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策略を 勝手に予想し 悩み込む

 この世界に来て数ヶ月、初めてこの国の地図を見せてもらった。

 とは言えディックの手描きで、制度は不明だ。

 そもそもこの世界には衛星は間違っても無いし、伊能忠敬も居ない。ディックの手描きでなくても余り期待は出来ない。

 尤もそんな事に興味が無かったから文句も言えないのだが。

 そもそも国の名前すら知らなかったから、如何に自分の身の回り以外に興味が無かったかが判る。


「ディラーク王国?」


「今まで知らなかったのですか?」


 流石のリックも呆れ顔だ。そりゃそうだろう!

 多分逆の立場でもそうなると思う。

 オーストラリアというか、四国に形が似ている大陸の南東部に位置するディラーク王国の形は何となく三角形だ。

 勿論綺麗な三角形ではなくて、やや潰れたおにぎりが傾いた様な形とでも言えば良いだろうか。

 国の東側一辺しか海に面している土地がなくて、北側と南側はそれぞれ違う国と接している。

 エリクソン伯爵領は海側の下の角の辺りだとか。

 つまり、国の南東部の端に在る。

 ここより北側の海岸は断崖絶壁の所が多く、国全体でも港は幾つもないらしい。


「そんな重要な土地を何故エリクソン伯爵に?」


「それは分かりませんが、昔からエリクソン伯爵領でした」


 数少ない港を有する土地なら国の直轄地でもおかしくなさそうだが。

 エリクソン伯爵の先祖は王家の信頼厚い人だったのかな?


「まあいい。半月後にここで演習が有って海軍の主力艦隊が来る。国の西の端には黒幕らしい公爵の領地が在る。ここまでは判った。後半を聞いてみよう!」


 ここから録音内容の後半聞いてみる。

 何か有益な情報が有れば良いのだが。

 俺は再び、再生ボタンに指を掛けた。



「もう終わりの様ですね」


 それから小一時間ほど録音された会話を聞き、情報らしい情報をメモしたがこんな感じ。

 

 公爵軍はもう国外に出発。

 あの若造に罪を被せる。

 自分達も小さいながらも地方の領主になれるチャンス到来!

 空っぽの王都を襲うのが楽しみ!

 と言った感じだった。

 要点を繋げば奴等の作戦が伺えそうな気がする。


「この内容を聞いて、エイジならどう攻めますか?」


「もしも俺が公爵なら…」


 と前置きしてから自分の考えを述べる。


「そうだな。海軍は出航したら連絡は取れないか?」


「ええ」


 無線は無いからな。

 海軍を誘き寄せる為の演習を持ち掛けたのはもちろん伯爵で、ゲイリーの視察は海軍が断れなくする為だろう。

 一応は王族だからな。


「ならば海軍の出航する日に合わせて陸軍を掌握する。奴等の会話でも半月後が勝負だとか言っていた」


「しかし彼等に陸軍を掌握する事は難しいと思います。陸軍の将軍は彼等に屈する事は無いでしょうから」


 そういう情報は早くくれ!


「だったら外国の力を借りるかな」


「どういう事ですか?」


 伯爵領と公爵領の中間を指差してリック達に俺が考える作戦を伝える。


「公爵領は国の西の端で、隣国との国境が在る。つまり伯爵領も公爵領も南の国との国境に面している」


「ええ」


「公爵領と伯爵領の間で王家に親しい貴族は?」


「それでした、この辺りに」


 リックはちょうど伯爵領と公爵領の中間を指差した。

 現在の当主は国王のご学友だとか。罪を被せようとしている若造とはここの領主の事か?


「「公爵軍はもう国外に出発」って言っていただろ。公爵領から南の隣国に潜り込み、東に進軍する。この行軍は人目に付かない様にして、ある程度進んだ所で武力行使だ。相手国が本腰で軍隊を派遣する様になったら成功だ。国王のご学友の若造の領地からディラーク王国に戻る」


「そんな事をしたら!」


「戦争に持ち込むつもりかもな。そこに来て国境近くの海には演習目的とは言え海軍集結とくれば、隣国は事実上の宣戦布告と見なしても不思議じゃない」


 隣国としては陸と海から攻めて来たと思うだろう。


「隣国が反撃とばかりに国境を越えて若造の領地に攻め込んだら願ったり叶ったり!若造から知らせを受けた陸軍を国の南側に集結させて、その間に公爵軍は守るべき軍隊が居ない王都を制圧。ゲイリーを飾りの国王に据えて政権を奪取する」


「国王陛下はどうなるのでしょう?」


「先の侵攻の全責任を被されて最悪は処刑。良くても退位だろう。最初に攻め込んだのは国王の命令を受けた若造の貴族って事にするんだから」


「そしてゲイリー新国王は前国王の首持って隣国との講和に持ち込むと?」


「その通りだよ、リック」


 それっきりリックもディックも考え込んでしまったので言い出し難いが、これは飽くまでも俺ならばこうするって言うだけだ。

 別にそういう事の専門家でも何でもないのだから、公爵や伯爵の考えを読める訳ではない!

 そんなに真剣に考えられると何だか責任を感じる!


「国境付近から王都への連絡に掛かる日数と、陸軍が兵を集めて国境に駆け付ける日数を考えると既に国境では戦闘が始まっているかも知れません」


 リックの言葉に力が無い。

 ディックに至っては顔面蒼白だ。


「2人共、これは飽くまでも俺の考えだ!」


「ええ。でもエイジ、その若造の領地なのですが」


「その若造とは恐らくは、レイス子爵です」


 リックとディックが苦しそうに言葉を絞り出した。

 レイス子爵?

 って、まさか?


「若造とは兄の事で、戦場になるのは我が子爵家の領地です!」

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