拷問は 殴るだけでは 芸が無い
「お前達のリーダーは誰だ?」
「知らねぇな」
太々しい野郎だ!
「質問を変えよう。何処から来た?アジトは何処だ?」
「さあな!」
盗賊の態度に確かに腹は立つ。だが何としてもアジトを聞き出さなければ。盗賊もゴキブリもシロアリも壊滅させないと、また来る。
「旦那、やっちまって良いッスか?」
カールがいきり立っている。
「カール、暴力は良くない」
「えっ?」
カールは意外そうな表情を浮かべる。確かにあの時はやり過ぎた。すまん、カール。
「それじゃ旦那、どうしますか?」
「自主的に話してもらう」
俺は6人の盗賊を2人ずつ3組に並べさせ、それぞれゴーレムにきつく押さえさせた。
「6人の中から、特に協力的な2人だけ助けてやる」
「えっ?」
盗賊達もカール達も意外そうな表情だ。
「ウォータージェット!」
なんちゃって詠唱の後で手から水を出してウォータージェットを発生させる。
カールに盗賊が持っていた剣をウォータージェットの水流に当てさせるが、難無く切れる!
現代日本では、車内に人が閉じ込められているが、ガソリンが気化している為、火花の出る切断機が使用不可能な自動車事故に備えて、優秀な日本の消防が採用しているくらいだ。
こんなナマクラ、切れぬ道理など無い!
勿論、盗賊達もカール達も皆、口をあんぐり開けている。
「さ、さすがだぜ、旦那!」
「待たせたな!それじゃ、順番に切り刻むか」
盗賊達に視線をくれてやる。さっさと口を割らせるには慢性的な苦痛ではなく、恐怖に限る。
昔のドラマでやってた!犯人達が我先にって、仲間を売って白状するやつ。
「どうせ、ハッタリだ!」
「そう思うか?」
最初に聞いた、あの太々しい奴に近付く。
「冗談だよな?」
「盗賊なんてやっているからには、斬り殺される覚悟を決めているんだよな?」
「ひっ、ひっ!」
「お前、爪が伸びてるな」
盗賊の左手の親指の爪をウォータージェットで切ってやる。ちょっと深爪になって指先の肉も切れたが、それはこれから切る物に比べれば大した事は無い。
「言う、言う!止めろ!」
盗賊は見るからに恐怖で必死な形相となっている。
「命令形で言われる覚えは無いが」
「は、いい、言わせて下さい。お願いします!助けて下さい!」
「俺達は山を2つ超えた所にある村の者です」
「仕方無かったんです。領主様に年貢を多く納めれば、徴兵は免れるんで」
「自分らが徴兵を免れる為に他の村を襲って、奪うか」
何とも身勝手な理由だ。もっとも、兇行の理由なんて身勝手な事しか無いのだろうが。
「今年の要求が多いのは、どういう事だ?」
「領主様から要求が増えたんだ。本当だ!」
領主が絡んでくると話がややこしくなりそうだ。ステラと相談みるか。
「さて、お前達をどうするかだが。押し入った先で返り討ちに遭って全員死亡っていうのが、一番手っ取り早いんだけど」
「勘弁して下さい!」
「今まで男は殺し、女は犯し、子供はさらったんだろ?どの口が許しを請う?ふざけるな!」
「許して下さい」
盗賊は反省しているのか、命乞いの為なのか、涙で顔を歪ませた所で許されることはあり得ない。
取り敢えずゴーレムに盗賊を担がせて村の中心部に向かう。
他所の村が村包みで盗賊行為を為ていたとなると、俺の判断ではどうこう出来ないと判断したからだ。
「ステラ!」
「エイジ」
ステラは俺を見ると駆け寄って来た。
「無事だったのね!」
「当たり前だろ!こんな奴等、問題無い!それよりもこいつらの正体なんだけど…」
「!」
痛みが背中に走った!
振り返ると俺より年上に見える農夫が、俺の背中にナイフを刺している様だ。。
「いやー!」
ステラの叫び声が響いていた。




