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この国は 聖女がタブー視 されていた

「先ずはご結婚おめでとうございます!」

「ありがとう!」


『季節風』の奥のテーブルで俺はリックとの再会の杯を交わす。

 店で1番高い酒だ!

 思えば、リックと2人だけで酒を飲むって初めてじゃないかな?

 この酒とクロエ自慢の新作メニューに舌鼓を打ちながらだと話も弾むものだ。

 クロエの事を改めて、流石は料理人だと改めて感心する。

 クロエも俺に教えられるだけじゃなくて、それを自分なりにアレンジして更に美味くなっている。

 最初に教えた天ぷらなんてかなりアレンジされていて、これはこれで美味い!

 考えてみれば元の世界の天ぷらだって日本には戦国時代にポルトガルから伝わって、日本料理としてアレンジされて発展した料理だ。

 それが中世西洋風なこの世界に伝わってまたアレンジが加わるって変な話だな。

 気が付くと美味い酒と料理ですっかり饒舌になっていた。


「俺の方は話した通りだ。リックの方はどうだったんだ?」

 クレアとの結婚の事、魔法の事、事業をやっている事を告げた。

 だがそれらの事は従者のハリーから報告があったのだろう、驚きもせずに幾つかの質問をしながらリックは聞いていた。

 

「何故エイジは事業をしているのですか?」


 リックからもっともな質問がきた。


「出身地の知識を活用すれば、皆の生活に役立つかと思って。育った環境が違う人間の方が色々気が付くと思うんだ!」


「なるほど!この国の常識とエイジの常識は違って当たり前と言う事ですね!」


 本音言うと、知識をひけらかしたい気持ちも有ったのは事実だ。

 侮られてばかりの人生だったからな。


 

「エイジに相応しい魔法については明日にでもじっくりと話しましょう。偉大なる伝説の大魔道士シーナだけしか出来ない魔法を調べてきました。きっとエイジなら再現出来る筈です!」


 それは楽しみだが、実際にやりながらでなければイメージ掴めない。

 椎名さんの魔導書にはそんな魔法の事は書いて無かったと思うが。


「それともう一つの目的はミラの正体についてだったな。そっちはどうだ?」


「ミラはエイジを癒したり呪いから解放したりして、今日は結界を張りました。聖女の様だと言えると思いますが…」


 何か歯切れが悪いな。


「どうかしたのか?」


「実は、この国では聖女を名乗る事は禁止されています」


 この上無い違和感を感じる。

 何故に聖女禁止なんだ?


「なぁリック、この国は聖女に恨みでも有るのか?」


 ここでロンから聞いた救国の聖女アリアの話をリックにしてみた。リックは本当に知らないのかも確かめたかった。


「なるほど、さすがはエイジ!聖女アリアの話を知っているのでしたら話は早い」


 リックは知っていた。知っていてミラがアリアであるとは考えなかったのか。


「どういう事だ?」


「王宮の古い記録によれば、聖女アリアが封印された鏡は王宮に納められました」


「そこは知っている。問題は救国の聖女が何故その存在を消されたのかだ」


「その話には続きがあります」


「続き?」


「ええ。実際にはどこまで本当なのかは不明ですが、王家に都合良い続きが有ります」


「王家に都合良いって、王宮魔術師のリックがそんな事を言っていいのか?」


「ご心配には及びません。事実ですから」


 そう言ってグラスを傾けるリックの顔には何故が哀愁が漂っている。

 イケメンがその表情を浮かべるのは反則だろ!

 

 端から見れば俺達はどう見えるのだろう?

 哀愁漂う若きイケメンと、すっかり酔っぱらって上機嫌な42歳。

 まぁいいか。リックから続きを聞こう。


「リック、続きって?」


「それはアルコールが入っていない時にお話します」


 はぐらかされた?

 でも確かに大事な話は素面の時でないとな。

 ヨシ!今日はこのまま飲もう!

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