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火を消して 消防吏員を リスペクト

「なっ、なっ何でこうなった!」


「ひどい…」


 燃え盛る村を目の当たりにして俺達の行動は停止してしまった。

 だが、止まっている場合じゃない!


「俺は消火活動に回る!リック達は生存者の捜索と救助だ!」


「………」


 誰からも返事が無い。リックもディックも、そしてミラまでもが村を覆う炎を前にして立ち尽くしている。


「しっかりしろ!」


 俺はウォーターボールを作ると、3人の頭上で破裂させる。すると次の瞬間には3人はバケツの水でも頭から被った様になり、それぞれに文句を言う。


「突然何をするのですか?」

「びしょ濡れじゃない!」

「これは一体?」


「ボケッとしている時間は無いぞ!頭から水を被れば火の粉くらいなら防げる!」


 3人はハッとなり、ようやく自分たちが動かなければならない事を理解した様だ。


「生存者の捜索にはそれぞれにゴーレムを付ける。炎で家が崩れ落ちる時の防御や、瓦礫の下に生存者が居た時に使ってくれ!」


「了解しました」


 俺は身長3メートルのゴーレムを3体作ると、そのゴーレムを操る割り符を3人に渡した。


「あと注意すべき事として、瓦礫の下敷きになっている人には治癒魔法の準備をしてから、瓦礫を撤去するんだ。瓦礫で圧迫されて滞っていた血が急激に流れて、思わぬ大出血を呼ぶ!」


 らしい。

 俺も詳しくは知らないが、事故現場に駆け付けた医療ドラマでそんな事を言っていた。

 実際に阪神大震災では、助けたつもりがそれで悪化した例も有ったらしい。


「心得ました。生存者の保護は僕等で引き受けます。エイジは消火をお願いします」


「火を消し次第、俺も救助に向かう」


 俺は3人と離れて水魔法を使い始めた。

 この世界には消火活動中に水を掛けたらヤバい化学薬品とか、感電する様な電気は無い。

 安心して水魔法を使いまくれる!


 消火活動を始めてから両手でかなりの水圧で放水を続けているが、中々先に進めない!

 こうなったら、この際だから他の方法も試してみよう!


 村の上空に巨大な水の塊を作ると、そこからバケツをひっくり返した様な雨を降らせる。

 スコールと言った方が早いか。

 この巨大な水の塊ごと燃えている家々に叩き付けようかとも思ったが、その家に生存者が居た場合には俺の魔法で死ぬかも知れない!

 それは御免被る!


 俺はこの様に建物の上からはスコール、外からは窓やドアから放水をして消火している。

 辺り一面、白くなり視界が確保出来ない!

 風魔法を使いたい所だが、火事に風なんて延焼を広げるだけなので使えない。

 これじゃとてもじゃないが危なくて消防士の様に燃えている家に入っての生存者の調査は疎か、炎にも近付けない。

 安全確保しなければ消火活動なんて無理な自分が、消火活動して初めて判った。

 消防士の皆さんって凄いな!

 あの毎日の訓練は伊達じゃない!

 見ず知らずの赤の他人の為に、危険な所に進入するなんて俺には無理だ。


 気が付けば空が若干、明るくなってきた。

 夜明け迄が勝負だ。暗い内ならば燃えている箇所が見付け易いが、明るくなると消し残りも有るかも知れない。

 そんなのが有ればさいねんしかねない。


水爆弾(ウォーターボム)!」


 水風船を連想して作った水の塊だが、大きさはサッカーボールくらいある。これは当たった所で破裂して水が周囲に飛び散る仕組みだ。

 利き手でない左手だと放水の狙いはイマイチなので、左手からは炎に対して弾幕張るつもりで水爆弾を四方八方にマシンガンの如く連射し、右手は放水を続けた。

 上からはスコールを続ける。


「空から見た限りでは鎮火した模様です。村内に燃え残りは有りませんし、周囲の山林にも燃え広がりは確認出来ません!」


 ワイバーンの御者からの、聞きたかった報告が有った時には空はすっかり明るくなっていた。



「そうだ。生存者は?」


 昨夜迄は村のメインストリートだったと思われる広い道を歩いて、リックやミラを探した。

 程なくしてゴーレムを見掛けた。ミラが一緒だ。

 

「ミラ!」


「エイジ?」


 俺の名を呼ぶとミラは泣き崩れる。

 理由を予想するが、1つしかねない。


「ダメ。みんな殺されていたの」


 慰める言葉を用意していなかった俺は、ミラを優しく抱き締めるしか出来なかった。

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