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ほっとした ミラとは別人 聖女様

「エイジ、二日酔いはクレアお姉ちゃんに何とかしてもらってよ!」

 結婚前と同様に二日酔いはミラの治癒魔法の世話にならせてもらう。

 この状況の俺では出来ないし、ミラが1番効果的なので仕方ない。

 第一クレアに何を頼めと?

 何か口にする物でも頼んでみろ、そのまま帰らぬ人になってしまうぞ!


「もう、エイジだけじゃなくてリックまで!」

 リックも酔い潰れてしまった!

 お陰でこうして2人揃ってミラに癒されている訳だが、今日はそのリックから聖女アリアのその後について話を聞ける筈だ。

 昨日の口振りからするとミラはアリアではない様だが、それだとミラは何者なんだ?


「2人とも、いい加減にしてよ!」

 一瞬だけ厳しい表情を見せるが、すぐに冗談っぽく笑みを浮かべる。

 それは何時でもどうぞと言う意味になるぞ、ミラ。

 普通に可愛い!


 こうしているともはやミラが何者でも構わないとも思ってくる

 この国で聖女を名乗る事が禁止されていてもミラはミラだし、俺達にとって大事な存在である事には変わりない。


 ミラの活躍で俺達の二日酔いが治れば後は普段通りの日常となる。

 クレアは今日も読み書きを教え、クロエは厨房で下拵え、ミラは経理をしている。

 リックとじっくりと話してみるか!

 俺はクロエに『季節風』の個室を借りた。


「エイジ、今日はエイジが使うべき大魔法を試しましょう!」

 リックが調べた椎名さんの魔法か。気になるは気になるが、やってみてもリックだって正解を見た訳じゃない。

 イメージを伝えてもらえれば結構やれそうな気がしてならない。


「リック、それも大事だが昨夜の話の続きを聞きたい。それに、ここの領主であるエリクソン伯爵家についても。リックの所にも刺客は来たのだろ?」


「ハリーから聞きましたか?」


 不意にリックは怪訝な表情を浮かべる。

 自身の光属性魔法で退けたそうだが、王都で伯爵家について調べていたリックも襲われたと聞いている。

 俺達の当面の敵についても情報は共有させておきたい。


「ああ、昨日のワイバーンに乗っていた奴も刺客だ。ああして街を空爆をするなんて、もう悠長な事は言ってられない!」


 奴等が次の一手を打つ前に此方も動かないと。いつも防げるとは限らない。


「分かりました。大魔法は追々試しましょう。実際に使う機会はまだ先でしょうから」


「先?」

 この先にその大魔法を使うアテがあるのか?


「いえ、お気になさらず。言葉の綾です」


 何かありそうだが、まぁいいか!

 リックは俺が答えに窮する事は深く聞かない。だから俺もそうする。


「それで昨夜の続きですが、聖女アリアが封じ込められた鏡が王宮に届いた所までは聞いたが」


「はい。その後1年間毎日、王が鏡の前で祈りを捧げ続けました。すると鏡から聖女アリアが出てきたそうです」


「そうか!抜け出ていたのか!それじゃミラはアリアではないんだな!」


 ミラが聖女アリアだと恐れ多いと言うか、やっぱり違和感はある。

 何か歴史上の人物に気安く触れるみたいで。


「ええ。この話が本当ならアリアは鏡から出ていますから、ミラとは別人となります」


「それで何で聖女が虐げられるんだ?」

 

「問題はその後なんです。掻い摘まんで言いますと、アリアは王と結ばれますが王には既に妃がいました」


「それじゃアリアは側室か?」


「ええ。鏡を抜け出したアリアには聖女の能力(ちから)が無くなっていたと記録されています。こうなると身寄りが無いですから、王の申し出を受けるしかなかったのではないでしょうか」


 言い終わったリックはお茶を1口飲み喉を潤す。

 日本の夏程ではないが、まだ暑いので魔法でアイスティーにすれば良いのに熱いお茶の香りを楽しんでいる。

 これは貴族の嗜みなのかな?


「ですがエイジ、王はアリアを愛していた様です」


 一息ついたリックが再び語り始めた。


「アリアは3人の子供を産みました。彼女は幸せだったと思いますよ、王が生きていた頃は」


「と言う事は…」


「はい。王の逝去が彼女の悲劇の始まりであり、この国から聖女伝説が消える発端でした」


 そこには、先程までお茶を飲んでリラックスしていた子爵家の3男の姿は無かった。

 リックは何時になく神妙な表情を見せる。


「次の王位を巡る争いか?」

 それに負けたとしか考えられない。


「アリアの3人の子供の中、息子2人は謀殺されました。残った娘も討ち取られました」


「そんな、娘まで討ち取られたのか?」

 日本の戦国時代だって娘は生き延びたぞ。


「その娘を討ち取り子爵位を賜った家が、我がレイス家なんです!」

 思い詰めた表情のリックが一気に言い放った。

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