表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

122/302

ハンバーグ みんなも作って アラモード

本日より再開します。

月水金、又は火曜日と金曜日の更新になると思いますが、お読み頂ければ幸いです。

よろしくお願いします。

「それでは領都でお待ちしています」

 前日の酒が残っているのだろう。アルフレッド一行は揃いも揃って顔色が優れぬまま、馬車で領都に戻って行った。

 確か領都は馬車で丸1日掛かる。あの調子では今日中には着かないだろうな。


 さて、領都に行くにはこの街での事業に目処を付けなくては。

 ショッピングモールと野菜工場の建設現場ではゴーレムを職人が交代で操って、急ピッチで進んでいる。

 前もって天才的建築家らしいエセドワーフのトニーの図面に従って、石材や木材をこの数日間でカットしておいた。後はこれらをカパカパとセットしていくだけのプレハブ工法。だから早い!

 ショッピングモールは内装に時間が掛かりそうだが、野菜工場はすぐに出来上がる。

 順調ならば明後日くらいには稼働出来るだろう。


 現場の主役はやはりゴーレム。割り符を握って操る職人も楽しみながらやっているから上達も早い!

 ゴーレムは疲れる事が無く力も強い。数人分の仕事を熟す事が可能だ。そう考えるとこの世界における産業用ロボットと呼べなくもない!

 

 だが不安も有る。便利な存在ではあるが、使い方次第では兵器にもなるに違いない。ダイナマイトがそうであった様に。

 儲けたい気持ちは有るが、死の商人と呼ばれる事は御免被りたい。クレアに睨まれそうだ。


 さて、オープンが見えてきたショッピングモールだが、マーケットリサーチをしてみると意外と商品化が望まれている物は、光魔法のランプだった。

 これは光属性魔法で作った光る球体を閉じ込めたランプで、既にアベニールの街灯や、クロエの店で実用化している。光の質からしてランプと言うよりも、LEDのランタンって感じだ。

 ポイントは蝋燭より遥かに明るくて、火事の心配も無い。それに、減らないという事が大事だ。

 スイッチが有る訳では無いので昼間も光っているが、それがまた良い!

 この世界の建物は窓が小さくて昼間でも室内が暗かった。これはきっとヒット商品になるだろう。後は値段設定を間違えない様にしなければ!


 ショッピングモールのテナント業者も決まった。これは市を上げてこの事業を後押ししてくれた事が大きい!

 ベンは勿論だが、これに関してはロンの手柄だ。市長の息子は伊達じゃない!

 見事に市側との架け橋になってくれた。クレバーさは無いので勝負事には向かないが、基本は真面目なのである程度の仕事は任せられる。

 と思いたい。

 その律儀さを見込んで、今後は野菜工場の工場長になってもらう。ズボラな人間に野菜作りは難しい。手の抜き具合は作物に如実に出る。俺には無理だ。

 この街の胃袋はロンが握ると言ったら過言かも知れないが、天候不順の時はそうなるに違いない。


 そう考えると領都に行く準備も整いつつあるな。

 後は『季節風』を任せられる人材か。

 人材と言っても、メインはハンバーグだから難しくはなさそうだけど。子供向け食育番組でも美少女子役に作らせていたし。

 

 初心者歓迎で大々的に人材を募集しよう!

 少し練習すれば、誰でもそれなりにはなるんじゃないかな。クレア以外!

 クロエは文句言うかも知れないが、人材不足を乗り切るにはアイデアと割り切りが必要だと思う。

 尤も、旬の食材を出すと言う店名に合わなくなる事は、お義父さんに申し訳なく思う。


 領都に発つまで時間が無い。俺はランチ営業がもうすぐ終わる『季節風』に赴いた。クロエだって腹を割って話せば分かると思う。

「いらっしゃいませ。あら、エイジさん!」

 思わず顔が綻ぶ。みんなすっかりとウエイトレスが板に付いてきて、素直に嬉しい。


「おーい!」

 呼ばれて店内を見渡すと知っている顔があった。

 奥のテーブルではエセドワーフの面々が遅めのランチを済ませていた。

 「ここに居れば来ると思っていたんじゃが、本当に来るとはの」

「その口振りだと俺に用が有るのか?」

「大有りじゃ」

 目が笑っている。何か良い事か?

「ほれ、これを見てみい!」

 何やら長細い包みを取り出した。


「これは?」

 包みの中は剣?

 しかし随分とバランスが悪い剣だ。柄は太刀の様に立派だが、刃渡りは30センチ程度で釣り合いが取れない。また、刃も柳刃包丁の様に細くて戦闘で使い物になるのか、これ?


「不格好だと思うじゃろ?見た目には惑わされない様にな」

「でも、言っちゃ悪いが実戦には不向きだろ?」


「そんな事はないぞ。そのままでも切れ味は良いんじゃが、魔力を纏って完成品となるんじゃ」

「魔力?」

 この不格好が魔法剣になるのか?


「ここでは危ない。屋根でも吹き飛ばしたらあの怖い姉ちゃんが目も当てられん様になる。外で試すのが良かろうて」

「そんなに凄いのか?」

 怒り狂うクロエは簡単に想像出来るが、この剣がそんな業物だなんて、とても想像出来ない!


「祭りの直後にのう、ほれ。死んだばかりの新鮮な魔物から取れた魔石を贅沢に使った逸品じゃ!」

 魔物の事を魚みたいな扱いだな!

 

「こんなに魔石を使った物は国中探しても他には無いじゃろ」

「王侯貴族だって持てやせんて」

 何か凄そうだ!クロエに話なんて後だ、後!早く試そう!

 俺は椅子に触れる事も無く、店を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ