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ゴーレムで 真昼の情事に お邪魔します

 欲望に身を任せたらドアをガバッと開けてローラをそのまま押し倒してしまいそうだが、何とか踏み留まる事が出来た自分を褒めてやりたい!

 まだ陽は高く理性が活動している時間なので事無きを得たが、俺の苦悩を他所にローラは益々1人で盛り上がっている。

 俺はドアをそっと閉め、自室に戻った。


「どうかしましたか?」


 動揺を隠せない俺の表情に出ていたのか、リックが心配して聞いてきた。


「いや、何でもない。代官所に置いてきたプチゴーレムが使えそうだからやってみるよ」


 ローラの事は黙っておこう。言った所で誰も得はしない。

 リックやディックに言った所でリアクションに困るだろう。興奮するのは俺の様な奴しかいない!


 さて、気持ちを切り替えて代官所のプチゴーレムに精神を集中させる。

 代官所の応接室が見えてきた!

 予想以上に上手くいく。こんなに便利ならもっと前から使えばよかった。

 どうも応接室には誰も居ない様だ。

 まぁ応接室だからな。来客が無ければ誰も居ないのは当然か。

 それじゃあプチゴーレムを動かして代官所内を移動するか。


 だがその直後、俺はプチゴーレムの致命的欠点を痛感した。

 プチゴーレムの身長は20センチ程度だ。この大きさだとドアノブに手が掛かる筈も無いのでドアが開けられない!

 つまり、密閉された部屋からは移動が不可能と言う事が判明した!


 どうにかならないかと思っていたその時、応接室のドアが不意に開かれた。

 慌ててプチゴーレムを物陰に隠して入って来た人物を見ると、あれはアルフレッドの後ろに居た奴だ。

 意外にも若い女性と一緒だ。


「本当に奥様と別れてくれるの?」


 こういう台詞が出てくるって言う事は、不倫か。

 

「ああ、あいつの実家が金の有る商家だから貰ってやったが、それももう必要なくなる。もうすぐ俺は小さいながらも領主だ。本当に好きな女だけ傍に置くさ」


「嬉しい!」


 その後は2人は抱き合い、応接室でそのままの勢いで情事を始めやがった。

 ここは代官所の応接室だぞ!



 そして、即終了した!

 いくら何でも早過ぎだろう。俺でももう少しは長持ちするぞ!

 ソファに2人並んで腰を掛け、満足げに引き続き女の身体を弄り回しながら話出した。

 古今東西、調子に乗った馬鹿って良く喋る。

 この隙に情報を引き出せないかと考える。


 見ると聞くが出来るなら、話す事も出来るのではないだろうか?

 この女になりきって聞けば答えそうな感じだ。仮に上手くいかなくても誤魔化せそうな気がする。



 本来ならば女性に手荒な事はしたくないが、プチゴーレムにソファをよじ登らせ、計画の邪魔になるこの女の後頭部を殴らせて気絶させて試してみる。

 女のすぐ傍にそのまま待機させたプチゴーレムは声は出せる様だが女の声、それも情事直後の女の声を俺がイメージしても上手くいかない。

 俺がやっても違和感しか無いし、この男に女言葉を使う事は気持ちが悪いし、やっぱりリアリティに欠けるんだな。


 リアルな情事後の声を出せる女は……居た!

 俺は部屋を飛び出しローラの居る部屋へと向かうと、コンコンと素早くノックはしたが、「どうぞ」という言われる前に強引に入った。


「きゃっ!旦那様!」


 当然だが、突然現れた俺にこの上無く驚いている。

 そして次の瞬間には自分の姿に意識が行ったのだろう。露わだった所を咄嗟に隠すと、泣き叫ぶ。


「見ないで下さい!」


 気持ちは判るが、襲い掛かりに来た訳ではない。それはさっき乗り越えた。


「悪いがローラ、働いてもらうぞ!」


「えっ?」


「ローラ、言う通りにしてくれ」

 

「えっ、ちょっと」


 直接ローラに触れたらそれこそヤバいので、初めて会った夜に彼女に施した治癒魔法を使う。

 あの時はオイルマッサージをイメージしたからか、有り得ないくらいに感じていたが今回はどうか。


「あっ、あっあぁっ」


 案の定、今日も良い声を出しやがる!

 だが残念ながら今の俺はローラの艶っぽい声に興奮している場合じゃない!

 ここまで思った様に出来た。それならローラの声をそのままゴーレムから流す事も可能な筈だ。


「ローラ、この状態で質問をしろ!甘えながら」


「質問…です…か…あっあっ」


「領主になるってどういう事かって話を聞かせろって」


「領主に、なるって、どういう…ことなの……」


 言われた通りに言おうとするが、息遣いが荒くなっていて上手く話せない。

 でもそれがリアリティだ!


「急に良い声を出したな。その方が燃えるって物だ。良いだろう、教えてやろう」


 成功だ!

 こんな手に冗談みたいに引っ掛かるとは。何も疑っていない様だ。


「公爵様がスティード王国と通じているのは前に言ったな。陸軍と海軍を南のランバート王国に当てている間にスティード王国に北から攻め込んでもらう。陸海軍の残留部隊が北に向かって王都を守る軍がいなくなった所を俺達、反国王派の軍勢で制圧する事は言ったな」


「あぁっ、そうね。あっ、い」


「今日は感じ易いのか?まあいい。粛清した親王派の領土を公爵様や伯爵(オヤジ)で分け合う訳だが広過ぎだからな、俺達伯爵家の幹部クラスも御相伴に預かる訳だ」


「素敵ね。でも…スティード王国がよく呼応して…あっ、くれた…」


「奴隷や女を渡しているからな。それに密輸で稼いだ金も政府の上層部に渡してある。餌付けは完了した。今じゃこっちの言う事は何でも聞くぞ」


「凄い、あっ」


「嗅ぎ回っていた王宮魔術師と邪魔な魔道士は国の隅である領都(ここ)に釘付けにしてやった。邪魔はさせない。その為に港建設をあの馬鹿息子(アルフレッド)にさせたんだからな」


 そういう事か。

 俺はプチゴーレムを物陰まで移動させてから通信を切った。

 大体判った。

 

「ローラ、ご苦労さん」


 そう言い残して引き上げ様とする俺の手をローラが握って離さない。


「旦那様」


 ローラに変なスイッチが入ってしまった様だ。

 俺が入れたのだが。

 取り敢えず、この部屋にゴーレムが無い事を確認しておこう。

 俺以外にあんな事は出来ないだろうけど。

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