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祭りの日 準備万端 整った

 結婚は人生の墓場と言うが、新婚2日目に妻の手料理で死にかけた奴って他にいるのか?

 とは言え、料理を除けばクレアはいい女だ。甘えてくると本当に愛おしい!

 日毎に愛が深まっていく事を実感している。


 そして、その後は順調に事が運び、いよいよ祭りの当日となった。

 この日の為に昼は会場の準備の他に、魔物の捕獲と建材集め、夜は各方面の有力者とのパイプ作りに明け暮れた。

 市長のお墨付きが有ると何かと助かる。


 屋台のメニューも考案済みだ。

 お馴染みのソースが無い事は仕方ない。料理教室では流石に調味料の作り方までは教えてもらえないのだ。出来る限りの事はやった。


 たこ焼きはソースが無いので明石焼き風にしてみた。ソースをかけるのではなくて、お出汁に入れる明石焼き。

 材料が違うので完全な明石焼きの再現とは言えなかったが、これはこれで結構うまい!

 専用の鉄板はエセドワーフに作ってもらった。流石の品質だ!


 焼きそばもソースが無いし、第一麺も無い。仕方なく麺は粉から作ったら、うどんになった! 

 結果として焼きそばではなく、こっちは塩味の焼きうどんになってしまった。

 でも、試食会では好評だ!

「こんなメニューを知っているのなら、もっと早く教えてよ!」

 とクロエに怒られてしまった。


 これらとハンバーガーはそれぞれ違う店として出店する。厨房でクロエの手伝いをしている娘が調理を担当する事になり、この数日間は練習を重ねた。

 混乱を避ける為、それぞれの店にメニューは1つしか無い。頑張れ!


 そして、かき氷だ!

 魔法で作った氷を風魔法で刻むと、空気が良い具合に入ってふんわり感のある高級かき氷の様になる!

 かき氷の担当者は風属性を持つエリスになった。

 文句タラタラだったが、そこは煽てて何とかなだめた。

 耳を除けば見た目がエルフの少女が作るかき氷、自分でさせておいて何だが、エルフのイメージが!


 

 娯楽の少ない世界だからか、祭りの日は街の雰囲気が違う。浮かれていると言うか、市民の皆さんの期待が空気を伝わって来る!


 ウチ以外の出店も揃った!

 待ちきれないのか、祭り会場の近くは始まる数時間前から人出が多い。広報活動の成果だ!

 


「魔物同士の戦いを見られるんだって!」

「ゴーレムとも戦うそうだぞ!」

 親子連れの会話が聞こえた。珍しい物が無料で見られるのだから、我が社の評判も上がるだろう!

 問題は期待が大きいと、それが外れた時の反動も大きい事だ。

 成功させなければ!


  

「エイジ様」

 人混みに紛れて背後から呟く様に声を掛けられた。

「お前は、ハリー!」

 リックの従者であるハリーだ。

 

「本来ならば祭りの後にお声掛けさせて頂こうと思ったのですが、後の方がお忙しいと思いまして」

「大丈夫だ!リックはどうした?」

 もう戻ってきても良い頃の筈だが。


「我が主、リック・レイスは家の事情で王都での滞在が更に延び、10日後にアベニールに戻るとの事」

「10日後か。調べ物は終わったのか?」

 俺の使う魔法は兎も角、ミラの正体は確定させてやりたい。

 聖女アリアで間違いないと思うんだが。


「ハリー、お家の事情って言ったけど、リックの家ってそれなりの家なのか?」

「我が主は、子爵家の3男です」

「子爵家?」 

 リックって貴族だったのか!

 それで役人には偉そうな態度だったのか!


「分かったとリックに伝えてくれ。それと俺がクレアと結婚したとも伝えてくれ」

「畏まりました」

 冷静沈着なハリーでも驚くかと思ったが、至って冷静だ。

 この落ち着きは、使える。


「ハリー、王都に帰るのは明日にして、お祭りに参加してくれ!」

「祭り?私がですか?」

 ハリーは淡々と聞き返してくる。


「ああ、お前はこの町の人間じゃない!だからこそ俺の考えた作戦に相応しい!」

「作戦ですか?」

「ああ、祭りの後に建てる建物の建設費を祭りの客に喜んで捻出してもらう作戦だ!」


「何をすれば宜しいのでしょうか?」

 ハリーが訝しげに聞いてきた。ハリーと俺に主従関係など無い。だから命令する訳にはいかない。

 それはリックへの不義理にもなってしまう。

 だからあくまでも、お願いだ。


「目立ってくれ!」

「はい?」

 流石に少し驚いた。目立つ事とは無縁だと思われるハリーには酷なお願いかも知れない。 


「目立たなければならない理由をお教え下さい」

「桜はパッと咲いて、パッと散る」

「はあ」

 そもそもこの世界に桜があるのか?


「お前は、サクラになってくれ!」

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