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捕り物の 噂を信じちゃ いけないよ

「ローラと申します」

「アリです」

「リサです」

 

 身請けした3人を宿屋に連れて行き、皆に引き合わせてみたがそこで初めてあの2人の少女の名前を知った。

 ちょこんと挨拶する姿は可愛らしいものだな。

 一通りの挨拶が終わり、彼女達は別室へと移るとミラの態度が急変した。


「へぇ、それで女を買ってきたの」


 何かミラの眼が冷ややかだ。女を買うの意味が違うと思うのだが。


「エイジ様、ミラさんが3番、4番は私ですから、ローラさんは第5夫人となりますでしょうか?」


 夫人にするつもりは無かったのだが、飽くまでも4番に拘るんだな、エリス。


「扱いとしては、領都での妻となるのかの。そうすれば本妻に合わせる必要も無い」


 トニーが提案してくれたが、クレアに内緒って、それだと如何にも背徳行為をしている感じだ。これは不倫になるのか?


「エイジ、前にも言いましたがこの国では、経済力の有る男性は複数の妻を娶る事が法律で認められています。これは社会的常識なのでクレアも承知だと思いますよ」


 リック、ナイスフォローだ。そうだ!英雄は色を好むんだよな!それが認められていて不倫ではないんだな!


「エイジ、男と女の間は法律とかそういう理屈じゃないのよ!」


 相変わらず冷ややかな眼だが、ミラが1人で声を荒げている。


「何か、頭に来るのよ!」


「ミラ、その事は後で話ましょう」


「言っておくが皆、俺はローラを第5夫人にするために身請けしたんじゃないぞ。大事な証人だ。だから情報を共有したい」


 俺はローラが娼婦に身を落とした理由を説明した。

 が、問題はこの中に娼婦として身を売る値段に詳しい人間が居ない事だ。

 裏社会(アンダーグラウンド)に精通した人間も必要だな。

 知っていそうなハリーは今はここに居ない。

 

「よく分かりませんが、理不尽なのでしょう。その辺りも聞いてハリーに必要な情報を集めさせます」


「そうだな。俺は代官所に行くから、ローラへの事情聴取はその間に頼む」


「了解しました」


 俺は代官所に行って奴等に打ち噛ましてやらなきゃならない!

 行くメンバーは俺の他に偽リックのディック、建築家のトニー、それに俺の秘書という事でミラだ。

 エリスは留守番だ。アリとリサを見てもらおう。


「リック、ちょっと良いかな?」


「何でしょうか」


「あの3人の身請け金なんだが、金貨400枚なんて言われたんだ」


「そうですか。なら港の工事費用に上乗せしますか」


 それも悪くないな。


「金貨400枚の請求書、代官所に請求書を回させようとしたら無料になったんだ。これをどう読むか。代官所に請求出来ない事情、あるいは何か違う事情でも有るのかな?」


「アルフレッドに話してみて様子を見るしか無いですね。ローラが娼婦に身を落とした理由を話してその態度で見極めましょう。彼等しか居ない時の会話を聞きければ一番良いのですが」


 可能ならそうしたいが、身を隠して聞き耳立てるなんて現実的じゃないな。

 スマホを置いてくるのもリスキーだし。

 何か会話が聞ける道具は無いか考えてみた。

 

「有った!」


 鞄の中を漁ると、ピッタリのアイテムが出て来た。

 ICレコーダー!

 元の世界ではリフォーム会社勤務だった俺の必須アイテム!

 客や職人と、言った言わないのトラブル回避の為に持ち歩いていた。

 パワハラの証拠集めにも使っていたけど。これを持って労働基準監督署に行く事はもう無いな。


「それも魔道具ですか?」


「ああ、これを置いて後で回収すれば大丈夫だ!」


 そうだ、回収にはプチゴーレムを使おう。人気の無い夜にでも動かせば大丈夫だろう。

 仮にICレコーダーが見付かったとしても、これが何なのか分かる筈がない。


 俺達は宿屋を出ると、代官所には表通りを通って行く事にした。

 敢えて3階部分が吹き飛んだ金の鷲の前を通ると、まだ数人の野次馬は居る。

 これを見る為に表通りを通った。明るくなってから改めて見ると、我ながら器用に3階を吹っ飛ばしたもんだな。

 

「どうかしたのか?」


 さも初めて見たかの様に野次馬の1人に聞いてみた。


「この宿屋に泊まっていた盗賊を領主様の軍勢が撃ち破ったらしいぜ!」


「だが最期は軍勢に加勢した冒険者数人を道連れに自爆したらしい」


 皆さん、いい気になって教えてくれる。

 でも道連れだなんて、そこまでは言ってないぞ!

 噂話に尾びれ背びれが付いたのか?


「いや、冒険者が死んだのは斬り合いだそうだ」


 穏やかではない方向に噂話が発展しているな。

 噂話に乗せられ過ぎだ。

 昨夜の捕り物は平和的に行われ、死者なんか1人も出ていないのに!


 そう思っていた俺の目に飛び込んできたのは、見るも無惨な姿となったあの荒くれ者達だった。

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