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領都には 妻を置いて 街を発つ

「エイジ、領都にはいつ発たれますか?」

 

「早い方が良いな。出来れば先方の意表を付けるくらいに」


 刺客は任務を遂行に失敗した事は先方もご存知の筈だ。

 そこで俺達が涼しい表情で登場してやれば、どう出るかな?

 興味は湧くな。


「行くメンバーはお決まりで?」


「主要メンバーで行くつもりだったけど、敵の懐に飛び込む訳だからな。メンバーを絞ろうと思うんだ。自分の身を自分で守れる人間限定にしないと」


 そうなるとメンバーがかなり絞れてしまう。


「エイジと僕の他にはミラくらいでしょうか?」


「ミラを連れて行くと、この町の防御が不安だな」


 有事の際にはミラの能力(ちから)は必要不可欠。

 でも、もし強敵と戦うとしたら治癒魔法を使える人間は多い方が良いな。

 そんな強敵が居るのか分からんが。

 そんな事を考えている俺を見るリックの目が笑っている。

 何か良策が有りそうだ。

 

「ご心配には及びません。このアベニールの防衛は王宮魔術師団にお任せ下さい。既に数人の王宮魔術師が今日にも到着する予定です」


「王宮魔術師が?」


「はい。彼等に任せておけば大丈夫でしょう!」


「でもそれなら、その王宮魔術師団を領都に連れて行けばミラを連れて行かなくても」


 多分、伯爵家絡みで来るのだろう。なら、一緒に領都に乗り込んだ方が良さそうだが。


「彼等は血の気が多く、領都に行っても証拠を固める前に暴れかねません」


 王宮魔術師ってエリート集団だと思うのだが、中にはそんな暴走する連中も居るんだな。


「そんな血の気の多い連中がよく街の警護なんて地味な仕事を引き受けたな!」


 はっきり言って退屈この上ないぞ!


「そこはエイジに協力して頂きたいと思いまして」


「俺?」


「偉大なる伝説の大魔道士シーナの魔導書から、魔法を幾つか披露して頂ければ」


 流石は魔法のエリート集団、それだけで警護を引き受けてくれるのか。


「それは構わないが、あの魔導書は椎名さんが独り言を同郷人に聞いて欲しかった意味合いが大きくてな、読めてもあまり意味が無いかも知れないぞ」


「魔法の上達にはならないと?」


「精霊とかとの契約で魔法を発動させている魔術師には関係無いかな」


 期待していたら申し訳ないが、本当にそうだから仕方ない。


「分かりました。その旨は僕が説明します。でも彼等に1度だけでも見せてやって下さい」


「分かった。それは約束する。明日は光魔法を使った野菜工場の稼働開始だ。それが終わったら講習会を開こう!」


「ありがとうございます。きっと彼等も喜びます!」


 それよりも問題はメンバー発表だな。行くつもりの人の殆どがアベニール残留になるから、少し揉めるかも知れない。



 そして、それは現実となる。


「私達が領都に行けないって、どういう事?」


 主なメンバーを集めた会合で、いきなりクロエに食ってかかられる。

 その後ろに居るクレアは無言だ。どう言って良いのか判断付かないのだろう。


「昨日のワイバーンで襲って来た連中がいたろ。彼奴らは俺の領都進出を知って、領都の業者が雇ったそうだ。領都は必ずしも安全ではない」


「安全が担保されない以上は人数は限定的にするべきです。そして基準は、自分の身を守れる人間」


 俺に続いてリックが説明に加わる。

 そりゃ俺だってクレアは連れて行きたいが、領都の状況も分からないのだから、闇雲に連れて行く訳にも行かない。


「危ないからクレアを連れて行けないって言うのも分かるけど、それじゃ何でトニーさんとエリスさんは連れて行くのよ?」


「港建設が目的なんだから、建築家を連れて行かざるを得ない。それにエリスは風属性魔法を使える。いざという時にトニーと自分を守る事も可能だ」


 港建設は建前ではあるけど。


「エリスさんを第2夫人にしようなんて思ってないでしょうね?」


「クロエさん、私がなるべきはエイジ様の第4夫人です!変な言い掛かりは付けないで下さい!」


 何故そこまで4番に拘る? 

 まぁエリスは外見は耳の短いエルフの様だが、中身は基本的に脳天気だ。

 ほっといても問題無い。


 それよりもクレアの浮かない表情が気になる。

 クレアは連れて行かないという、俺の判断は間違っていたのだろうか。

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