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伯爵軍 骨のある奴 やはり居た

「どうやら明るくならないと伯爵軍の詳細を掴めない様ですね」


 伯爵本人を捕らえたところ言うのにリックの表情は冴えない。何か思う所が有るのか?


「エイジも感じたでしょうが、何人かは居るであろう強者が居ないのですよ」


「確かにあっさりだったな」

 

 トルーマン公爵軍には、一応は四天王が居た。

 それを考えると伯爵軍にもそれなりの魔術師なり戦士が居て歯向かって来てもおかしくはなかった筈だ。

 それがバカ丸出しで全員揃ってセクシー映像に見入っているなんて、確かにおかしい!


「伯爵本人に聞いてみるか」


 巨大ゴーレムに、放り投げては受け止められる高い高いをされて悲鳴を上げているが、あれでも国家転覆計画の片棒を担ぐ伯爵だ。それなりの情報を聞き出さなくては。


「これからですか?」


 そうだった。これからクレアとの再会の熱い夜が始まるのだ。こんな伯爵(ジジイ)に構っている暇は無い!

 伯爵本人の取り調べは夜が明けてからにして、アベニールの町を取り囲んでいる伯爵軍には待機させとこう。

 先程までクロエを抑えていた兵士に指揮官を呼んで来させ、従えば全員の無事を保証する旨を伝える事にした。

 この伯爵軍の兵士は異常な程に素直だ。いや、素直と言うよりも自分で考えて動いていない様に見える。俺達が敵だって認識が無いのか?


「お待たせしました。私が司令官代理のガストンです」


 やって来た司令官代理だと名乗る男は、如何にも頭が悪そうな大柄な男だ。歳は40くらいに見える。


「司令官代理? 司令官はどうした?」


 嫌な予感がする。


「本隊は別行動をしています」


「伯爵本人が居るこっちが本隊ではないのか?」


「本隊は嫡男のノーマン様が率いています。ここに残っているのは閣下の趣味に付き合った者だけです」


 やっぱり公爵軍同様に伯爵軍も本隊は王都にでも向かったか。

 それはある程度は想定していたが、想定外の単語が出てきたな。


「趣味?」


「はい。ここに居る者達は徴兵はされましたが兵士として使い物にならない者達です。ですが自身の欲望には正直で、略奪は行いたいと言う事で閣下の護衛の名目で残りました」


「略奪の為って、それじゃ伯爵の趣味って」


 伯爵領では盗賊行為が頻発していた。そしてこの状況、予想は付くけどそうなのか?


「閣下は仰っていました。「夫の目の前で妻を犯すのが最高だ」と」


 伯爵領では領主自らがそんな事をしていたのか!


「私は愛想を尽かしています。しかし同行している以上は同罪。然るべき処分をお下し下さい」


 この男、自暴自棄の様にも見える。


「お前は何故そんな態度なんだ?」


「もう嫌なんです!泣き叫ぶ妻、無力で惨めな夫、そして閣下に抗えない自分。壊れる家庭を幾つも見ていると流石に心が痛みます。自分を許して欲しいとは言いません。閣下を成敗して下さる方をお待ちしておりました。そしてどうか、私にも罰をお与え下さい!」


 苦々しい表情で言葉を絞り出したこの男、脳筋かと思ったがそうでもなかった。



 結局この男、ガストンからは盗賊行為に関する情報は聞き出せたが、伯爵が国家転覆計画に参加した理由等は聞けなかった。

 その他の情報としては、ここに残っている部隊は2千人足らずしか居らず、1万人の本隊は王都方面に向かった。

 更にはこの2千人は本来ならば領都に入り、伯爵軍との合同演習に参加する王国海軍を、ランバート王国海軍と交戦させる役割があった。

 しかし伯爵の趣味のせいで進軍出来ていないらしい。

 


「エリクソン伯爵領で盗賊行為が頻発する時には南のランバート王国との間で小規模な戦闘が発生しています。男は徴兵されて無防備な村が襲われています。実際にはその盗賊行為に伯爵が関わっている場合も有りそうですね」


「今までは盗賊の上前をはねていたと思っていたが、実行犯としても加わっていたと言う事か?」


 真性のクズだな!


「ん。待てよ。それじゃアベニールでは!」


「ええ。恐らくはクレアを拉致して、エイジの目の前で犯すつもりだったのでしょう」


 やっぱりコイツは殺そう!

 取り敢えずゴーレムに一晩中、伯爵でジャグリングをさせる事にした。


 そしてこの欲望に正直な連中だが、当然ながら街に入れる訳にはいかない。

 この連中だけで伯爵もよく、本隊と別行動しようと思ったな。

 取り敢えずガストンを呼んだ本来の目的、歯向かえば殺すが従うならば危害を加えない旨を伝える。


「承知しました。兵士達は私が抑えます。ですが1人だけ私の言う事を聞かない者が居ります。どうやらちょうど、暇潰しの狩りから戻ってきた様です」


 ガストンの言葉を聞き終えると同時に、背中に寒気を感じる!

 とてつもなく強い闘気、と言うか憎悪の念の様な物を感じる!

 ゆっくりと振り返ると、暗くてよく見えないが剣を片手に持った男が身構えている事は判った。


「あの者は閣下の懐刀です。彼さえ居れば後は烏合の衆でも構わないと言う判断です」


 その男が無言で剣を振り下ろすと、魔法ではない真空刃の様な物が襲い掛かってくる!

 が、狙いは俺ではなかった。

 

 ゴゴゴォ!


 音を立てて巨大ゴーレムが崩れ落ちる!

 バカな、このゴーレムが崩れるなんて!


「あの者の剣の前には、魔法は無力です」


 ガストン、それは早く言ってくれ!

 

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