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意外だな アルフレッドは 腰低い

 翌日、昼下がりに市庁舎の応接室で改めてその男と対面する。


「わざわざお時間を頂戴しまして、申し訳ありません」

「いえいえ、何方にせよ市庁舎には祭りが無事に終了の旨のご報告とお礼をと、思っていましたから」

 その男、アルフレッドとの会談には市長とベンにも同席してもらった。話の内容如何ではアルフレッドをどうにかしてしまう可能性を否定出来ないからだ。


 領主である父のエリクソン伯爵と家督相続権を持つ2人の弟は王都に居る事が多く、領地は長男であるアルフレッドが代官として治めている事は前から聞いていた。

 そしてアルフレッドは領民の評判も良い事も。


 だがその裏では税の不正徴収だけならまだしも、盗賊行為を認めその上前を撥ねるなど言語道断な奴。

 その盗賊行為で幾多の人命が失われ、生き残った人も人生を狂わされた。

 動かぬ証拠を掴んだ暁には、成敗してやる!



「昨日はお楽しみ頂けましたか?」

 まずは会話の糸口を掴む為、祭りの感想を聞くことにした。


「ええ、もちろん!私はゴーレムで狼の魔物、シルバリーフォングと戦い、勝ちました!」

「おお、それは素晴らしい!」

 確か狼の魔物を適当にそんな名前にしたなぁ。


「しかし、貴方には7人掛かりでも敵いませんでした。流石は当代随一の魔道士です」

「いえいえ、運が良かっただけです」

 101人目は本当にそうだし。


「7人の前に私と対戦した方もアルフレッド様のお連れ様でしょうか?」

 かなりの手練だ。正体を知りたい。


「いえ、私の連れは共に対戦した6名のみですが」

「ああ、そうでしたか」

 何か拍子抜けだ。たまたま順番でそうなっただけでアルフレッドの配下の者ではなかったのか。

 じゃあ誰なんだ?


「それにしても、まさかあれ程までにゴーレムを操れるとは。実際に目の当たりにするまで信じられませんでした」

 昨夜の事を思い出したのか、アルフレッドは改めて興奮を隠さずに語った。


「アルフレッド様、これまでゴーレムをご覧になられた事は?」

「1度だけです。その時はもっと動きが遅く、ぎこちなくて。魔術師は1体のゴーレムしか作れませんでした」

 普通はそうなんだよな。


「あのゴーレムはどうされるのですか?」

 アルフレッドは興味津々の様だ。

「せっかく誰でも操れる様に作ったゴーレムです。そのまま建設工事に使います。職人5人で持ち上げていた物もゴーレムなら1体で持ち上げられます」

 ゴーレムを操るのは職人だが、これで人件費と工期を大幅に圧縮出来る。

 既に祭りの終了直後から徹夜で仮設スタンドの解体工事に使っており、日の出迄には解体工事は終了している。

 祭りの後の感傷に浸る暇も無かったなぁ。



「このアベニールに短期間で堀と土塁が築かれた事は聞いています。当代随一の魔道士でありながら工事に魔法を使うという発想は何処から?」

 アルフレッドは色々と聞きたい様だ。会談の席まで設けられたのだから当然か。

 

「恐れながら」

「許可しよう」

 ベンが申し出てアルフレッドに発言を許された。

 この辺の上下関係は俺にはよく分からないが、俺の事をベンが代弁してくれる様だ。自分の事って言い辛いからな。助かる。

「エイジ殿は外国の出身です。あの、偉大なる伝説の大魔道士シーナと同郷であります!」

「なるほど!それなら納得だ!」

 おい、それで納得するのか?椎名さんってどういう扱いなんだ?



「そのゴーレムを実際に工事に使っている所を見られませんか?」

「それでしたら昨夜の祭り会場で見られます」

 別に隠す程の物ではない。

 今頃は大型ゴーレムを使った杭打ちが行われている筈だ。



「これはすごい!」

 昨夜は祭り会場だった所がすっかりと大型工事現場となっている。

 日本の工事現場における重機の役割をゴーレムが担っている。

 大中小とそれぞれのサイズのゴーレムを効率良く使い分けている。その指示を出しているのはリーチさんで、何時になく活き活きとしている。

 ゴーレムを操る職人達も楽しみながらやっているので、上達が早い!

 何にでも言える事だが、楽しむって大事だよなって思う。


「あの、エイジさんと呼ばせてもらって宜しいでしょうか?」

 アルフレッドが恐る恐る聞いてきた。呼びたいように呼んでくれ。


「恐縮です。アルフレッド様」

 敢えてそう答えた。距離を保たなければ、いざという時に決心が鈍る。


「様は止めて下さい。今は父に、いずれは弟に顎で扱き使われる身です」

 意外と謙虚で腰が低いな。

 

「エイジさん、貴方のご活躍振りをこの目で見て思いました。このアベニールは領内で2番目の都市ですが、貴方には小さすぎる!」

「いえいえ、私などまだまだです」

 謙遜しておこう。

 だが、そんな事はお構いなしにアルフレッドは真っ直ぐに俺を見つめて続ける。


「貴方にはもっと大きなステージが相応しい。エイジさん、領都に来ませんか?」

 身を乗り出してきたアルフレッドからの、まさかのお誘いだった。

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