イメージで テレビで見た事 やってみた
ステラと村人たちの方に急ぐが、悲しいかな40代。思いとは裏腹に足は進まない。
だが必死である事に間違いはない。
ソフィを見つけて守らなければ!盗賊にソフィが見付かれば、何をされるのか想像に難しくない!
申し訳ないが、本音を言えば他の村人全員よりもソフィ1人の方が大事だ!
「ステラ、ソフィはどの辺に手伝いに行った?」
「もうすぐよ!無事でいて、ソフィ」
視界には倒れているが、何とか立ち上がろうとしている年老いた農夫が見える。
「大丈夫?ソフィは?」
「ソフィはあの小屋に連れて行かれた。止めようとしたんじゃが」
「エイジ!」
かなり焦っているステラの問い掛けに、農夫は力を振り絞って答えた。申し訳ないが治療は後回しにさせてくれ!
「あの小屋にソフィが!」
「エイジ、急いで!」
ステラが言い終わる前に俺はその小屋に全力疾走した。こんなに走るなんて何年ぶりだろう。
力一杯に小屋のドアを開けると、人が動く気配を感じた。
「ソフィ!」
「エイジ!」
見るからに、ソフィは必死に抵抗したものの男と女の力の差だ。健闘虚しく押し倒された所だったのだろう。まだ着衣にも目立った乱れは無いし、ソフィに馬乗りになっている訳でもない。
間に合った!
この盗賊を1番安全にソフィから遠ざけられる魔法、それは水だ!
他の属性ではソフィを巻き込む恐れが有る。風だと範囲が絞れないし、火だとソフィごと燃やしかねない。
カールで実験した魔力放出もコントロールを考えると確実とは言えない。
それを思うと、水は世界各地で暴徒の鎮圧にも使われているし、ソフィが怪我する事もないだろう。
俺は消防車の放水をイメージして水を出す。しかし、放水の瞬間に雑念が入った。
凄い圧力で、かつ噴出口を1ミリ以下のウォータージェットは切れない物が殆ど無い。ダイヤモンドでも切るってテレビでやってたなぁ。
って思ったら、水がそのウォータージェットになっていた!
若干の距離が有るので、硬い物を切れる圧力は無いと思うが人体ならば切れるだろう。
実際に放出時に距離を詰めたが、多少の条件が悪かろうとウォータージェットが盗賊の体を切り刻む!
目とか鼻とか顔面の骨の無い部位を狙ったつもりだが、実際には何処から入ったかは分からない。兎に角、超高圧の水が後頭部から貫通している。多分もう死んでいるだろう。
うめき声とか断末魔とか出したのかもしれないが、水の音で聞こえる訳もない。
その死体をソフィから離すべく、今度は消防車の放水に変える。すると勢い良く壁まで吹っ飛んだ!
「ソフィ、もう大丈夫だ!」
「エイジ」
ソフィは抱きつき、そのまま俺の胸で思いっ切り泣いた。
今しかないだろう!
俺はソフィを優しく腕を廻し耳元で囁く。
「ソフィは俺が守る。約束します」
「はい」
「ソフィ、俺が盗賊を壊滅させて村の脅威を拭い去れたら」
「はい」
「結婚して下さい」
「はい?」
抱き合っているので表情は見えないが、微妙な雰囲気になった気がする。
「それ、今?今言うことなの?」
「いや、タイミング的にいいかなって」
「こんなびしょ濡れで言われたくなかったわ!」
確かにソフィは水飛沫を浴びてびしょ濡れだ。でもタイミング的に、ここだと思ったんだけどなぁ。
「取り敢えず着替えに帰れば?」
「でも其れ処じゃ」
「大丈夫!戻って来る頃には片付いているだろう。そしたら今度こそ、プロポーズだ!」
「それ、予告しなくていいかな」
ソフィの表情が引きつったが、泣いているよりも良いだろう。
小屋の外に出たソフィは、後から来たステラと抱き合って無事を喜んだ。
「ソフィ、今から護衛を付けるから」
この世界で最初に使った魔法、土属性魔法、土人形製造!
広く浅くよりも、1つの属性魔法をある程度出来た方が良いと思って、昨日は夕方まで土属性を練習しておいた成果だ!
俺は何となく詠唱ぽく聞こえそうなヒット曲の歌詞を呟き、両手を地面に向ける。
「出でよ、ゴーレム!」
ゴゴゴと音を立て、地面から土人形が3体出てきた!それぞれ大中小とサイズが分かれ、大きいのは2メートル以上、中サイズは俺と同じくらい、小さいのは1メートルくらいだろうか。
ゴーレムって言っちゃったから、これからはゴーレムと呼ぶか。
「何が有ってもソフィを守り抜け!」
俺が命ずるとゴーレムはソフィを囲むように立つ。
「さぁ、ソフィ、これで大丈夫!」
「本当に?」
「ああ、このゴーレムは俺の命令には絶対服従だし、ダメージを負ったとしても自己修復機能が有るから!」
ソフィは一旦帰宅した。見せたくない物も有るから今の内に片付けないと。
俺はステラと村の中心に向かった。




