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王都中 荒らしているのは 伯爵軍

 城壁の内側は王都とはとても思えない光景が広がっている。

 建物は固く閉ざされ、所々に見える灯りは燃え上がる家々だ。

 下品な男の笑い声と怒鳴る声、女の悲鳴と子供の泣き声が聞こえてくる。

 既に公爵軍による略奪が行われている事が容易に推測できた。


「リック、俺達が着いた事を隠している場合じゃなさそうだな」


「ですね」


 一言だけだが怒りを押し殺して発する声にリックの怒りが伝わってくる。


「先ずは目に見える所からだ!」


 俺は魔法剣を構えると、燃え上がる家々に向かって直径1メートル位のウォーターボールを連射した!

 巨大なウォーターボールでもよかったのだが、それだと建物ごと壊し兼ねない。

 万一、中に人が残されていた場合は俺が殺す事になるので小さいのを連射すると炎が見えなくなる。


 鎮火したのを見て今度は自分自身に身体強化魔法を使い、リックを抱えて城壁から飛び降りた。

 後は取り敢えず街を回って乱暴狼藉を働く兵士を拘束、或いは成敗する!


 先ずはゴーレムを5体作ってそれをリックに託す。リックの魔法は戦闘向きではないのでこれで身を守ってもらおう。


「二手に分かれよう!」


「承知しました。何か有ればそれぞれ空に光を放ちましょう!」


「いや、ゴーレムに話し掛けてくれ。ゴーレムとのリンクは繋いでおくから!」


 リックに渡したゴーレムとは視覚と聴覚を共有可能なので何か有っても判るだろう。

 こうしてリックと分かれ視界に入った公爵軍兵士を片っ端から片付けて行く事にした。

 

 扉が閉められていようと身体強化をした俺の耳にはあちらこちらから助けを求める声が聞こえるが、数が多過ぎる!

 こういう時は近い所からだ!

 

 ガシャーン!

 必死の抵抗をしているのだろう、皿が割れる音がした!

 俺はその家のドアを開けて入ると、奥の部屋へと急ぐ。

「いや、来ないで!」


「大人しくしろ!」


 声からするに、この家の女性を兵士が犯そうとしている事は間違いない。


「ん?」


 急ごうとする俺の足元に剣でバッサリ斬られた血塗れの男が倒れている。この家の主人に違いない。

 

「うぅっ」


 まだ死んでなかった!

 妻が心配で死ぬに死ねないのだろうな。死なない程度の治癒はしてやるが、全快までしていられない。


「悪いが女子供を助ける事を優先する!」


「…頼む…」


 死なない程度の治癒ではこの一言が精一杯の様だ。

 俺は奥の部屋へと再び急ぐ。


「キャーッ、やめて!」

「おら、大人しくしろ!」


 奥の部屋ではあまりにも予想通りの事が行われている。

 時間が勿体ない。さっさと片付けるか。

 とは言え兵士を片付けると言っても何も殺す訳ではない。死体の処理とか面倒くさいし。

 

「そこまでだ!」


「なんだお前は!」


 兵士の体が女性から離れてこっちを向いた。バカ正直な反応で助かる。

 パワーアップした魔法剣の切っ先を向けて軽い闇魔法を使う。フッと瞬間的に意識が無くなる様にイメージして。


「あれ?」


 魔法剣に新たに取り入れたクラーケンの魔石は水属性だけど魔力その物が強大なせいなのか、水属性以外の属性魔法でも威力が想定を遥かに超えている!

 意識だけ奪うつもりが、一瞬にして全身が闇に包まれた!


 それにしても1件は守ったがこの方法だととてもじゃないがこの数には追い付かないな。

 移動時間込みで1件5分だとしたら、1時間で12件が関の山と言う事になる。これはハッキリ言って効率が悪い!

 いや、効率が悪いとか言う以前の問題だ!


 何か他に良い策は無い物か?

 そう思いながら次を目指しているとリックからゴーレムを通じて連絡が有った。


「エイジ、僕は複数ある王都を守るべき組織回りつつ乱暴狼藉を働く輩を排除しています」


「それで何か有ったのか?」


「倒した兵士が言っていましたが、王都を荒らしている連中はトルーマン公爵軍ではなくて、エリクソン伯爵軍でした!」


 どっちでもいい!

 ん?待てよ、エリクソン伯爵軍なら何とかなるかも知れない!

 

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