表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

200/302

今回は リック目線の 話です

 僕の名はリック・レイス。

 王宮魔術師団に所属している光属性の魔術師だ。

 僕は今、王家の恥であるゲイリーの視察目的で行われようとしている、エリクソン伯爵所有の海上防衛隊と王国海軍の合同演習の中止を、艦隊を率いる提督に要請すべく海軍の宿舎に足を運んだ。

 提督とは面識が有る。僕の頼みならば聞いてくれる筈だ。


「王宮魔術師のリック・レイスだ。提督に目通り願いたい」


 海軍宿舎の入り口に立つ若い2人組の兵士に王宮魔術師の身分証を掲示する。

 若くても兵士ならば王宮魔術師の身分は知っている筈だ。案の定、微妙に顔色が変わる。


「少々お待ち下さい」


 取り次ぎを頼んだ兵士の片方がキビキビとした動きで姿を消す。提督に知らせに行くのだろう。

 対してもう1人の兵士は僕を視界から逃す事無く小刻みに首だけを動かし、体は直立不動で立ち続ける。

 この沈黙は好きにはなれないな。


「この町にはいつ着いた?」


「………」


「歳はいくつだ?」


「………」


「少しくらい反応の一つもしてみたらどうなんだ?」


「申し訳ありません。しかし黙してこの場を守る、これこそが私の任務とご理解下さい」


「そうか。済まなかった」


 任務ならば仕方ない。任務に忠実なこの若い兵士を困らせる訳にもいかない。

 仕方ない、この重い空気を受け入れるしかないか。

 それにしてもこの時間は長く感じる。


 エイジはゲイリーを拘束出来ただろうか?

 今の僕がゲイリーに会う訳にはいかないからエイジに頼んだが、あの2人は気が合いそうな所が有る事が心配ではある。



「お待たせしました。どうぞ此方へ」


 先程の若い兵士が戻って来ると、奥の部屋まで案内される。

 彼もまた、必要以上には会話をしない様だ。


「王宮魔術師、リック・レイス様をお連れしました」


「お通ししろ」


 兵士がドアを開けたその部屋には海軍提督が直立不動で敬礼をして待っていた。

 

「ありがとう。任務に戻ってくれ」


「はっ!」


 小気味良い返事を聞いてドアを閉められてもまだ敬礼は終わらない。

 僕がしないと終わらないのだったな。仕方なく僕が敬礼を返してようやく彼はその右手を降ろした。


「久しいな。僕の事は覚えていたか?」


「はっ、勿論であります!」


「今日の僕は提督にお願いをする立場だ。楽にしてくれ!」


 言いながらソファに身を沈める。勿論上座の方に。

 

「何時まで立っているつもりなんだ?」


「いえ、しかし」


「言っただろう。今日は王宮魔術師が海軍提督に演習中止を要請に来たんだ。立っていたら話にならないじゃないか」


 そんな直立不動に立っていられたら話し合いにならない。今日の僕の立場を説明して何とか提督を対面に座らせ、ようやく会談となった。

 そこで僕はこの演習の真の意味を説明した。

 エリクソン伯爵の属するトルーマン公爵一派による国家転覆計画を。

 そしてこの演習は海軍の主力をこの海域に集めて王都の防衛を手薄にする事と、ランバート王国を挑発すると言う2つの意味が有る事を説明した。


「と言う訳だ。事は一刻を争う。済まないが今すぐに艦隊を率いて戻ってくれ!」


「王都ですか?」


「ああ。海軍が予想以上の早さで王都に戻ればトルーマン公爵の計画に綻びが生じる筈だ。そして直ぐに北の海域に行ってスティード王国の牽制もしてもらうと思う。済まないが忙しくなるぞ」


「軍人として本望であります。して、ゲイリー殿下は如何なさるお積もりで?」


「最強の魔道士が迎えに行っているよ。如何するかはこれから決める」


 ゲイリー自身に力は無い。国家転覆(クーデター)後のお飾りの王として公爵一派の御輿になるしかない。

 もしゲイリーを拘束出来ればどうなるか。

 御輿は担ぐ人間が居なければ只の置物にすぎないから放っておいても良いかも知れないが、トルーマン公爵一派にとっては担ぐべき神輿を失ってしまえば大義名分を失う事になる。


「あんなのが身内かと思うと気が滅入るよ」


「心中お察し致します。リチャード殿下」


「おいおい止めてくれ。今の僕はリック・レイス。レイス子爵家の3男で王宮魔術師だ」


「レイス家は御母上の御実家でしたな」


「ああ。何かと使わせてもらっているよ」


 王宮で侍女として仕えていた母上を当時は王太子だった父上が気に入って僕が生まれた。

 王太子妃に気を遣って僕の出生は隠された結果、レイス家に生まれた2つ歳下の従兄弟に同じ名前が付けられてしまったのは単なる偶然だ。

 僕の存在が公になったのは8歳の頃だった。

 幸いそれからの兄弟仲は良好で、それは今でも続いている。

 父上は即位後間もないのにゲイリーの一件の責任を取り退位し、まだ若い長兄が即位した。


 国王陛下(兄上)はのんびり屋だから心配で仕方ない。王家は僕が守らなければ!

おかげ様で200回となりました!


ここまで続けられたのは、お読み頂いている皆様があってこそです。

評価、ブクマ、いいね、にもモチベーションを頂いております。

当初は毎日の更新でしたが、気が付けば週に2回で落ち着いています。これよりペースが遅くならない様にしたいと思います。

実は終わらせ方まで考えていますがまだ暫くは続きますので、これからもお付き合い頂ければ幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ