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川下り 試行錯誤で 乗り切るぞ

 短めの休憩を取れば次は川下りだ。

 ゴーレムにソリを持ち上げさせて、ここまで活躍してくれたブレードを取り外せばソリから船へと早変わり!

 レイス子爵家の技術者には本当に感謝だ。


「ここからは川下りですね。スピードダウンは痛いですが仕方ないですね」


「ああ。川を凍らせる訳にはいかないし、仮に凍らせても川は曲がりくねっているからソリのスピードでは制御が無理だ」


 川を凍らせてソリで滑走した時のコースアウトする姿が容易に想像出来るのだから仕方ない。

 それに仮に凍らせた場合の生態系への影響も計り知れないし。


「配置は?」


「左右にゴーレムを2体ずつ置いてオールで漕がせる。四天王はツッチーは休まるがスイとフーは水や風を吹かせてスピードアップの補助をしてもらう。判ったな、四天王」


「御意!」


「ヨシ、行こう!」


 休憩は終わりだ。俺達は川にセットされた船へと乗り込む。


「行くぞ!」


 こうして船は川を漕ぎ出された。

 

「かなり速いですね」


「ボートとしては驚異的なスピードだ!」


 大学のボート部とかは時速にすると20キロ位らしい。手漕ぎのボートとしてはそれが限界なんだろう。

 実際の速度は判らないが、それを考えればこのスピードはよくやっていると言えるだろう。

 流石は俺の作ったゴーレムと言ったところか。それにゴーレムは疲れないから、こういう時に助かる!

 

「リック、今がどの辺なのか判るか?」


「残念ながら目印になる物が無いのではっきりとは判りません。しかし恐らくはこの辺ではなかろうかと」


 リックが地図上に指差した所は伯爵領まではまだ遠い。昨日立てたプランよりも実際は時間が掛かりそうだ。


「このままだとアベニールへの到着は順調でも真夜中になりそうですね」


「もう少しスピードアップしたいなぁ」


 到着が真夜中では困るのだ。

 それから伯爵軍を蹴散らしたとしても、大事なのはその後だ。

 今日はクレアと熱い夫婦の1夜を過ごす筈だったのに!

 

「焦っても仕方ありません」


 はい、そうですね。

 この穏やかな川の水面の様なクレアの胸を可愛がってやれるのは今夜は無理そうだ。


「うぉっ!」


 今一瞬、船のスピードが上がった?


「何かしたのか?」


 船の後方で魔法を交代で使うスイとフーに声を掛けると、2人共に顔を見合わせている。


「申し訳ありません。私が誤って真上に風を放ってしまいました」


 フーが落ちつかない様子で報告してくる。


「そうか、後ろ側が上から抑えられた事で前が浮いて水の抵抗が減った訳か!」


 モーターボートの様に重心が後ろで前が水面から浮いた事で水の抵抗が減ったって言う訳か?

 そう言えば小学生時の水泳で、ビート板の角度の違いでスピードが随分と違ったなぁ。


「ヨシ、それじゃ配置替えだ。ゴーレムは漕ぐのを止めて最後方に並べて、四天王はその前に居てくれ!」


 これで船首が浮けば一気にスピードアップが望める!だとしたら動力は俺の魔法しかない!

 俺は魔力増幅の為の魔法剣を構えて、かつて無い程の放水を開始した!

 これまではスイとフーが水と風を水面に叩き付けていたが、その威力は2人が自分の足で踏ん張れる程度でしかなかった。

 魔法は船その物の推進力になる訳ではなく、魔法を使う個人にしかその反発力が効かないからだ。

 しかし今回は、俺の身体はゴーレムが固定しているのでゴーレムが吹き飛ばされない限りは船に効果が有る筈だ。

 様子見は終わった。一旦停止して今後の方針を共有する事にする。


「リックは前に居てバランスを見てくれ!」


「承知しました」


「ゴーレムは3体を船尾に並べる。残り1体はツッチー、お前がリックの指示に従って操れ!ゴーレムを前後左右に動かして船のバランスを取れ!」


「御意!」


 後ろばかりに気を取られて転覆したらシャレにならない!

 土属性のツッチーならゴーレムとの相性も良いだろうと思い、割り符を渡す。


「スイとフーはコーナリングでの補助を頼む」


「御意!」


 基本はこれで行ってみよう!

 体感ではあるが、直線では時速にして50キロくらい出ている気がする。

 もう少し慣れたらもっとスピードアップだ!



「ここから暫くはほぼ直線ですね」


 地図とにらめっこしながらリックが知らせる。


「ヨシ!」


 試してみたい事が有った。

 俺は自分自身に身体強化魔法を使い、3体のゴーレムにはこれまで以上にガッチリと俺の身体を固定させる。

 

「何をされるのですか?」


「飛行艇だ。ただし飛ばない」


 飛行艇は水面での離発着が可能な飛行機。この船は翼が無いので飛びはしないが、プロペラ機のエンジン並みの風でそれに近いスピードが出てもおかしくないと思う。って言うか、出てくれ!


「うぉっ!」


 イメージを膨らませて風属性の魔法を発動させると、かつて体感した事の無いスピードに思わず皆が声上げる。

 対策を取っていなければ吹き飛ばされていたであろう強風に、俺自身も多少はビビった!


 しかし、調子に乗った俺は考えが及ばなかった。

 このスピードの船を3人の四天王では制御不能な事に。

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