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討伐隊 実戦だったら 全滅だ 

 ハリーを含めた15名の勇敢な者達が極悪非道な盗賊の首領と幹部を退治すべく、情報提供をした協力的な宿屋に入り込む所を俺は物陰から見守った。


 とは言え、昨夜の荒くれ者が参加していると言う事を考えれば、義憤に駆られたとかではなくてどうせ報奨金をチラつかせられたに違いない。

 改めて言い換えると、ハリーを除いた高額報奨金目当ての14名が偽情報に踊らされ、客を売った宿屋に間抜け面で入ったのを笑いを堪えて見ていた。


 しかし、この連中って本当にやる気有るのか?

 持っている武器が槍とか鎖鎌ってどう考えても室内での戦闘には不向きだろうが!

 


「諸君の健闘を祈る!」


 とだけ言い残して依頼人である2人は金の鷲から離れて行った。

 討ち漏らした時の身の安全の為なんだろうな。


 あの2人が物陰に隠れたらチャンス到来だ。

 ジッと息を殺して金の鷲を見詰めている2人の後ろ側の男に照準を定める。

 相手が集中している時って後ろから仕掛け易くて助かる。

 昔、神田駅の近くで猫が鳩を襲っている現場に出くわしたが、やはり後ろから足音発てずに近付いて襲っていた。

 今回はその猫のイメージで陰魔法で1人を闇に包んだ。端から見れば物陰に黒い物体が転がっている様にしか見えない。回収は後でやろう。



 そうしている間に討伐隊が入ってから3分くらい経った頃、3階の部屋に変化が有った。

 灯りが揺れている!

 これは彼等が持って行った灯りだろう。

 と言う事は、ドアは破られたか?いや、宿屋が合鍵を渡したな。

 俺はゴーレムを起動させ、盗賊が抵抗しているかの様に暴れさせた。

 この暗闇では人だかゴーレムだか区別は付かないだろう。

 ゴーレムが見聞きした事が情報として俺に伝わる訳ではないので、自動で戦わせる。

 そういう機能が出来ないか、今度試してみるか。


 戦闘が始まって2分くらい経過しただろうか。

 一旦ゴーレムの動きを止めさせた。後はハリーがやってくれると予想して。

 ハリーが倒れた連中の身体を2階に運ぶのに、ゴーレムが動いていたら邪魔でしかない。


 暫くして灯りが激しく揺れた。ハリーの合図だ!


 中の魔道士が激しく抵抗しようとして爆発させた様に見せなければならない。

 そうなると、外から吹き飛ばしたんじゃダメだな。中で爆発させないと。

 更に意識の無い14人が2階に居るので、2階には影響が無い様にしなければならない。


 思えば盗賊の村を爆発させる時には苦労したな。

 爆発って、中々加減が難しいし。

 建物が丈夫だと大して吹き飛ばないし、脳天気に爆発を大きくすると二次被害が出る。

 だが、あれから俺だって練習したんだ!

 今なら出来る筈だ!

 

 今回は瞬間的に爆発するガス爆発のイメージだ!

 あれなら屋根も吹っ飛んでいい感じに爆発しそうだし、上手くいけば爆弾をイメージした時よりも延焼を防げるかも知れない。

 罪の無い人に迷惑掛ける訳にはいかないからな。

 火事に気を付けつつ、ガス爆発をイメージした。


 ダォーン!


 ダとドの中間くらいの、予想よりも高い音であったが爆音が轟く。その瞬間には爆炎が3階の壁を突き破り、狙い通り 屋根を吹き飛ばした!

 成功だ!

 爆発には満足したが、この後が大変だ。

 吹き飛ばした屋根の破片が火が付いたまま飛び散ると延焼が心配だったが、どうやら杞憂だった様だ。

 屋根の破片は着火するよりも早く飛び散った様だ。



「何だ?」

「何が起こった?」


 近くの建物からは続々と人が出て来るが、電気も無いこの世界の夜は暗い。

 特に吹き飛んだ3階部分なんて高過ぎて蝋燭の灯りでは照らせないから、出て来た所で何が起こったのかは理解出来ない。


「金の鷲の3階に泊まっていた盗賊の首領をアルフレッド様の討伐隊が討ち果たしたそうだ」


「そうなのか!」


 適当な野次馬を掴まえて、討伐隊の活躍を誇張して吹き込んでみた。

 実際にはハリー相手に全滅なんだけど。


「最後の爆発なんて、追い込まれた盗賊が討伐隊を道連れに自爆したそうだ」


「それじゃあ討伐隊も?」


「いや、討伐隊は土壇場で脱出したそうだ。流石はアルフレッド様が見込まれた討伐隊だな!」

 

 いつの間にか他の野次馬もこの話を聞いている。これで街中に噂が広まれば、どう出るのか見物だな。


 金の鷲からは他の宿泊客や従業員、そして討伐に入った者達が次々と出て来ては、一様に驚きの声を上げる。


「あ、あぁ…」


 吹き飛んだ3階部分を見て言葉にならない声を漏らしている男は、金の鷲の主人か。

 3階を多少荒らされると思っていただろうが、まさか吹き飛ばされるとは思ってなかっただろう。

 気持ちは分からなくも無いが、そちらにも責任は有る。行政に協力したのだから修繕費と営業補償は行政に払ってもらってくれ。

 この世界にそんな制度が有るのかは分からんが。

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