なるほどな 港建設 その為か
魔の者、つまり魔族だと思われる者を撃ち破った椎名さんの偉業は理解したが、俺は断固拒否したい。
そんな厄介そうな奴と戦えるか!
椎名さんは確か20代だった筈。魔族と戦う役目は若者限定でお願いしたい!
アリア関係で疑問が残った。リックが知っていれば良いけど。
「リック、あと1つ聞きたい。アリアが閉じ込められていた鏡はどうなった?王宮にとっては無用の長物になっただろ?」
「鏡は贅沢品ですので何れかの貴族に下賜されたようですが、残念ながら行き先は不明です」
「なぁ、ミラが出てきた鏡がその鏡って事はないかな?」
「どういう事ですか?」
リックは意外そうな表情で首を傾げる。この金髪碧眼でこれをされれば若い女の子は堪らんだろうな。
クレアは大丈夫だと思いたい!
「鏡から出てきたアリアは魔力が無かったんだろ?ミラはもしかしてアリアが鏡の中で魔力を切り離した分身みたいな存在で、その分身が更に魔力を放出したら若返ってひょっこりと出てこれたんじゃないかな?」
俺は自分の仮設を発表してみた。ハッキリしない事には選択肢が多い方が良いだろう。
「それでエイジの魔力を受けて子供の身体から大人に戻ったと?」
「ああ、どうだろ?」
なんかフリーズドライの物をお湯で戻すみたいだけども、どうだろうか?
「そうなるとミラの今の身体は魔力で構成されている事になりますが、実際には普通に生身の身体です。それにあの鏡は当時の鏡としては異様な大きさです。以上の点からエイジの説は成り立たないと思われます」
あっさりと否定されたが、それはそれで良い。
確定出来ない事については、思った事を言う事が大事だ。明後日な事を言っていても、何かのヒントになるかも知れない
でも今度こそミラについての話題は終わりだ。
「あとはエリクソン伯爵家についてですがエイジ、領都に招待された事はむしろ好都合と言えますね」
「やはり本拠地に乗り込んで片を付ける訳か?」
俺もリックも刺客を送られている。
昨日だってそうだ。
いい加減に討伐しなければ。
「ええ、恐らくは証拠がそこら中に散らばっていると思いますよ」
「証拠?どんな?」
「証拠と言うか証人ですね。各地から拉致された被害者です。男は老いも若きも肉体労働者として。女は若ければ娼婦、娼婦として客が取れない容姿や年齢の者は労働力とされている筈です」
「それって…」
俺はそこで言葉を詰まらせた。彼等の末路を考えると言葉が出てこなかった。
「奴隷です。しかもどうも奴隷を外国に売っているようです。普通の貴族が持たない様な大型船を保有している事が分かりました」
やはりか。やってくれるぜ、アルフレッド。
これはいよいよ急いで領都に向かわなければ。こうしている間にも奴隷運搬船が出港しているかも知れない。
ん?船が出港?
「リック、アルフレッドは俺に港建設を依頼してきたぞ。その港で交易を盛んにして繁栄をもたらすとか言っていたが」
あれも方便だったのか。
端から見れば身を乗り出して聞いていた様に見えたと思うが、内心は斜に構えて聞いていた。
だから裏切られたと言う思いは無いが、ただ残念ではある。
アルフレッドが当初の推測通りの人物だったから。
「そうか!エイジ、新たに港をどうするかは聞きませんでしたか?」
さっきまで、奴隷の話題までは渋いテンションだったのに、声のトーンが上がった。リックが何か思い付いた様だ。
「確か、軍港にするみたいな事を………。あっ!」
そうか、そういう事だったのか!
「リック、繋がったぞ!」
「ええ、アルフレッドが福祉に積極的な本当の理由もそこにある様です!」
アルフレッドよ、今にその偽善者の仮面を剥いでやる!




