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剣振るう リックの妹 超美人

「エイジ、陛下をお守りしなければなりません!御力を」


「判ってる!案内してくれ!」


「こちらへ!」


 リックに案内されて国王の元へと急ぐが、途中で幾つも近衛兵と伯爵軍兵士の戦闘を目にする。

 もちろん目的地には急がなければならないが、行き掛けの駄賃だ。先程同様、伯爵軍兵士は可能な限りは沈黙させながら進む。

 さっきの広間での戦いとの違いはリックが治癒魔法を施している時間が無いことだろうか。

 これは急ぐのだから仕方が無い。

 代わりと言えるのかは知らないが、広間で伯爵軍を殲滅した近衛兵達も応援に駆け付けて来た。

 後は彼らに任せて先を急ごう!


  

 少し王宮の広い回廊を進むと、俺達の前に部屋のドアをぶち破って伯爵軍兵士が飛ばされて来た!

 

「この(アマ)!」


「死にたくなければ立ち去りなさい!」


 部屋の中からは凛とした女性の声がする。

 男たちの声に比べてトーンが高いからなのか、こんな時だと言うのに良く通る声だ。


「あれは!」


 リックの目が部屋の中に居る声の主を捉えて思わず声が出てしまった様だ。


「女性が剣を使っているのか?」


 遠目だが赤い軍服の様ないで立ちの女性が、金色の長い髪を振り乱しながらロングソードを構えている!


「リック、加勢しよう!」


「いえ。大丈夫です。先を急ぎましょう」


 リックらしくもないな。女性が1人で戦っているのに!

 この部屋をよく見ると剣を振るう女性は赤い軍服を着ていて、その脇には怯えて縮こまるメイドが数人。伯爵軍兵士はざっと数えて8人くらいか。その他に彼女に敗れたと思われる4人の兵士が既に倒れている。

 圧倒的に不利ではないか!

 それにあんなロングソード、女性が扱える代物じゃないぞ。


「リック、加勢するぞ!」


「エイジ、加勢する必要も時間もありません!」


「でもな」


「あの者は身体強化の魔法を使っています。この伯爵軍兵士の中に余程の手練が居ない限りは心配は無用です」


 とは言えメイドを庇いながら戦っているんだ。不利には違いない。

 それに、義を見てせざるは勇無きなり!


炎の弾丸(ファイヤーブリット)!」


 魔法剣をライフル銃の様に構えると、弾丸をイメージした炎を放つ!

 炎の玉(ファイヤーボール)でも良かったのだが、これは弾丸と言うだけあって標的の表面に留まらずに内部まで入って燃える。

 ファイヤーボールを使った場合、御婦人の前で兵士の表面を焼くのは如何な物かと考えての事だが、体内の熱さに身悶える兵士は無視してもらおう。

 

「大丈夫ですか?」


「助かりました」


 近寄って声を掛けると、さっきとは別人かと思う位の可愛らしい声が返ってきた。

 そして改めてその顔を見せてもらうと全身に雷が落ちたかの様な衝撃を受けた!

 

「!」


 なんと小さくて整った顔立ち!

 程良い大きさでくりっとした碧い瞳、通った鼻筋、そして見るからに柔らかそうなくちびる。耳の形と大きさまで美しく見える!

 更に言えば、淡い金色のサラリとした髪と赤い軍服がその美しさを際立たせている!

 こんな時に非常識だと思うが、彼女を見て確信した!


 これまでの生涯で出会った全ての女性の中で、1番の美女で間違いない!

 正確には会ったと言うよりも、肉眼で見た。

 その中には都内で何かのロケをしているのを見た事が有るアイドルとか、女優も含まれる。

 こんな美女っているんだな!

 これはちょっと考えて行動しなければ!


「もう大丈夫です。さぁ僕と安全な所に行きましょう!」


 今となってはそれが何処かは知らないが、取り敢えず紳士っぽく言ってみた。

 美しい女性に態度が改まるのは男の(さが)だ!


「ありがとうございます。しかし私は王家を守る為に戦わなければなりません。どうかその安全な場所へはこのメイド達をお連れ下さい」


 言う事まで何と美しい!


「いいえ姫様、どうかお逃げ下さい!」

「そこのお方、どうか姫様をお連れになって下さい!」


 さっきまで恐怖で縮こまっていたメイド達が彼女を姫様と呼んでいる!

 えっ?

 美しいとは思ったけどお姫様なのか?


 確かに美しいし、溢れんばかりの気高さも漂って来る。

 うん、お姫様って納得だ。

 でもお姫様ならリックが助けない訳がないよな?


「お転婆は程々にして近衛兵の後ろにでも居なさい」


「お兄様!」


 リック、お姫様に向かってその言い草は無いだろうって、お兄様?

 お姫様はリックをお兄様って呼んだよな!


「この際なのでエイジに紹介しておきます。僕の妹です」


「エイジ様?こちらの方がお兄様が仰っていましたエイジ様ですの、お兄様?」


「ちょっと待て」



 リックの妹さんは急に何だかモジモジし始めたし、それにリックはレイス子爵家の3男だ。その妹が王宮でお姫様呼ばわりされている。

 どういう事?


「エイジ、話せば長くなりますので詳しくは後程!」


 リックに引っ張られてこの場を後にせざるを得ない。意外と力が有るな、リック。

 

「判った!妹さんは王宮に侍女として仕えて、有事の際には身体強化を使ってお姫様の影武者になるのか?」


「そんな感じです!」


 なんだかリックの対応がヤケクソ気味に感じるのは気の所為か?


「妹さん、お名前は?」


「フローラと申します。フローラ・………」


 リックに引っ張られて遠ざかりながら、フローラという名前だけが聞こえてきた。

 でもその先が聞き取れなかった。長そうな名前だろうな。

 それにしてもイケメンの兄と美人の妹、どれだけ羨望の眼差しを向けられる兄妹なんだ?


「リック、フローラさん大丈夫なのか?」


「大丈夫でしょう。それよりアルフレッドの情報にあった伯爵軍の魔術師が出て来た様ですよ」


 突然、視界が白くなった!

 これから進むべき回廊の先は、壁も床も天井も全てが白く凍り付いていた。

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