領都戦 花火が立派な 武器になる
ワイバーンで飛んだので随分と早く領都上空に到着出来たが、予想通り公爵軍が領都を取り囲んでいる事が上空からだとよく分かる。
「あれが公爵軍か」
「正確には公爵軍の1部ですね。本体はこんな数ではありません。となると既に本体は王都に向かっているでしょう」
「陸軍が国の南と北に出て王都が無防備になった瞬間を狙っている訳だよな?」
「はい。恐らくここに居る部隊はこの領都ナサートを制圧して立て籠もり、陸軍を引き付ける事が目的の筈です。当初の公爵の目論見ではランバート王国軍にこの領都を陥落させ、そのまま陸軍と交戦させて引き付けておくつもりでしたが、既にランバート王国軍を動かす事に失敗して切り替えたのでしょう。そんな目論見通りにはいきませんね」
「そしてこの、領都攻略も失敗する!」
言い終わるかどうかと言うタイミングで迎撃の火の球が飛んで来る!
結構な数だな。こんな出迎えは遠慮したかった!
「リック、公爵軍をすぐに殲滅させるぞ!」
「エイジ、偉大なる伝説の大魔道士シーナの残した言葉からなる大魔法を使うのですか?」
「いや、まだだ。それは領都の城壁にでも登って使わせてもらうよ」
それにはこの対空砲火を黙らせなくては!
「火の球って言うのはな、こう使うんだよ!」
あちらが対空砲火なら、こっちは空爆だ!
俺は魔力を増幅させる魔法剣を抜く。ここで使わなきゃ、いつ使うんだって話だ。
着弾点で炸裂して燃え広がるナパーム弾をイメージして放つ!
あちらは短いながらも1発毎に詠唱しなければ放てないが、俺は無詠唱で無尽蔵に連射も出来るので遠慮はしない!
「沈黙した様ですね」
まだ上空なので詳しくは見えないが、その様だ。
対空砲火も止んだので領都内に着陸し、リックを降ろして俺は仕上げに取り掛かろう!
「それじゃリック、領都防衛隊が来る頃には片付けておくよ!」
「シャレになっていませんね。情報を聞き出す都合が有ります。指揮官は生かしておいて下さい」
空からワイバーンに乗って若様が降りてきたから、領都の市民はリックを見てみんなポカーンとしている!
そんな事は気にせずに、お互いニッと笑ってここから少しの間は別行動だ。
俺は領都の城壁に登って展開する公爵軍を見た。数は多いが横に広いからちょうど良い!
「試し撃ちとは言え公爵軍には勿体ないな」
椎名さんの言葉には『火』『花』『滝』と有った。
となると、この幅広く展開している相手にはこれしか思い付かない!
ナイヤガラの大瀑布から落ちる大量の水の如く火花が豪快に落ちる美しさに定評の有る仕掛け花火をイメージだ!
本家とは違うのは、美しいけどこれは危険な美しさ。この火花は超高温なので浴びたら焼け死ぬと思う。
でも美しい!どうせなら、夜にやりたかったな。
次は椎名さんの言葉に『ネズミ』とあったので、公爵軍の真ん中に巨大なネズミ花火を作り出した!
地を這う様に動き回り、その間ずっと火花を散らすネズミ花火の出現に公爵軍はパニック状態だ!
当然、その火花も浴びたら焼け死ぬ。花火って恐ろしいな!
後は仕上げといきたいが、様子がおかしい所が何カ所かある。
矢鱈と水蒸気が上がっていたり、土が盛り上がっている所がある。
「そこの魔術師!」
突然、公爵軍から声を掛けられた。魔術師ではなくて魔道士なんだがな。
その変な所からだ。えっと、4人の男が立って俺を睨み付けている。
コイツらだけ特別なのか、揃いのライトグレーの軍服にそれぞれに黒、白、赤、青のマントをなびかせている。
「貴様、この様な惨劇を魔法で行うなど、魔術師の風上にも置けぬ!恥を知れ!」
敵からこう言われるのは、きっと誉め言葉として受け取れば良いのだろう。
「同じ魔術師として許せん!」
「俺は魔術師ではない。魔道士だ!」
違うのは名前だけ。お萩とぼた餅みたいな物だが、一応そこは拘っている!
「黙れ!貴様の様に卑劣な魔法に我等が屈する事は無い!」
「我等、四天王の名に於いて」
「必ずや貴様を成敗する!」
「正々堂々、いざ勝負!」
四天王だか何だか知らないが、また変なのが出てきやがった!
あの国境の村の惨事は公爵軍のせいだろう。本当に自分の事は棚に置く奴等だな。
第一、正々堂々の勝負と言われても4人対1人なんだが。




