王宮に 繋がる抜け道 響く声
ダオォォーン!
俺とリックがようやく王宮の門を抜けたその時、爆発音が空気を震わせて伝わってきた。
かなり遠くの方で火の手が上がっている事は見れば判る。燃えているのはどうやら建物の様だ。
「爆発だと!」
「王宮であんな爆発を起こすと言う事がどんな意味になるか、判らない筈が無いだろう!」
珍しくリックが叫ぶだけでなくワナワナとしている。
「急ぎましょう!」
「だな」
短くそれだけ答えると、リックを抱えて足から高圧エアを出して滑る様に炎に向かう。
あんな爆発が起こっていると言う事が、王宮は伯爵軍に完全に征圧された何よりの証拠となる。
国王や他の王族は無事なのだろうか?
本来の黒幕である公爵とはどんな手筈なんだ?
考えても判らない以上は急ぐしかない!
向かっている最中にも2度目3度目の爆発が起こる。
急がなければ!
確かアルフレッドからの情報では複数の魔術師の他にテイマーも居るそうだが現段階では爆発しか起こっていない。
恐らくは残りの魔術師も何らかの活動をしているに違いないのだろうが、こっちからは爆発以外は何が起こっているのか判らないのが不気味ではある。
「止まれ!」
途中、何人かの伯爵軍兵士がスピードに乗る俺達を止めようとするが、そんな物は当然ながら排除だ!
「ウォーターボール!」
ウォーターボールを連射して兵士の動きを封じる。
既に爆発による炎が周囲に燃え広がっている様子が伺える事を考えると、こっちは火属性魔法を使いたくない。
俺も勢い余って周囲を焼いちゃいそうだし。
となると、まだ火の手はここまでは及んでいないものの、延焼を防ぐ意味も含めて水属性魔法を使うしか選択肢は無かった。
「ここから先は伯爵軍の兵士も多くなる様です。無駄な戦闘を避けましょう。何より時間が惜しい。近道を案内します!」
そう言うリックを降ろすと、彼は早速俺の先へと進んで手招きする。
王宮魔術師だから知っている近道って、どんなだろ?
「おいリック、どんどん離れて行くぞ。何処に行くんだ?」
庭園の植木と言うよりも、森と呼ぶ方が相応しい場所へと踏み入って行く。
流石は王宮!敷地内にこんな森が有るんだな。
「エイジ、王宮にはいざと言う時の為の抜け道が有ります。今回はその出口から入って建物内へ進みましょう」
「その出口がこっちに?」
「ここは複数有る出口の1つです。まさか逆に使う事になろうとは」
そりゃ脱出する為の物を進入に使うんだから皮肉な物だ。
それにしても城に抜け道は付き物と聞いたけど、本当に有るんだな!
リックに案内されて数分、2メートルくらいの岩の前に辿り着いた。
「中からは簡単に開けられますが、外側からは開かない仕掛けです。しかしエイジが身体強化している状態なら、あの岩を動かせると思います。お願いします。」
「ヨシ、任せろ!」
結構重いぞ!
本当に中からは簡単に開くのか?
「さぁ、引いてみて下さい!」
言われなくても引くしかない、物理的に押しようがないのだから!
力を入れると、ゴリッと動く。手応えは有る!
「もう少しです!」
最後にもう一踏ん張りする。すると岩が動き、人が通れる位の隙間ができた。魔道士なのに力技だな!
2人して光魔法を照明として入ろうとした瞬間だった。
「!」
何を言っているのか聞き取れないが、抜け道に若い女の声が響いた!
俺とリックは顔を見合わせると、軽く頷いて抜け道へと飛び込んで行った。
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