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レコーダー 仕込んで仕掛けて 話させて

「こちらでお待ち下さい」


 代官所に着いた俺達は昨日と同じ応接室に通された。

 今の内にICレコーダーとプチゴーレムを仕込んでおくとする。

 これで奴等の会話を録音出来れば良いのだが。


「その魔道具で会話を聞けるのですね?」


 ディックが興味深そうにジロジロと見ている。

 このICレコーダーが魔力なんか無くても使えて、誰でも簡単に買えるなんは理解出来ないだろうな。

 こういう時、改めて自分が異世界の人間だと実感する。



「お待たせしました!」


 本当に何も知らないかの様に勢い良く現れたアルフレッドとは対照的に、その後ろの面々は戸惑いを隠せていない。

 殺しただけではなく、実行犯たる連中を口封じに始末した。にも拘わらず標的である俺達はピンピンとして、何事も無かったかの如く姿を現したのだから当然か。

 尤もそれは期待通りの反応ではあるのだが。


「昨晩はゆっくり出来ましたか?」


「それが突然の来客と事故が重なって、宿屋を変更せざるを得ませんでした」


 さも残念そうに言ってやる。さて、どう出るかな。

 後ろの連中は額に脂汗を滲ませている。


「それは災難でした。私に出来る事でしたら何なりとお申し付け下さい」


 太々しいのかバカなのか、アルフレッドは如何にも心配そうな表情を見せる。

 しかし、その後ろの苦虫を噛み潰した様な表情とのコントラストは見ていて滑稽でもあり、油断すると吹き出しそうでもある。

 

「あっ、そうだこれ、ありがとうございました。お陰で助かりましたよ」


 思い出した様に懐から代官の客である旨が書かれている証書を出して見せた。

 まあ実際にこれでローラ達を身請け出来たのだから嘘ではない。


「お役に立ちましたか?」


「ええ。金貨400枚が無料になりました!」


「400枚!」


 流石に驚いた様だな、アルフレッド。

 後ろの連中も声には出さないが全員揃って目を丸くし、小刻みに首を回してお互いの顔を見合わせる。


「そ、それは、どの様な事情でしょうか?」


 アルフレッドも動揺を隠せない。

 この証書を見せれば請求は代官所に回される。その金額は多くても金貨数枚だと思っていただろうが、蓋を開けてみたら400枚!

 その金貨400枚がチャラになるなんて普通なら有り得ない事は誰でも分かる。

 その有り得ない事が自分の出した紙1枚で行われた事に衝撃を受けた様だ。

 後ろの連中にも衝撃だった様だ。


「恐れながらアルフレッド様、本題に入られては如何でしょうか」

「本日は予定が立て込んでおります。その件につきましては我等が後ほど対応致します」


 なるほど、後ろの連中はこの話はもう終わりにしたい様だ。

 そうなると、この中で1番の権力者であるディックに眼で合図を送る。

 出番だ、王宮魔術師!


「忙しいのはこっちも同じだ。だが昨夜の一件は明らかに代官の職権乱用!」


 ビシッと決めたディックが更に続ける。


「代官、此奴らに言うべきは言わなければならない。私が何を言わんとしているか分かっているな?」


 ディックがビシッと決めた。これで後で泣きごとを言わなきゃ完璧なのだが。


「下がれ」


 重々しい声をアルフレッドが絞り出した。


「しかしアルフレッド様!」


「聞こえないのか!」


 あ、でもこの後のコイツらの会話が聞きたい。

 とは言えこのタイミングでプチゴーレムにICレコーダーを持ち運ばせたら多分目立つ!

 彼等には俺達抜きで、この部屋で話し合ってもらわなければ困る。

 どうするかと考えながら、使える物は無いかと周囲を見渡すものの室内には特に無い。

 となると自然と視線は窓の外に向く。


「アルフレッド様、先ずは皆様のお話をお聞きになってみては?」


 何とかここで話させなくては!


「見事なお庭ですね。本題である港建設のお話の前に、見せて頂いてよろしいでしょうか?」


 ここで割って入ったのはミラだ!

 タイミング良かったし、遠回しにこの応接室で自分たちだけで話せという意味で申し出て、ニコッと微笑むのも良かった。

 もう一押しだ。すかさずディックに眼で発言を促す。


「我等が庭を見ている間、此奴らに言いたい事が有るならここで言え!その後で、其方の執務室で話そうではないか。此奴らはこの部屋に残して。その方が良い。分かったな!」


「はっ!仰せのままに」


 頭を垂れたアルフレッドの表情は伺えないが、苦苦しい表情である事はその声から容易に推測出来る。

 こんなディックの人を食った様な態度でも従わざるを得ないのだから、国王の直轄部隊と言っても王宮魔術師の身分の高さには改めて感心する。

 ヨシ、これで上手くいきそうだ!


「それでは、後ほど」


 俺達はそそくさと応接室を後にした。

 さあ、思いっ切り腹の内をぶちまけてくれ!

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