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旅立ちの 前に挨拶 回りする

 昨夜は別れを惜しむ様にクレアと盛り上がってしまったので、朝が辛い。

 嗚呼、今思い出してもカーテンを開け月明かりに照らされたクレアは美しかった。

 さぁ領主一家を血祭りに上げて、さっさと帰ってこよう!


 今日まずやる事としては、俺に代わってこの街を守ってくれる王宮魔術師の皆さんと面合わせ。

 荒っぽいと聞いていたが、全然そんな感じはなかった。むしろ品が有ったぞ。

 リックによると、魔法を使うと豹変するらしいけど、どうなんだか。


 彼らの前で指を鳴らして、陰で包んでいた刺客とワイバーンの陰を取ってやる。

 自我が崩壊している様だが、刺客に掛ける情けなど有る訳も無い!

 それに王宮魔術師の皆さんも感嘆していた。指を鳴らす、つまり指パッチンが受けたらしい!

 彼らとは話が合いそうだ!


「イマジネーションを豊かに、魔法に真摯に向き合いなさい」


 もっともらしい事を言って、魔法を何発か使って講演会は終了した。

 皆さん最初は目を丸くしていたけど、驚嘆からのスタンディングオベーション!

 王宮魔術師の皆さん、いい人でよかった!

 

 それが終われば今度は領都に行く準備だ。


「エイジ、今日この街を発って本当に良いのでしょうか?」


「そうよ!もう一晩だけでもクレアお姉ちゃんと過ごせば良いのに!」


「ワシは何時でも構わん」


「エイジ様のお心のままに!」


 一緒に領都に行くリック、ミラ、トニー、エリスとまずミーティングだ。

 この4人には、今日の予定が終わり次第に出発する旨を伝えてあったが、反応もまちまちだ。


 領都までは馬車で丸1日掛かる。

 アルコール摂取により朝に出られる自信が無いのと、1日が移動で潰れるのが惜しい。

 なら、今日の午後にでも出て途中の町に泊まり!明日の昼に到着する方が良いと判断した。


 なるべく早く行きたいが、領都に行くにしてもやるべき事はやっておかなければならない。

 ショッピングモールのオープンは見届けられないが、野菜工場は今日から稼働だ。


「頼んだぞロン、任せられるのはお前しかいない!」


「先生、絶対にご期待に応えてみせます!」

 

 工場長になるロンを激励!

 ロンの返答も力強い。

 今回、農家の出身でこの街に働きに出て来ている者を数名雇い入れた。

 ロンは農作業の素人なので、生産管理や人員の管理をしてもらう。工場長だから。

 天候不順で露地栽培の野菜が不足時は、人々を救うのはこの野菜工場だと俺は信じている。

 それでなくても、出来た野菜はショッピングモールで安く販売すれば良いし、クロエの店だって材料の野菜を安く仕入れ出来て良い事だらけだ。


 次はショッピングモールの建設現場に向かう。

 現場は内装作業を進めていた。


「エイジさん、残った工事は全て進めておきます。無事故で!」


「リーチさん、この街でも次々と建築計画が有りますし、領都にも早い内に来てもらいますよ。まだまだ引退はさせませんよ!」


 ベンの頼みでリーチさんと組まなければ、俺の建築業は堀と土塁を作って終わっていたかも知れない。

 リーチさん、老け込むにはまだ早い!

 残った工事と、ベンがこれから発注する工事はリーチさんがいれば滞りなく進むだろう。

 更に高性能になったゴーレムも置いていくし。


 次に向かうは市庁舎。


「ベン、領都に発つ前に言っておきたい事が有るんだが」


「何でしょうか?」


 副市長として忙しいだろうに、ベンは仕事の手を止めて俺の話を聞いてくれる。

 伯爵家に仕える役人ではあるが、信頼している。

 俺はベンには事の成り行きを話した。


「私は、エイジ殿が伯爵家を討つことを支持します!」


「いいのか?」


 立場的にそれは許されるのか?


「覚えていますか?出会った時の事を」


 この街に来て間もない頃にオウルドラゴン討伐するに当たって、市側の立会人として来たのがベンだったな。


「エイジ殿が討伐する前に自警団が討伐しようとして失敗しています。自警団に所属していた私の弟も殺されました」


 そうだった。ベンが弟の仇を討とうとしてやらかしたんだった。


「本来ならこの規模の街には衛兵が置かれます。ですが伯爵家は衛兵を置くのは金が掛かると、衛兵を置かずに民間の寄付で主に成り立つ自警団に留めました。衛兵並みの装備が有れば弟は死なずに済んだかも知れないと思うと、伯爵家は討たれて然るべきだと思います」


「ベン…」


「とは言え雇い主ですからね。職を辞そうとも思いましたが、エイジ殿に付き合う事が楽しくて」


「俺も楽しかったぞ!帰って来たらまた何かやろう!」


「楽しみにしています!」


 後は言葉なんか要らない。ガッチリと握手を交わすだけだった。



 クレアとクロエにはもう言ってある。

 別に今生の別れにするつもりはない。

 ちょっと出張に行ってくる様な感じだ。


 だから最後に立ち寄ったりはしない。

 だから2人が何を話しているのかも知らない。

 


「ねぇクレア、店に来るのは良いけど、あんた何をさっきから食べているの?」


「これ美味しいわ!」


「えっ?この果物はまだ熟してないから酸っぱいわよ!こんな物をそのまま食べるなんて何を考えているの?熟すまで待ちなさいよ!」


「そう?美味しいわよ姉さん。実は体調が悪くて、これしか食べたくない感じよ」


「クレア、あんた…まさか…」

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