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盗賊は 予期せぬ時に やって来る

 結局、寝る所が無くなった俺は遅くまで残り物でチビリチビリやっていた。

 手持ち無沙汰なので、魔導書を詠みながら。


 土の書をまだ全部は読んでいないが、先に水の書を読んでみる事にした。

 盗賊を撃退したとしても、火でも放たれたら目も当てられない事態となる。その際には消火の為に水魔法を使えた方が良いに決まっている。

 まぁ化学物質とかは無いだろうから、水による冷却消火で対応可能だろう。

 油が燃えた場合には土魔法で窒息消火、つまり土で覆って酸素の供給を絶つ消火方法で大丈夫だろう。

 空気中の酸素は約20パーセントだが、これが14パーセントになると火は燃えていられない。これが窒息消火。

  ちなみに人間は、18パーセントで酸欠となる。だから、火事になって初期消火で消せなかったら避難しないと危険だ。




「エイジ、起きて」

「おぁ、ステラ?」

「エイジったら結局はここで寝たの?」

「ああ、気が付いたら寝てたよ」

 思いっ切り寝落ちしていた。

「ソフィのベッドで寝ればよかったのに」

 ステラの態度が余所余所しい。無理も無いか。


「ステラ、昨夜の事なんだけど」

「ゆ、昨夜!」

 ステラは全身硬直し、表情も引き攣っている。


「ごめんなさい。昨夜の事は憶えてないの。お酒を飲み過ぎたせいね」

 ステラは俺から顔を背けて力無く言った。

「仮に何か有ったとしても酔っ払いの戯言、気にしないで」

 自分に言い聞かせる様にサバサバと続けた。

「でもステラ、俺は」

「忘れて!」

 あわよくばと未練がましい俺に、ステラが断を下した形だ。その語気には覚悟が感じられた。

 何も言えなくなった。


「おはようございます」

 ちょうどリックが起きてきた。

 二日酔いの顔は流石に、爽やかではない。

「エイジが僕を運んでくれたのですか。ありがとうございます」

「いや、いいんだ!ベッドでゆっくり寝られたか?」

「はい!ありがとうございます!」

 小屋でも思ったが、リックの爆睡振りには感心する。もっとも、その前の夜は木箱に腰掛けて寝ていたから、昨夜はその分の疲れもあっただろう。無理もないのかもしれない。


「おはようございます」

 ソフィが起きてきたのは、暫く後であった。

 何となくばつが悪い顔をしている。

「私、昨夜の記憶が無いのだけれど」

「困った娘ね、旦那様をほったらかして寝ちゃうなんて!」

 ステラは冗談半分で笑いながら咎めた。

「えっ、そうなの?」

「今夜こそ、ちゃんとお相手をなさい!」

「お母さんたら」

 しかし、今は赤くならない。二日酔いで其れ処ではない様だ。


 二日酔いの為、軽い朝食を採るとソフィは出かける。

 収穫を手伝うそうだが、それを聞いたリックも着いていく事にした。見聞を広める旅なので、収穫を体験したいそうだ。


 俺も行こうかと思ったが、

「エイジは今後について話しておきたいから、残って」

 というステラの要望で残る事になった。


「今は村長として話します。盗賊の対処方法ですけど」

 ステラは俺を頼りにしているけど、俺はその専門家じゃない。


「盗賊の数は?」

「恐らくだけど、2、30人」

 此方は女子供と老人、それにカールとその仲間、俺とリックが残るとしても厳しいだろうな。


「こういう時は用心棒を雇うって決まってるでしょ!」

「用心棒?」

「そう!7人!」

「どうして7人なの?」

「巨匠の映画であったでしょ!ハリウッドで西部劇としてリメイクもされた」

「ごめんなさいエイジ、何を言っているのか分からないわ」

 そうでした。異世界だもんね。


「とにかく、戦闘に長けた用心棒を雇おう!」

「無理よ!そんなお金無いわ!」

「じゃ、どうしたものか」

「あなたがいるじゃない!どうにかならない?」


「乱戦になると何処から不意打ちを食らうか分からない。例えば弓矢とかね。盗賊はそういうの得意そうだし」

 不意打ちに対応可能な魔法って無いのかな?

 俺はスマホを取り出した。ステラはそんな俺に不思議顔だ。


 その時、家に村人が飛び込んで来た。

 初老男性が礼儀も何も無く入って来たが、彼の必死な形相がただ事ではない事を連想させる。

 息が切れて話せない中で、必死に一言絞り出した。


「盗賊が来た」


 俺とステラは顔を見合わせた。

「どういう事なの?」

「此方の防御が整う前にって事だろう。奴らは長居して収穫した物を全て持って行くつもりだ!好き勝手しやがって!」


 俺とステラは直ちに村人たちの元へ向かった。

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