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ゴーレムは 盗賊達を 引き摺って

「本拠地に乗り込む?」

「ああ、きっちりと賠償させ、処分する!」

「大丈夫なの?」

「俺を誰だと思っている?」

「節操ない娘婿」

 ステラ、真顔でそんな事いわないで、そこは天才魔道士と言って欲しかった。


「俺を刺した奴も一緒に連れて行って、現地で取り調べる」

「現地で?」

「此処だと言えない事も有るかもしれない」

「分かったわ」

「あと、盗賊との交渉役だった副村長に事情とか聞きたいから連れて行く」

「副村長を?」

「ああ、事情通が必要だからな」

「分かったわ。副村長を呼ぶわ」


「カール、一緒に来てくれ。アシスタントが必要だ!」

「喜んで!」

 カールはその顔からは想像も出来ない明るい声で小気味良く答えた。


「僕も今度は行きますよ」

「リック」

「エイジからは目を離せませんからね」

「分かったよ」


 支度を整えつつ、副村長を待つ。

「副村長、お願いします」

「ワシが行っても」

 支度が終わった頃にステラに促されて渋々歩いて来る初老の男、コイツが副村長か。

「しかし、ワシは馬に乗れんぞ」

「副村長はゴーレムが抱えて行きます」

「へっ?」

 副村長に影が迫る。3メートルのゴーレムだ。

 ゴーレムは左腕を伸ばすと、副村長をヒョイと軽々しく持ち上げ、そのまま脇に抱えた。

「降ろしてくれ!」

「馬に乗れないんじゃ、それしか交通手段が無いんです!」

「これではワシは行かんぞ!」

「それじゃあ、彼奴らと行きますか?」

 ここで言う、彼奴らとは盗賊達の事だ。


 ゴーレムは副村長を抱えた左腕とは反対の右腕でロープを握っている。そのロープには盗賊達を数珠繋ぎにしてあり、反対側の端をもう1体のゴーレムに持たせる。

 つまり盗賊達は、数珠繋ぎにされ、前後をゴーレムに挟まれて山2つを走って超えなければならない。

 走れなくなれば他の盗賊も巻き込んで、ゴーレムに引き摺られるか、踏み付けられる。

 俺を刺した男も、盗賊と同じ扱いだ。


 俺とリックとカールは馬で、その後にゴーレムと盗賊達が走る。

 さぁ、出発だ!

 たまに後ろから叫び声が聞こえるが、気にはしない。


 距離は分からないが、時間にして2時間程走ったか。村が見えてきた。馬にとっては早歩きくらいのスピードだろうが、山道だったしさすがに疲れただろう。

 「おい、あの村か?」

 後ろから走った連中は息も絶え絶えだ。何人かは引き摺られていた。まだヌルい!盗賊達に掛ける情けなど有るはずも無い!


「あの村です。ブコンの村です」

 ブコンの村か。村の回りに堀を巡らせている。そういう意識はソマキの村より高いようだ。


「ヨシ、ゴーレムはここで待機。カール、盗賊達のロープを馬に括り付けてくれ!」

「へい、旦那!」

 俺達は周囲を警戒しつつ、ブコンの村に入った。


「副村長、人的被害はステラから聞いたが、コイツらに渡した作物は今までの分、全部合わせてどの位の量ですか?」

 一応、年上には敬語を使う。

「そうだな、この村の全ての収穫量位じゃねえか」

「そうですか。じゃ、全部頂きますか」


「おい、ソマキから攫った子供はまだ、この村に居るのか?」

 俺は盗賊の1人に聞いた。

「いない。全部人買いに売ったよ」

 1人でも居ればまだマシだったが、今の答えでもうダメだ。

 俺は独身で子供はいないが、子供が犯罪の被害者になることはあってはならない事くらい分かる。


「おい、村長の所に案内しろ!」

「エイジ、落ち着いて下さい」

 激高する俺をリックがなだめる。

「エイジ、落ち着きを失った行動は命取りになりますよ!」

 リックの珍しく強い口調に、反論出来なかった俺は落ち着きを取り戻した。


「そうだな。ありがとう、リック」

 気分も改めて、村長の所へ向かう。

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