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お祭りは 大盛況で 延長戦

「ご自身の操るゴーレムで魔物と戦えます!もう2度とこんな機会は有りませんよ!」

 司会者に声が会場中に響き渡ると、我も我もと希望者が殺到した!

 気持ちは分かる。

 普通の人間は魔物と戦うなんて出来る訳も無いのだから。それが今回、祭りのイベントではあるが可能となるのだ。しかも自身は安全な場所で、札に念じてゴーレムを操るだけだ。

 

 それにしても数が多過ぎる!

 希望者全員のゴーレムは作れるが、魔物の数が足りない。

 1度倒された魔物に回復魔法を使い複数回戦わせるのも違うと思うし。

 それに、本来の目的は賭けの上がりを頂戴する事だ。

 試合数が多過ぎて、間延びして緊張感が損なわれる事は避けたい。

 よって、30試合で終了とした。


 参加希望者が多過ぎるので半分を抽選とし、もう半分は入札制にさせてもらう。

 どうしてもやりたい人は落札して下さい!と言うスタンスだ。


 こうして参加者が決まった。

 中には自粛を促したのに女子供もいる。

 まぁ、アナウンスはしたので結果については自己責任でお願いしたい。

 更に参加者を見ると強面の男が数人いる。彼等とは数日前に顔合わせしたな。

 この街の有力者とのパイプ作りで会った、この街の裏社会を取り仕切る連中だ。

 親分さんは俺の力を認め、お互いに干渉しない事にした筈だ。 

 どうしてもゴーレムを操りたくて子分全員に抽選させて、自分は別で落札した訳ね。


「あなた!」

 仮設スタンドの1番上、会場中を見渡せる関係者席で事の推移を見守っているとクレアがゆっくりと登って来た。

「あなたはお忙しいだろうと思って関係者控室でお待ちしてましたが、ロンさんが教えて下さって」

 スタンドの1番上まで上がって来たクレアの息が乱れている。急いで来たのだろう。

 珍しく気を遣ったロンの奴は後で褒めてやる。


「何か食べたか?」

「姉さんと色々と頂きました。でもやっぱり、あなたの手掛けたお料理が美味しかったですよ」

 ウフッと微笑むが、あの味覚のクレアに褒められても微妙だ。


「今度は私にもあなたの国のお料理を教えて下さいね。あなたの故郷の味を家庭でも味わってもらいたいのです!」

「あ、ああ…。また今度な…」

 今度とお化けは出た例しがない!とは言え、ゆで卵ならきっと大丈夫だろう。

 と思いたい。


 俺達以外は誰も居ない関係者席で順調に行われていく試合をクレアと見守る。見るのは魔物とゴーレムの戦いなのでロマンは無いが、そんな事はどうでも良いと言わんばかりに並んで座るクレアが俺にもたれて甘える仕草を見せる。

 そうそう、これだよ!

 求めていたシチュエーションは!


 だが、何故か必ず邪魔者が入る。

「先生!」

 褒めようと思った矢先に俺の幸せな時間をぶち壊すロンの声が響く。

 少しは気を遣え!


「どうした?」

 不機嫌に応えるとロンはようやく事態を理解出来たらしく、頻りに謝り続けた。謝る前に空気読め!

「もう良いから、どうした?」

「抽選から漏れた人達が暴動を起こしそうです!」

 他人の様子を見たら余計にやりたくなったのだろう。

 でも暴動だなんて。人気とは言えそこまでするか!


「司会者は知っているのか?」

「はい。危険なので対戦を打ち切って祭りの終了を宣言する様に言ったのですが、それは出来ないと」

 それはそうだろう。まだ数試合残っているのに打ち切ったらそれこそ暴動だ。

 わが社にもマイナスイメージしか残さないぞ。


「ゴーレム同士で戦わせますか?」

「悪くはないが、魔物との対戦に比べるとインパクトが足りないな」

 やはり魔物という非日常的な存在が重要なんだ。

 魔物とゴーレムの対戦成績は、ほぼ互角。

 魔物に勝てなかった人も再チャレンジを目論んでいる様だ。


 俺達はスタンドを駆け下り、司会者を呼び寄せて協議した。

「ゴーレムなら幾らでも作れるが、何か良いアイデアは無いか?このままじゃ皆様方は消化不良だ」

「思い付いた事は有りますが…」

 司会者が言い掛けた所で最後の試合が終わってしまった。

「分かった。任せる!」

 こうなったら司会者のアイデアに頼るしか無い。また機転を利かせてくれると信じて。


「ご来場の皆様方、大変好評につき延長戦を行います!」

 えっ?だから対戦相手の魔物はもういないって。

「ご参加頂くには参加料をお支払い頂きますが、数に制限はございません!」

 ちょっとそれは。流石に無制限だと凄い事になりそうだが。

 対戦相手はどうする?ゴーレム同士でバトルロイヤルでもするか?


「しかしながら戦える魔物はもう居ません!」

 観衆がざわめく。当然だよな。


「延長戦の対戦相手は、当代随一の魔道士」

 えっ?

「エイジ・ナガサキです!」

 はい?

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