肩書きは このまま変わらず 魔道士で
魔法剣は俺が勝手に射爆場と呼んでいる町の外の荒れ地に出て試し撃ちする事にした。
木も草も生えていない荒れ地なので、火事の心配も大丈夫!
今迄もここで魔法の練習をしていたが、この荒れ地なら人気が無いから安心して魔法を放てる。
「僅かな魔力で発動する筈じゃ」
「了解!」
自然と言葉にも力が入る。俺は岩に向かって剣を構え、火をイメージした。
端から見れば新しい玩具を与えられた子供の様かも知れないが、楽しみなのだから仕方ない。
「うぉ!」
柄から炎が勢い良く湧き上がり、刃渡り1メートル以上の炎の太刀となった!
「その剣から炎が幾らでも出るぞ!」
「おう!」
刀身からピンポン球位のファイヤーボールが出るイメージをしてみる。
この魔法剣は魔法を増幅させる様なので、いきなり大きい物は危険と判断してピンポン球位にした訳だ。
……ピンポン球の筈だった。
「なっ、何だこれ!」
出た時はピンポン球だった。それがテニスボールになり、最後はサッカーボール位の大きさで岩に当たった。
その威力は文字通り、火の玉シュートだ!
「お前さん、仕方なく大きさを抑えていたのじゃろう?」
「物の道理には人の気持ちなど関係無いからの」
エセドワーフ、解説ありがとう。
なるほど!小さくしなければならないという命令の他に、実は大きくしたいという俺の本音を酌み取った訳か!
「逸品だ!」
「じゃろう!」
思わず声に出たが、彼等も謙遜しないな。
「一つ確認しておきたい。これから色々と試すけど、魔法剣に使っている魔石は消耗品か?」
もし消耗品なら能天気に撃ちまくる訳にもいかない。考えて使わないと。
「長い目で見ればそうじゃが、そう簡単には減らんからの。安心せい」
「その頃にはもっと強い魔物の魔石を用意すればよいじゃろ!」
それもそうか!そうしたらもっと強い魔法剣が出来る訳ね。
その後2時間程掛けて一通り試した。
魔道士に魔法剣は、鬼に金棒って言葉が可愛く感じる程だ!
1番効果的なのはやはり火属性だった。
慣れれば連射も可能だし、散弾銃としても使える。
他は風属性は強くなったが、土と水属性はあまり効果的とは言えない。
例えば水属性。切れ味鋭い刀を、氷の刃と揶揄するが、実際には氷では強度が足りない。
水を使った攻撃って今までの放水やウォータージェットしか思い付かないのだ。
これは俺のイメージが乏しいからなのかも知れない。攻撃と言えば主に火のイメージが強いからなぁ。
他は追々頑張ろう!
思いの外素晴らしい物を貰った!
「これからは、魔剣士と名乗ってみるか」
自分達の作った剣が絶賛されてエセドワーフも気分良さそうだ。
でも端から見ると刃渡り30センチ位の剣って普段持ち歩く時には不格好だな。そんな剣士は見た事が無い。柄だけ立派で刀身が短いって、玩具の剣みたいだ。
それでも魔剣士って格好いいから名乗ってみたいが、良いのだろうか?
そもそも俺が剣で剣士に勝てる筈がない。魔法を増幅させる剣ではあるが剣として使う事は難しいだろう。
となるとこのアイテム、剣である意味が無くなるが魔剣士って響きは捨てがたい!
でも良く考えてみれば剣なんてからきしの俺が紛いなりにも剣士を名乗る事に抵抗が有るし、看板倒れも甚だしい。
やっぱり肩書きは魔道士にしておこう!
ちなみに、魔道士と名乗る事には拘っている。
魔術師だと手品師みたいだし、『道』って付いていると柔道とか書道みたいで馴染みやすい。
それに明治時代に行われた既存勢力の柔術と、新興勢力であった柔道との対抗戦では柔道が圧倒したし、同じ事は剣道でも有った。
道の方が強いんじゃないかな。
魔導書によると椎名さんもそうだったらしいし。
「そろそろ帰るか!」
そう言ってエセドワーフ達の方を向いた時だった!
彼等の背後に遥か後方から迫り来る炎が見えた!
「俺の近くにいろ!」
そう叫ぶが早いか、魔法剣を通して光魔法の結界を張る。
ん?この結界は魔法剣が有っても無くても変わらない様だな。その旨をエセドワーフに伝えてみると、
「魔物にも属性が有る。光属性の魔物なんて居る訳ないじゃろう」
なるほど、そういう事か。
強化はされなくても俺の結界は攻撃を全て防いでくれたから、大した物だ!
今度はこっちのターンだ!実戦でこの魔法剣を試させてもらう!
だが、あれ?
「敵は何処だ?」
相手が見付からない。そんな遠方からの攻撃だったのか?
「普通は目に見える所にしか攻撃魔法は及ばん!」
「お前さんとは違うんじゃ」
こんな時に異常者扱いするな!
「ん?影?」
釈然としなかった俺はその時、俺達以外の影の動きが見えた。
「彼奴らか」
俺達の真上では、それぞれ人を乗せた3頭のワイバーンが悠然と旋回を続けていた。




