この俺が 加勢に来たぞ ヘイカール
「これで全員か?」
ゴーレムに意識を失っている盗賊を集めさせる。
「エイジ、先程の光る何かが飛んだと思ったら凄まじい爆風で盗賊は倒れ、家が飛ぶというのも魔法ですか?」
「ああ、魔導書を参考にオリジナルで作ってみたんだけど、どう思う?」
普通のファイヤーボールが邪念が入って、ああなったなんて言えない。
「詠唱も随分と短かった様ですが、たった1人であの規模の魔法が使えるなんて信じられません!」
「そうなのか?」
「王宮魔術師複数人で完全詠唱しても、あんな暴風は難しいでしょう」
ちょっとセーブした方が良いかもしれない。
「村長、あっちにまだ盗賊がいるぞ!」
若い村人が息を切らせてステラに知らせに来た。
「カールが戦っているけど、加勢に来てくれよ!」
カールが村の為に戦っている?
意外だ!見直したぜ、カール!
「リックは念の為ステラを頼む。俺はカールの加勢に行く!」
「了解しました。お気を付けて」
俺はカールの子分の案内で、加勢に向かった。
俺達2人が到着するとカールは剣を持って6人の盗賊と対峙している。
「お前ら卑怯だぞ!」
カールの口からそんな言葉が出る事が意外だった。俺は案内したカールの子分に状況を聞く。
「どうしたんだ?」
「仲間の1人が捕まったんだ!人質にされてるんだ!カールもそれで手が出せないんだよ」
カールの意外な一面を見た。
「カール!加勢に来たぞ!」
すっかり自信の付いた俺は、カールに気軽に声を掛けた。
「だ、旦那!来てくれたんすか!」
「旦那?」
この上なく嬉しそうなカール。その態度の変わり様にカールの仲間も、盗賊も皆唖然とする。
「おい、コイツが何だと言うんだ?」
「お前は中々やる奴だと思ったが、こんなオッサンに米つきバッタみたいにして、情けない奴だ」
盗賊達から嘲笑されたカールは目を大きく見開き、ギロッと盗賊達を睨み付ける。
「馬鹿野郎!旦那への無礼は俺が許さねぇ!旦那の凄さは俺が身を以て分かってるんだ!旦那の強さは俺が1番知ってるんだ!」
カールは唾が飛び散るのも気にせず、大声でわめき散らす。
「カール、どうしたんだ?」
カールの子分が心配顔だ。普段のカールからは考えられない変わり様なのだろう。
「お前ら、旦那には絶対に逆らうな!」
「でもカール、この人がどうかした?」
「つべこべ言うな!旦那の言うことは絶対だ!」
何回も骨を折ったカールにそう言われ、恐縮し、今になって申し訳ない気持ちだ。反省する。
カールは小走りして俺に近付くと、頭を下げる。
「旦那、お疲れ様です」
「お、お疲れ、カール」
鬼気迫るカールに、思わず尻込みしてしまう。
「旦那、仲間が1人捕まってます。旦那の力を見せ付けてやって下さい!」
なるほど、盗賊の足元に転がっている奴がカールの仲間か。
「カール、盗賊は生け捕る!」
「生け捕りッスか?」
「アジトを抑えて壊滅させるから、後で拷問しようぜ!」
「旦那、お手伝いさせて下さい!」
変われば変わるもんだな、カール。
俺は盗賊達に右手を向けて、詠唱っぽい事を始める。
「ゴーレム!」
ゴゴォゴォ!
低く響く轟音と伴に盗賊達の足元に3体のゴーレムを登場させた。
「うわっ!」
「何だこれ?」
盗賊達はゴーレムの登場に驚愕し、この上なく動揺している。
「大人しく縛に付け!」
これ、言ってみたかった!
余程のことがない限り、生身の人間はゴーレムに勝つ事は難しいだろう。
この盗賊達の動きを見る限り、強そうには見えない。
ゴーレムは大きさで動きが違う。大きいのは力強いが、スピードに欠ける。小さいゴーレムはその反対で、動きは速いがパワーが足りない。
人間よりも少し大きいくらいがバランスが良い事は、昨日練習で確認済みだ。
だから、今出したゴーレムもその大きさばかり。
案の定、呆気なく盗賊達はゴーレムに制圧された。




