

 そこで敢えて氷の球としてシルヴァに当てるのだ!

 つまり、今までは相手を拘束する事に使う事が多かったウォーターボールを打撃系の武器として使うのだ!


「うっ、うあ」


 自らの冷気出来ない氷の塊となったウォーターボールだった物を次々と当てられる。シルヴァはこんな攻撃を受けた事が無かったのだろう。

 形勢不利と見たのか、うめき声を上げてそのまま無言でさっきも使った氷のカプセルを作って籠もってしまった。


「ちょうどいい!」


 シルヴァが籠もるカプセル目掛けてウォーターボールを更に連射する!

 相変わらずウォーターボールは大小全てが残った冷気で凍り付くが、そんな事は想定内だ。

 でも残った冷気でもこんなに凍るなんて、敵ながら天晴!


「エイジ、これをどうするのですか?」


 リックがこれ呼ばわりしたのはシルヴァのカプセルを囲む様に積み上がった無数の氷の球の山。まるで氷の球を積み上げて作ったオブジェの様だ。

 完全に覆われてシルヴァのカプセルは見えない。


「シルヴァは冷やす専門だとしたら、自分の氷魔法を解除出来ても他人のは出来ないと思うんだ」


 だから、氷の球の表面を炎で炙ってやった。

 すると氷の球は元のウォーターボールへと戻った。

 ゼロからシルヴァが作った氷でなければ比較的、溶かし易い様だ。


「溶かした?」


「ああ。このウォーターボールは俺の意のままになる。だからこれを一体化させて、俺の魔法で凍らせる!」


「あっ、これは!」


 リックは驚いた様だが、狙い通りに出来た!

 シルヴァのカプセルを俺の魔法で作った氷で覆ってみた!

 これでシルヴァはカプセルから出ようとしても、外側は俺の作った氷で覆われている。

 凍らせる事しか出来ないシルヴァにはどうする事も出来ずに、ここに閉じ込められるだけだ。

 これで先に進める!


「シルヴァ!」


 その時、王宮の回廊には不似合いな野太い声が響き渡った!


「何だ?」


 声の主を見てみると、筋肉質の身体を見せつけるかの様に上半身が裸で、燃える様に赤く長い髪を頭のてっぺんで纏めてパイナップルの葉っぱの様にしている男が近付いて来る!

 野武士の様な衣で立ちだ!


「紅炎のラーイ、参上!」


 何の属性かと聞かなくても判る。コイツは火の属性だな。


「シルヴァ、俺が来たからには安心しろ!」


 このラーイと名乗った男、俺が凍らせたばかりの氷を盛大な炎で溶かしに掛かる。

 結構な火力だぞ!


「シルヴァ、今すぐ助けるぞ!」


 徐々にだが氷は水になり、水蒸気となっていった。

 それを指を咥えて見守る義理は無いのだが、このラーイと名乗った男の必死な形相を見て手出しする気は失せた。

 

「ラーイ!」


 氷の中から姿を現したシルヴァがラーイを見つめて、目をとろーんとさせている。

 判っちゃった。シルヴァの言っていた愛する人って、ラーイの事だったんだな!


「シルヴァ、無事か?」


「ラーイ、来てくれるって信じていたわ!」


 シルヴァ、俺と対決している時と態度が違うんですけど!


「ラーイ!」


「シルヴァ!」


 察するにこのラーイは炎の精霊の影響を受けている様だ。となるとこの2人、連携とかされたら厄介だ。

 だから抱き合おうとする2人に何か気の利いた事を言って戦いから撤収させようと思った瞬間だった!


「アッツ!」


「冷たっ!」


 愛し合っていても、抱き合えない2人がそこには居た。

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