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温めよう 濡れた身体は 入浴で

 クラーケンとの戦いが終わり海軍の艦隊が王都に向けて出航する。

 俺はそれにリックの要請で人と同じ大きさのゴーレムを数体乗せた。船の漕ぎ手としてだ。

 疲れを知らないゴーレムはきっと役に立つに違いない。

 

「エイジ、お疲れでしょう。時間も時間ですから今日はここに泊まっていきましょう。それに第一、着替えなければなりませんね」


 リックの言う通り、クラーケンに海中に引き込まれて全身ズブ濡れだ。季節は初秋。秋の夜長に濡れたままじゃ風邪ひくぞ。

 第一、海水ってベトベトしていて気持ち悪い!


「着替えもだけど、何処かで風呂に入れないかな?」


 こんな時は風呂に入るのが1番!

 問題は、この世界には風呂に入る文化が殆ど無い事だ。娼館にはあったが、あれは風呂本来の目的ではなく快楽の為、プレイの手段の1つだ!

 まぁそれで実際に数日前にローラとその気になった訳なんだが、今は純粋な目的で風呂に入りたい!


「代官、湯浴みではなくお湯に入る事が出来る所は在るか?」


「湯浴みではなくですか?」


「旦那様、娼館でしたらお湯に浸かる事が出来ますよ。お代官様にお願いをしてお風呂を貸す様に命令して頂ければ娼館はお風呂を貸すと思います。旦那様、またお背中を流させて下さい」


「また?」


 ローラ、言ってしまったか。提案は良いのだが一言多い。エリスが反応してしまったではないか。


「エイジ様、何やら珍しい事をローラさんとされるそうですがその様子、私にもお見せ下さい!」


 風呂なんて見せ物じゃないし!

 いや待てよ。外資系とか外国人向けの高級ホテルとかだと風呂場がガラス張りなんて有ったよな。あれは何の為のガラス張りなんだ?

 そんなに外から入浴している所を見られたいのか?

 それともホテルに連れ込んだ相手のシャワーを浴びる姿を覗く為なのか?

 考えでも答えは出ない。外国の金持ちって変態なのかな?


「兎に角、風呂は見せ物じゃないんだエリス」


 エリスは不満顔を隠さない。だがこれは放っておくしかない。

 結局、バスタブの有る所はそこしか思い付かない。


「アルさん、そう言う訳で娼館に浴室付きの部屋を一晩貸してくれる様に行政指導してくれ。女は要らない」


「それと代官、エイジに新しい服を用意しろ。下着も靴も全てだ!」


「畏まりました」


 アルフレッドは配下の者達に目配せすると、それぞれがすぐに行動に移った。見ていて気持ち良い程の機敏な動きだ。

 数人で俺の身体のサイズを測ると、サッと消える様にその場を立ち去って行った。


「取り敢えず花街に向かいましょう。着替えは明朝までに用意させます」


「エイジ、僕は月単位で借り切っているあの安宿に泊まります。明朝に代官所で会いましょう」


「判った」


 高潔なのかリックは花街には来ようとしなかった。

 大体あのタイプは1度羽目が外れると制御不能に陥るから正解なのかも知れないけど。


「エイッさん、馴染みの店は有るかい?」


「2軒行ったけどそれだけだ。風呂が有れば何処でも構わない。でもむしろ行った事の有る2軒は遠慮したいかな。なんか気まずいし」


「のう、ちょっと待ってもらえるか」


 横から声を掛けて来たのはエセドワーフの建築家であるトニー。一緒に行きたい訳ではなさそうだ。


「折角だからな、そのクラーケンの魔石をお前さんの魔法剣に足そうと思ってな」


「出来るの?建築家でしょ?」


「ホッホッホ。それくらい出来ん様ではドワーフの名折れじゃ!」


 エセだけどな。本当はドワーフに憧れた人間だろ!


「今の魔法剣の魔石は狼や熊の魔物とかドラゴンと言った獣系じゃからな、ここいらで海の物も足せばよかろう」


 人の魔法剣をラーメンのスープみたいに言うなよ!


「出発までには仕上げる」


「判った。頼む!」


 となると作業に取り掛かれる所が必要だな。


「アルさん、工房の様な所を今から借りられないかな?」


「任せてくれ!」


 暫く待つと数台の馬車が到着した。それぞれリックを乗せて宿屋に向かったり、トニーを乗せて工房へ向かう。エリスとローラの女2人を乗せた馬車も出た。

 そして最後に俺を乗せた馬車が花街へ向かう。俺だけ行き先がアレだが。

 アルフレッドは代官としてクラーケン討伐の現場処理を行うそうだ。代官も大変だな。

 あの時代劇の影響で代官ってイメージ悪いけど、実際に江戸時代の代官も悪企みをする暇なんか無かったらしい。

 悪代官か、これから行く娼館の風呂に女忍者がいたりしてな!


「ようこそいらっしゃいました、魔道士様。お部屋を御用意させて頂きました」


「ありがとう。言ってあると思うけど、女は用意しなくていいから」


「心得ております」


 店主にそう言われて部屋に案内されるが、案内してくれているのはかなりの美女だ!

 ここの娼婦なのか?

 勿体ない事をしたかな?


「こちらのお部屋です。お代官様のご指導通りにさせて頂きました」


 美女の意味有り気な笑みは気になったが、部屋に入って先ずは濡れた服を脱ぎ捨てる。

 誰も居ないから全裸だ!

 そして風呂に一目散だ!


「ふう!」


 身体を洗って風呂に入り、濡れた身体を温めてようやく一息付けた!


「!」


 ホッとしたのも束の間、湯煙でよく見えないが誰か入って来た?

 まさか女忍者ではないだろうが、店がサービスで女を提供したのか?


「あの、お背中を」

「お流しします」


 モジモジしながら浴室に入って来たのは、バスタオルでその身を包んだだけのローラとエリスだった!

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